“く”のいろいろな漢字の書き方と例文
カタカナ:ク
語句割合
呉13.8%
暮10.4%
汲9.5%
喰7.5%
食5.3%
繰5.2%
酌4.9%
来4.7%
朽3.5%
來3.4%
昏2.8%
悔2.3%
奇2.3%
喫2.3%
苦2.2%
組1.9%
刳1.6%
拱1.4%
啖1.4%
燻1.3%
掬1.1%
句1.0%
蝕0.8%
与0.7%
眩0.5%
九0.4%
壊0.3%
薫0.3%
下0.3%
咋0.2%
噉0.2%
屈0.2%
焚0.2%
噛0.2%
吃0.2%
焼0.2%
会0.2%
晩0.2%
狗0.2%
括0.1%
暗0.1%
絎0.1%
吼0.1%
襲0.1%
家0.1%
與0.1%
咬0.1%
抉0.1%
腐0.1%
加0.1%
区0.1%
崩0.1%
比0.1%
炙0.1%
穿0.1%
啗0.1%
斟0.1%
蹴0.1%
躯0.1%
闇0.1%
供0.1%
叉0.1%
壞0.1%
晦0.1%
潜0.1%
編0.1%
行0.1%
逢0.1%
配0.1%
飽0.1%
駆0.1%
曲0.0%
漏0.0%
工0.0%
怪0.0%
昧0.0%
蹶0.0%
雲0.0%
黒0.0%
た0.0%
れ0.0%
久0.0%
傴0.0%
剔0.0%
剞0.0%
剥0.0%
劬0.0%
區0.0%
半分汲0.0%
口0.0%
吸0.0%
垢0.0%
奥0.0%
委0.0%
嫁0.0%
屨0.0%
徠0.0%
戽0.0%
拗0.0%
挫0.0%
挹0.0%
操0.0%
斯0.0%
晡0.0%
杓0.0%
染0.0%
此0.0%
沒0.0%
満0.0%
焌0.0%
煤0.0%
燒0.0%
玖0.0%
生活0.0%
癒0.0%
眛0.0%
矩0.0%
粘0.0%
縫0.0%
美0.0%
翑0.0%
胊0.0%
腹0.0%
舀0.0%
莫0.0%
蜿0.0%
螫0.0%
衢0.0%
越0.0%
転0.0%
較0.0%
適0.0%
酙0.0%
銜0.0%
附0.0%
降0.0%
霊0.0%
靈0.0%
飲0.0%
餐0.0%
馘0.0%
駒0.0%
黝0.0%
鼓0.0%
齣0.0%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
向うの帳場格子の中には人が三人ほどいたが、算盤(そろばん)をはじいたり帳面を繰ったりするだけで、誰もこっちの相手にはなって呉(く)れない。
初蕾 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
もし、二つなり、三つなりが、いっしょに明(あか)るい世界(せかい)へ出(で)ることがあったら、たがいに依(よ)り合(あ)って力(ちから)となって暮(く)らしそうじゃないか。
明るき世界へ (新字新仮名) / 小川未明(著)
是(ここ)に於て守る者便(べん)を得、連夜水を汲(く)みて城壁に灌(そそ)げば、天寒くして忽(たちま)ち氷結し、明日に至れば復(また)登ることを得ざるが如きことありき。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
表町(おもてちょう)で小さい家(いえ)を借りて、酒に醤油(しょうゆ)、薪(まき)に炭、塩などの新店を出した時も、飯喰(く)う隙(ひま)が惜しいくらい、クルクルと働き詰めでいた。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「なにか食(く)わしてやりな。なあに、悪いことをするやつなら、ひもじくなって倒れなんかしやぁしねえ。早くなにか食わせてやれ。」
清造と沼 (新字新仮名) / 宮島資夫(著)
或る文字を引かうとして英和辭典をバラ/\と繰(く)りながら、偶然開かれたページの Opera といふ文字に目がとまつた時、私は
かめれおん日記 (旧字旧仮名) / 中島敦(著)
そこへは病気のまだ好くならぬ未亡人の外、りよを始、親戚一同が集まって来て、先ず墓参をして、それから離別の盃(さかずき)を酌(く)み交(かわ)した。
護持院原の敵討 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「ねえ、」とお母(かあ)さんが言(い)った。「あの子(こ)は田舎(いなか)へ行(ゆ)きましたの、ミュッテンの大伯父(おおおじ)さんのとこへ、暫(しばら)く泊(とま)って来(く)るんですって。」
あるいは彼らが骨冷かに肉朽(く)ち、世人(せじん)の一半は彼等が名を忘却したる時において、始めて彼らの播(ま)きたる種子の収穫を見ることあり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
文化(ぶんくわ)が發達(はつたつ)して來(く)れば、自然(しぜん)何處(どこ)か漠然(ばくぜん)として稚氣(ちき)を帶(お)びて居(ゐ)るやうな面白(おもしろ)い化物思想(ばけものしさう)などを容(い)れる餘地(よち)が無(な)くなつて來(く)るのである。
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
が、帰りみち、途中で日がとっぷりと昏(く)れ、五条野(ごじょうの)あたりで道に迷ったりして、やっと月あかりのなかを岡寺の駅にたどりつきました……
大和路・信濃路 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
