かんば)” の例文
そういわれていい筈なのに、かえって、半兵衛の名は、美濃一国に、人々から尊敬のまとになっているのみか、敵国の尾張までかんばしく聞えている。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
狂喜の人々の上に、かんばしい酒の香がながれ、踊り出す者を見ると、笛は笛を吹き、太鼓は太鼓をたたき——その者達もまた吹きながら叩きながら踊り出した。
(新字新仮名) / 吉川英治(著)
御方は満足らしくうなずいて、言葉しずか、息かんばしい京なまりで、自分の生立ちを物語りだした。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
敵たると味方たるとをとわず、武人のかんばしい心操しんそうに接するほど、予は、楽しいことはない。その一ときは、天地も人間も、すべてこの世が美しいものに満ちているような心地がするのだ。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
先へ歩ませ、自軍は後にし、さらに自身はつねに敵と接し、以てよく最後の殿しんがりを果されて来たそうな。老いていよいよかんばしき武門の華、あなた如き人こそ真の大将軍というものであろう
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ここに一人、斎藤家にも、かんばしい武士がいた。堂洞とうどうの城主岸勘解由きしかげゆだった。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
呂布の人気は、各地において、あまりかんばしくないことを知ったからである。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
下野の風采ふうさいというものは、何分にも、彼の国元においてさえ、あまりかんばしくないものである。まして甲州の歴々は、一見してみなあきれた顔であった。こんな見ッともない小男を——と思った。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)