こう)” の例文
と門附は、背後うしろの壁へ胸を反らして、ちょっと伸上るようにして、戸に立つ男の肩越しに、こうとした月のくるわの、細いとおりを見透かした。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
常に飄然ひようぜんとして、絶えて貴族的容儀を修めざれど、おのづからなる七万石の品格は、面白おもてしろ眉秀まゆひいでて、鼻高く、眼爽まなこさはやかに、かたちきよらあがれるは、こうとして玉樹ぎよくじゆの風前に臨めるともふべくや
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
ところが、その瞬間に月は雲のあいだからこうこうと輝きいでて、大氷原の上を照らしたので、わたしは氷原を横切って非常の速力で走ってゆく彼の黒影を、遙かに遠いあなたに認めた。