寒(さむ)い雪(ゆき)の降(ふ)る国(くに)に生(う)まれたものが、暖(あたた)かな、いつも春(はる)のような気候(きこう)の国(くに)に生(う)まれなかったことを悔(く)い、貧乏(びんぼう)な家(いえ)に生(う)まれたものが
小さな赤い花 (新字新仮名) / 小川未明(著)
男ならば何人も奇(く)しき感動の心にしむを感ぜずには読めないような、女ならば何人も嘆息(ためいき)なしには読めないような一節——であった。
王はその時空腹を感じて物を喫(く)いたかった。また彼の美しい女の傍(そば)へいくこともできる。王は大喜びで老婆について入っていった。
嬰寧 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
「丑満(うしみつ)過ぐる夜の夢。見よや因果のめぐり来る。火車に業(ごう)を積む数(かず)。苦(く)るしめて眼の前の。地獄もまことなり。げに恐ろしの姿や」
涙香・ポー・それから (新字新仮名) / 夢野久作(著)
一体(いつたい)東海道(とうかいだう)掛川(かけがは)の宿(しゆく)から同(おなじ)汽車(きしや)に乗(の)り組(く)んだと覚(おぼ)えて居(ゐ)る、腰掛(こしかけ)の隅(すみ)に頭(かうべ)を垂(た)れて、死灰(しくわい)の如(ごと)く控(ひか)へたから別段(べつだん)目(め)にも留(と)まらなかつた。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
材は松板を刳(く)ったものでありますが、茶人だったら塵取(ちりとり)にでも取り上げるでしょう。荒物屋ではまた簓(ささら)のような茶筅(ちゃせん)を売ります。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
そうです、わたしが家に坐って、眼をつぶって、腕を拱(く)んで、どうもそうらしいようだと考えていた事が、まず大抵は壷に嵌(はま)りましたからね。
半七捕物帳:68 二人女房 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
……勅令……内務省令、糞(くそ)を啖(く)らえだ。いよいよ団結を固くして、益々大資本を集中しつつ、全国的に鋭敏な爆薬取引網を作って行く。
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
せめて死んだ人たちの冥福を祈るために、起きて線香でも火鉢の中に燻(く)べておこうと思いながらそれすらも私にはもうでき得なかった。
逗子物語 (新字新仮名) / 橘外男(著)
ある日其処(そこ)を通りかゝると、頭を島田(しまた)に結つた十七八の女が、壺から水を掬(く)むで家(うち)から持つて来たらしい硝子瓶(ガラスびん)に入れてゐるのがある。
それを是(ぜ)とするか非(ひ)とするか、自分の唇(くちびる)をでる、ただ一句(く)で、どんな兇刃(きょうじん)がものの弾(はず)みで御岳(みたけ)の神前(しんぜん)を血(ち)の海としないかぎりもない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
つまり、奴さん自身もふさぎの虫に心を蝕(く)われて、なんとかして自分で自分を亡いものにしようと思ったらしゅうございます。
ただトルストイやゲイテとなると、峰が高く大きすぎて与(く)みしがたい感じだったが、今はそういうものも読んでみたいと思っていた。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
由「まことにお気の毒な事で、何とも申そう様(よう)がございません、定めてお聞でしょうが、お宅(うち)へお出入の指物屋が金に目が眩(く)れて殺したんですとサ」
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
粂の字を九(く)の宇と女(め)の字にした方がいいって、こじつけちゃったんだそうだが——滑稽(こっけい)さね。
市川九女八 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
光太郎は提灯をさげてぶらぶらルダンさんの家のほうへ歩いて行ったが、道普請(みちぶしん)の壊(く)えのあるところへくると、われともなく
黄泉から (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
マクベスの帯びた短刀などは何処の博物館にもあつたことはない。しかしマクベスは相不変ロンドンのクラブの一室に葉巻を薫(く)ゆらせてゐるのである。
僻見 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「又何か下(く)だらない事を考えているな。よせよせ」上さんの肩の所に手を掛けて、二三遍ゆさぶって置いて、自分の床に据わった。
雁 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
元来、我々の中にはなかった病気じゃが、我々が人間を咋(く)うようになってから、我々の間にもごくまれに、これに侵される者が出てきたのじゃ。
悟浄出世 (新字新仮名) / 中島敦(著)
なんでも、僕の聴き取った所では、心が動いてはならぬ、動けば隙(すき)を生ずる、隙を生ずれば乗ぜられると云うような事であった。石原は虎が酔人を噉(く)わぬと云う譬(たとえ)を引いた。
雁 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
なほ抵抗を試みてただ強力に屈(く)するのみ。 305
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
折角の思召(おぼしめし)ですから戴いて置きましょう、日が暮れると雨の降る時は寒うございます、直(じき)に本郷山が側ですから山冷(やまびえ)がしますから、もっと其の麁朶(そだ)をお焚(く)べなさいまし
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
時雨(しぐ)らんだような薄暗さのなかに、庸三は魂を噛(く)いちぎられたもののように、うっとりと火鉢(ひばち)をかかえて卓の前にいた。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
これを笑ふけれど、遊佐の如きは真面目(まじめ)で孝経を読んでゐるのだよ、既に借りてさ、天引四割(てんびきしわり)と吃(く)つて一月隔(おき)に血を吮(すは)れる。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
しかし明日ストーヴに焼(く)べられる一本の草にも、それ相応の来歴があり、思出がなければならない。
或教授の退職の辞 (新字新仮名) / 西田幾多郎(著)
「本当にも嘘にも、——今日は土曜日だろう。エート、関東新報の遅くも火曜の朝刊で、お前達が皆んな目を廻すような、驚天動地の特種に出っ会(く)わすぜ。大丈夫か」
女記者の役割 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
日の晩(く)れから鳴き出して夜更(よふ)けにも鳴くことがあるが時としては二羽のつれ鳴に鳴く声が聞える事がある。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
なに、桀(けつ)の狗(く)尭(げう)に吠ゆだと——此奴(こいつ)生意気を吐(ぬ)かす、俺を桀の狗(く)だとは失敬極まる——、此奴(こやつ)め、ワンワン/\/\
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
私の後ろにはいつでも黒い影が括(く)ッ付(つ)いていました。私は妻(さい)のために、命を引きずって世の中を歩いていたようなものです。あなたが卒業して国へ帰る時も同じ事でした。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
暗(く)らくなった谷を距(へだ)てて少し此方(こっち)よりも高い位の平地に、忘れたように間をおいてともされた市街地のかすかな灯影(ほかげ)は、人気(ひとけ)のない所よりもかえって自然を淋しく見せた。
カインの末裔 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
老婆はその花束を裏の縁側へ置いて、やっとこしょと上へ昇り、他処(よそ)往きの布子(ぬのこ)に着更え、幅を狭く絎(く)けた黒繻子の帯を結びながら出て来たところで、人の跫音がした。
地獄の使 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
獅子一吼(く)百獣震駭(しんがい)する底(てい)の猛威を振わん事を説いたためだ。
三たび東方の平和を論ず (新字新仮名) / 大隈重信(著)
「おれは来ねえが、そのうちに、二百十日が襲(く)るぞっ、覚えておけっ」
鬼 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「なあ健、お土産買うてきてやるせに、おもちゃや、バナナや、な。かしこいせに健、おばあさん家(く)で待っちょれよ、え。」
大根の葉 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
徒らに賣卜者、觀相者、推命者流の言の如き、『運命前定説』の捕虜となつて、そして好運の我に與(く)みせざるを歎ずるといふが如きことは爲すべからざる筈である。
努力論 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
蹴られて金眸岸破(がば)と跳起(はねお)き、一声嘷(ほ)えて立上らんとするを、起しもあへず鷲郎が、襟頭(えりがみ)咬(く)はへて引据ゆれば。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
ずらっとならべた薬種びんの下の調剤卓の前に、もたれのない抉(く)り抜(ぬ)きの事務椅子(じむいす)に腰かけて、黒い事務マントを羽織った悒鬱(ゆううつ)そうな小柄な若い男が、一心に小形の書物に読みふけっている。
生まれいずる悩み (新字新仮名) / 有島武郎(著)
半ば腐(く)ち果てた重病者達のうようよとした病室内の光景が思ひ描かれて、はやその方へ一歩を踏み出した自分を意識しなければならなかつた。
癩を病む青年達 (新字旧仮名) / 北条民雄(著)
巌路(いわみち)へ踏みはだかるように足を拡げ、タタと総身に動揺(いぶり)を加(く)れて、大きな蟹が竜宮の女房を胸に抱いて逆落しの滝に乗るように、ずずずずずと下りて行(ゆ)く。
縷紅新草 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「もうここらは白鳥区(く)のおしまいです。ごらんなさい。あれが名高いアルビレオの観測所(かんそくじょ)です」
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
崩(く)え崖の櫨子(しどみ)の蕾朱(しゆ)の褪(あ)せて雨の跳(は)ね土(つち)しみみ附き見ゆ
風隠集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
廿歳(はたち)といふも今(いま)の間(ま)なるを、盛(さか)りすぎては花(はな)も甲斐(かひ)なし、適當(てきたう)の聟君(むこぎみ)おむかへ申し度(たき)ものと、一意(い)專心(せんしん)主(しう)おもふ外(ほか)なにも無(な)し、主人(しゆじん)大事(だいじ)の心(こゝろ)に比(く)らべて世上(せじやう)の人(ひと)の浮薄(ふはく)浮佻(ふてう)
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
夜がふけて雨戸をしめたのは知っているが、炉のなかに木の葉など炙(く)べたことはない、第一この小屋のなかには青い松葉などを積み込んであるのを見たことがないと云った。
半七捕物帳:24 小女郎狐 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そうしておけば、一々ハッパ押えを、断崖の下まで吹き飛ばされないで済むし、ハッパ穴が五六尺の高い段の上に穿(く)られても、上からハッパ押えを吊るしておけるのだった。
掃守(かもり)傍(かたはら)に侍(はべ)りて、桃(もも)の実(み)の大なるを啗(く)ひつつ三一弈(えき)の手段(しゆだん)を見る。漁父が大魚(まな)を携(たづさ)へ来るを喜(よろこ)びて、三二高杯(たかつき)に盛(も)りたる桃をあたへ、又盃(さかづき)を給うて三三三献(こん)飲ましめ給ふ。
暁井(げうせい) 残月を斟(く)み、寒炉(かんろ) 砕澌(さいし)を釈(お)く。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
蹴(く)ゑはららかすや
新頌 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
是(これ)迄竪長いゴシツクを見慣れてた目に此(この)方形(ほうけい)に大きな伊太利(イタリイ)式ゴシツクの荘(さう)美と優美とを兼ねた外観に驚かされた。外壁(ぐわいへき)の上の彫像は二千躯(く)あると云ふが一一(いちいち)に好(い)い形をして居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛、与謝野晶子(著)
さなくて卒爾(うちつけ)に文(ふみ)など參(まゐ)らせたるを如何(いか)に厭(いと)はしと思(おぼ)しながら返(かへ)しせざらんも情(なさけ)なしとて彼(あ)れよりは夫(それ)となく御出(おいで)のなきか此頃(このごろ)のお哥(うた)の心(こゝろ)は如何(いか)に茂(しげ)るわか葉(ば)の今(いま)こそは闇(く)らけれど時節(じせつ)を
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
鳩(はと)を供(く)れよと、口口(くちぐち)に
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
せめて今、銃(つつ)叉(く)むと
新頌 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
底なるいぶきか壞(く)ゑくゑ
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
私は途方に晦(く)れながら、それでもブラブラと当もなしに町を歩いた。町外れの海に臨んだ突端(とっぱ)しに、名高い八幡宮がある。そこの高い石段を登って、有名なここの眺望にも対してみた。
世間師 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
博士と土人とは穴を潜(く)ぐり、松火(たいまつ)の光を先に立て、二十六度の傾斜道を、先へ先へと進んで行った。
木乃伊の耳飾 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
(その頃はまだ、この辺の娘たちのあひだには、派手な色あひの美しい細リボンを編(く)みこんだ幾つもの小さい編髪にするならはしがなかつたので)
『何処(どつけ)え行(く)、何処(どつけ)え行(く)!』
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
が、此處では平次も全く豫想外なことに出つ逢(く)はしました。
銭形平次捕物控:050 碁敵 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
朝配(く)ばつて來る麺包(パン)の匂もする。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
いいえ、それは言葉だけの真似事ですわ。私の身体こそ、いつも病んだような、呻(うめ)きを立ててはおりますけれど、心だけは貴方の幻で、そりゃ飽(く)ちいほどに……
白蟻 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
以て無事目的を達して帰(かへ)るを得せしむるなり云々と、朝来雨漸(やうや)く霽(は)れ来れば一行笑顔(えがほ)を開き、一駆(く)して戸倉に至るを期(き)す、此夜森下君の発案により、鍋伏(なべふ)せを行ふて魚(うを)を取(と)るを得(え)たり
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
進むにつれて右舷の海中へ、身を曲(く)ねらして躍り出た巨大な怪獣のような鳥喰崎の全貌が、大きくのしかかるように迫り寄る。
死の快走船 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
ほら、あそこに、静かな内湾のこちらに、妙に身を曲(く)ねらした、処々に禿山のある岬が見えますね。
死の快走船 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
次に御刀の手上(たがみ)に集まる血、手俣(たなまた)より漏(く)き出(で)て成りませる神の名は、闇淤加美(くらおかみ)の神。次に闇御津羽(くらみつは)の神。
かれここに神産巣日御祖(みおや)の命に白し上げしかば、「こは實(まこと)に我が子なり。子の中に、我が手俣(たなまた)より漏(く)きし子なり。かれ汝(いまし)葦原色許男(あしはらしこを)の命と兄弟(はらから)となりて、その國作り堅めよ」
「では、水と工(く)というのは」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
水と工(く)と
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その夜は寝てもただ一目見し森の少女(おとめ)の恋しくも、夢に見え、幻となりて時々目に浮ぶのである。何処の者ぞ……名は何と云うぞ。してその姿の怪(く)しくも華奢(はで)やかに装いつるかな。
森の妖姫 (新字新仮名) / 小川未明(著)
木々の葉風の怪(く)しく光る。
森の妖姫 (新字新仮名) / 小川未明(著)
唯もう途方に昧(く)れて、これは一処に死ぬより外は無いと、その時直(すぐ)にさう念つたんで御座います。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
貴方は大方赤樫に言ふと有仰(おつしや)つたら、震へ上つて私が怖(こは)がりでも為ると思召すのでせうが、私驚きも恐れも致しません、寧(むし)ろ勝手なのですけれど、赤樫がそれは途方に昧(く)れるで御座いませう
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
堅庭は向股(むかもも)に蹈みなづみ、沫雪なす蹶(く)ゑ散(はららか)して、稜威の男建(をたけび)七、蹈み建(たけ)びて、待ち問ひたまひしく、「何とかも上り來ませる」と問ひたまひき。
「我は愛(うるは)しき友なれ二七こそ弔ひ來つらくのみ。何ぞは吾を、穢き死(しに)人に比(そ)ふる」といひて、御佩(みはかし)の十掬(つか)の劒を拔きて、その喪屋(もや)を切り伏せ、足もちて蹶(く)ゑ離ち遣りき。
白(し)イロい雲(く)ウモが高(た)アかく
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
黒(く)ウロい雲(く)ウモが低(ひ)イクく
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
黒(く)ウロい雲(く)ウモが低(ひ)イクく
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
黒(く)ウろい黒(く)ウろいまっ黒い
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
大分あつた(く)なつた。拙宅疊替なり。書齋をかへる時は大騷ぎ中川先生と今一人を手傳にたのみたいと思ふ 艸々不一
裏(うら)の竹籔(たけやぶ)の竹(たけ)は父(とう)さんに竹(たけ)の子(こ)を呉(く)れました。それで竹(たけ)の子(こ)の手桶(てをけ)を造(つく)れ、と言(い)つて呉れ(く)ました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
土方楠左より長(州)及時勢被二聞取一の上久(く)
林氣𤸇(りう)多く、木氣傴(く)多く、岸下の氣腫(しゆ)多く、石氣力多く、嶮岨の氣癭(えい)多く、谷氣痺(ひ)多く、丘氣狂多く、陵氣貪(たん)多く、衍氣仁多く、暑氣夭(えう)多く、寒氣壽多くなどと説いて居る。
努力論 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
ちゃんと打合せが出来ていたものと見え、すっかり着飾ったベッシェール夫人は芝居の揚幕の出かなんぞのように悠揚(ゆうよう)と壁に剔(く)ってある庭の小門を開けて現われた。
巴里祭 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
然(しか)しわれは人(ひと)を傷(きずつ)け害(そこな)ふ党(やから)とは違(ちが)ふ。幼児(をさなご)の眼(め)を剞(く)り抜(ぬ)き、足(あし)を断(た)ち、手(て)を縛(しば)つて、これを曝物(さらしもの)に、憐愍(あはれみ)を乞(こ)ふ悪人(あくにん)どもが世間(せけん)にある。さればこそ今(いま)この幼児等(えうじら)を観(み)て、心配(しんぱい)いたすのだ。
祠と云ってもその祠は巨大なサイプレスの幹を剥(く)り抜き、僅に人工を加えたもので、一見自然木と変りが無いが、併し正面の扉を開けると、その向うに人間なら五六人を入れる
心塵身劬(く)ひとしくともに濯はうと
春と修羅 第三集 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
東京(とうきやう)の區(く)到(いた)る處(ところ)にいづれも一二(いちに)の勸工場(くわんこうば)あり、皆(みな)入口(いりぐち)と出口(でぐち)を異(こと)にす、獨(ひと)り牛込(うしごめ)の勸工場(くわんこうば)は出口(でぐち)と入口(いりぐち)と同一(ひとつ)なり、「だから不思議(ふしぎ)さ。」と聞(き)いて見(み)れば詰(つま)らぬこと。
神楽坂七不思議 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
百両の金が何で要(い)るか知らぬがあれ程の悌順(やさしい)女を金に易(かえ)らるゝ者と思うて居る貴様の心がさもしい、珠運という御客様の仁情(なさけ)が半分汲(く)めたならそんな事云(い)わずに有難涙(ありがたなみだ)に咽(むせ)びそうな者。
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
……干(かん)、五、上(じょう)、ク(さく)、六、下(げ)、口(く)の七ツの孔は、人間の五情の言葉と両性の呼吸(いき)ともいえよう。懐竹抄(かいちくしょう)を読んだことがあるだろう
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
吸(く)みてはしり書(がき)うるはしく四書五經(ししよごけい)の角々(かど/″\)しきはわざとさけて伊勢源氏(いせげんじ)のなつかしきやまと文(ぶみ)明暮(あけくれ)文机(ふづくゑ)のほとりを離(はな)さず
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
おゝ、道(だう)は形無し、か、垢(く)去りて明存(みやうそん)し‥‥だな、廣太郎は、白い飛沫をあげて降りつゞけてゐる雨のうつたうしさを眺めて肚のなかから佗しさの溜息を吐いてゐた。
濡れた葦 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
一〇五これは美濃の国を出でて、みちの奥(く)へ一〇六いぬる旅なるが、この麓(ふもと)の里を過ぐるに、山の霊(かたち)、水の流のおもしろさに、おもはずもここにまうづ。日も斜(ななめ)なれば里にくだらんも一〇七はるけし。
と一々委(く)わしく説明しける内に十分間余を過ぎて中より香ばしき匂いの漏れける。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
「それでも可いさ。然し嫁(く)れやうか、嗣子(あととり)ぢやないかい」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
其(その)雑銘を読めば、冠(かん)、帯(たい)、衣(い)、屨(く)より、箠(すい)[#「箠」は底本では「※」]、鞍(あん)、轡(れん)、車(しゃ)等に至る、各物一々に湯(とう)の日新(にっしん)の銘に則(のっと)りて、語を下し文を為(な)す、反省修養の意、看取すべし。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
面白いもので、何でも世の中は遠慮する程損な事はないが、街を歩いても此方が大威張で眞直に歩けば、徠(く)る人も、徠る人も皆途を避けてくれる。
散文詩 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
三六九 比丘よ、此の舟を戽(く)め、水出でなば容易に行かん、貪と瞋とを斷たば汝は涅槃に到らん。
法句経 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
町外れから、曲り拗(く)ねった路や、立木の暗い下を迂路(うろ)ついて、与平治茶屋まで来た。ここで水を飲もうとすると、犬が盛に吠える、「誰だあ、やい」戸の中から寝ぼけ声が聞える。
雪中富士登山記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
一念ここに至る毎(ごと)に、文三は我(が)も折れ気も挫(く)じけてそして胸膈(むね)も塞(ふさ)がる。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「もののふの八十(やそ)をとめ等が挹(く)みまがふ寺井(てらゐ)のうへの堅香子(かたかご)の花」、巻十九(四一九三)に、「ほととぎす鳴く羽触(はぶり)にも散りにけり盛過ぐらし藤浪の花」
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
慈眼(じがん)めぐらし数珠(じゆず)操(く)りて
全都覚醒賦 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
餅(もち)が通(とほ)つたか……おや/\貴方(あなた)の目(め)が明(あ)きましたな。乞「目(め)が明(あ)ひましたが、鼻(はな)が斯(く)んなになりました。 ...
暫くの内に汝が父の冤家がここへ来る、白衣を著(き)、跣足(はだし)で頭に紫巾を戴(いただ)き、手に一巻の文書を把(と)る者がそれだ。その人は晡(く)れ時にこの庁に入って証問さるるはずだ。
敵娼(あいかた)はいずれもその傍に附き添い、水を杓(く)んでやる、掛けてやる、善吉の目には羨ましく見受けられた。
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
カタリとも言わず……あまつさえ西洋室(ま)の、ひしとあり、寂(しん)として、芬(ぷん)と、脳(ここ)へ染(く)る、強い、湿っぽい、重くるしい薬の匂(におい)が、形ある箔(はく)のように颯(さっ)と来て、時にヒイヤリと寝台を包む。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
解禁後(かいきんご)の爲替相場(かはせさうば)は四十九弗(ドル)四分(ぶん)の一か或(あるひ)は四十九弗(ドル)八分(ぶん)の三であらうから、これに此(く)らぶれば一割(わり)一分(ぶ)餘(よ)下(さが)つて居(を)り
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
みそ萩(はぎ)の側(そば)には茶碗(ちやわん)へ一杯(ぱい)に水(みづ)が沒(く)まれた。夕方(ゆふがた)近(ちか)く成(な)つてから三人(にん)は雨戸(あまど)を締(しめ)て、火(ひ)のない提灯(ちやうちん)を持(も)つて田圃(たんぼ)を越(こ)えて墓地(ぼち)へ行(い)つた。
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
難民は腹の満(く)ちい連中のことをぶすくさ言う。
妻 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
宮は楽椅子を夫に勧めて、躬(みづから)は煖炉(ストオブ)の薪(たきぎ)を焌(く)べたり。今の今まで貫一が事を思窮(おもひつ)めたりし心には、夫なる唯継にかく事(つか)ふるも、なかなか道ならぬやうにて屑(いさぎよ)からず覚ゆるなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「遅かったなあ兄弟」中でごろごろしている仲間の者たちが等(ひと)しくいうと、寒空に曝(さら)されてきた赤ら鼻を煤(く)べるように炉へ向って屈(かが)みこんだ二人の手下は
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
或(あるひ)は獵(かり)の番舍(ばんや)の火に燒(く)ばり
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
「他に何がある、生活(く)うためさ」
奥さんの家出 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
傷は大抵癒(く)つ着いて了つた。さあ、明日(あす)あたりはこちらの目が開けられますかな。
赤い鳥 (旧字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
浪人しても己を呼び出しちゃア頼む/\と云ってはくれる鼻薬に、つい目が眛(く)れて、粟田口國綱も己が手引をして盗ましたのだ
答うもののあらざるを見て、遠山金之助堪(こら)えかねたか、矩(く)を踰(こ)してずッと入った。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ともかく眼の前の大山を登った、石片が縦横に抛(な)げ出されている、しかし石と石とは、漆喰(しっくい)にでも粘(く)ッつけられたようで動かない、いずれも苔がべッたり覆せてある、太古ながらの石の一片は
白峰山脈縦断記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
デモ母親は男勝(おとこまさ)りの気丈者、貧苦にめげない煮焚(にたき)の業(わざ)の片手間に一枚三厘の襯衣(シャツ)を縫(く)けて、身を粉(こ)にして掙了(かせ)ぐに追付く貧乏もないか、どうかこうか湯なり粥(かゆ)なりを啜(すすっ)て
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
われはこれ 美(く)はしの女王
髪切虫 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
前足皆白い馬を騱(けい)、後足皆白きを翑(く)、前右足白きは啓、前左足白きは踦(き)、後右足白きは驤(じょう)、後左足白きは馵(しゅ)などなかなか小むつかしく分別命名しある。わが邦も毛色もて馬を呼ぶに雑多の称あり。
糜竺(びじく)は東海の胊(く)というところの人で、先祖以来、貨殖(かしょく)の道に長(た)けているので、家には巨万の財をたくわえていた。
勲章やレールでふ腹(く)れたドテッ腹
鶴彬全川柳 (新字旧仮名) / 鶴彬(著)
舀他一勺亦何妨 他(それ)を一勺(いっしゃく)舀(く)むに亦(ま)た何(なん)ぞ妨(さまた)げん〕
一夕 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
蟋蟀堂にあり、歳聿(つひ)にそれ莫(く)れぬ 国風
雪 (新字旧仮名) / 高祖保(著)
長く蜿(く)ねった皴折(ひだ)の白い衣は、幾十回となく起伏を重ねて、凹面にはデリケートな影をよどませ、凸面には金粉のような日光を漂わせ、その全体は、単純一様に見えながら、部分の曲折、高低
高山の雪 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
累「坊が蚊に螫(く)われて憫然(かわいそう)でございますから、何卒(どうか)それだけはお釣り遊ばして」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
十月朔(さく)。舟廻槻木ヲ歴(へ)テ岩沼ノ駅ニ飯ス。名取川駅ノ東ヲ遶(めぐ)ツテ海ニ入ル。晡時(ほじ)仙台ニ投ズ。列肆(れっし)皆卑陋(ひろう)。富商大估(たいこ)ヲ見ズ。独芭蕉(ばしょう)衢(く)ノ屋宇巍然(ぎぜん)トシテ対列スルノミ。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「俺(お)らがにも越(く)せ」
カインの末裔 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
妻の腕(かいな)は、羅生門の鬼の腕を思わせる。しがみついていた良人の衾は引き剥がれ、まろくしていた背も、こッち向きに、引っ転(く)り返されて。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
昔ながらの松明(まつのあかり)の覚束(おぼつか)なき光に見廻はせば、寡婦(やもめ)暮(ぐ)らしの何十年に屋根は漏り、壁は破れて、幼くて我(わが)引き取られたる頃に思ひ較(く)らぶれば、いたく頽廃(たいはい)の色をぞ示す
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
俊男は其の怜(さか)しい頭が氣に適(く)はぬ。また見たところ柔和(にうわ)らしいのにも似ず、案外(あんぐわい)理屈(りくつ)ツぽいのと根性(こんじやう)ツ骨(ぽね)の太いのが憎(にく)い。で、ギロリ、其の横顏を睨(にら)め付けて
青い顔 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
たとい涸るることあるも自家には決して痛痒(つうよう)なき財源を有するものなり。すでにこれを有す。あにいずくんぞこれを酙(く)むに遅疑せんや。ゆえに吾人は断言す。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
それに鉄漿(おはぐろ)の跡がある。で半七は断定した。「鉄漿をつけた或る女が、手拭の端を口で銜(く)わえ、それで子供を絞殺したのだ」
半七雑感 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
その目が素晴らしく大きく鼻と額と附(く)っ着いて頬(ほお)の毛が房(ふっ)さり達筆に垂(た)れ、ドロンとした目をしてこちらを見ている所をこっちから見ると
神は自然の法則に勝つ能わざるか、或は祈祷は無益なるものなるか、或は余の祈祷に熱心足らざりしか、或は余の罪深きが故に聞かれざりしか、或は余を罰せんがためにこの不幸を余に降(く)だせしか
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
森のなかにはいのちの霊(く)しきちからが織りなした無数の驚異が秋の夕の星のやうに漂ふてゐるかも知れない。
沈黙の扉 (新字旧仮名) / 吉田絃二郎(著)
天の石位(いはくら)を離れ、天の八重多那雲(やへたなぐも)を押し分けて、稜威(いつ)の道(ち)別き道別きて一〇、天の浮橋に、浮きじまり、そりたたして一一、竺紫(つくし)の日向(ひむか)の高千穗の靈(く)じふる峰(たけ)一二に天降(あも)りましき。
「酒に飲(く)らい酔って、弟の頭の上で、歌をうたった。踊りを踊っていたじゃないかっ。……馬鹿っ、この馬鹿」
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
既に楚辞にも、秋菊の落英を餐(く)ふ、とある位だ。
菊 食物としての (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
馘(く)び——飢え——
鶴彬全川柳 (新字旧仮名) / 鶴彬(著)
白河以北破駅荒涼トシテ村落ノ如シ。駄(だ)ハ多ク牝馬ヲ用ユ。往往駒(く)ノ尾ニ跟(つ)キ乳ヲ索(もと)ムルヲ見ル。須賀川(すかがわ)ノ駅ニ宿ス。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
重なり合い折れ朽(くち)ている雑草の上を黝(く)すんだ空気が、飄々(ひょうひょう)と流れ、彷徨(さまよ)うのを鈍い目で追跡し、ヤッと手を伸ばせば、その朽草(くちくさ)の下の、月の破片(かけら)が
自殺 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
東西僧堂にて頗(すこぶ)る大きな鼓(く)を鳴らす音。それを合図に教団の人々左右より出で来り、二列に内庭に立つ。再び金鈴の音ありて後居室の扉開く。正面に釈尊、定印を結び思惟の膝を組み居る。
阿難と呪術師の娘 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
ワグネルが『タンホイゼル』の第三齣(く)、『フアウスト』歌劇中のローマンマーチ、さてはかの名高き『ウヰルヘルム・テル』の管絃楽(オーケストラ)『ローヘングリン』の花嫁の進行曲もありき。
閑天地 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)