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拱
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く
ふりがな文庫
“
拱
(
く
)” の例文
お勢
母子
(
ぼし
)
の者の出向いた
後
(
のち
)
、文三は
漸
(
ようや
)
く
些
(
すこ
)
し
沈着
(
おちつい
)
て、
徒然
(
つくねん
)
と机の
辺
(
ほとり
)
に
蹲踞
(
うずくま
)
ッたまま腕を
拱
(
く
)
み
顋
(
あご
)
を
襟
(
えり
)
に埋めて
懊悩
(
おうのう
)
たる物思いに沈んだ。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
そうです、わたしが家に坐って、眼をつぶって、腕を
拱
(
く
)
んで、どうもそうらしいようだと考えていた事が、まず大抵は壷に
嵌
(
はま
)
りましたからね。
半七捕物帳:68 二人女房
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
悪々
(
にくにく
)
しい皮肉を聞かされて、グッと行きづまって了い、手を
拱
(
く
)
んだまま
暫時
(
しばし
)
は頭も
得
(
え
)
あげず、涙をほろほろこぼしていたが
酒中日記
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
すると、さっきから、森の薄暗がりに、黙然と腕を
拱
(
く
)
みあわせて、こっちをながめていた
繭買
(
まゆかい
)
の銀六老人が、のそ、のそ、と歩いて来ながら
無宿人国記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
岩田氏は胸の上に両手を
拱
(
く
)
むで、哲学者のやうにじつと頭を下げて銀座通りを歩いてゐる自分の姿を想像してみたりした。
茶話:05 大正八(一九一九)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
▼ もっと見る
それから眼と唇を閉じて腕を
拱
(
く
)
んでジッと何か考えていたが、やがて眼を開くと同時にハッキリした口調で云った。
あやかしの鼓
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
学者先生が多勢お集まりになって、腕を
拱
(
く
)
んで首を捻っていなさる。はて、わからねえ——。
安重根:――十四の場面――
(新字新仮名)
/
谷譲次
、
林不忘
(著)
髪をオールバックにチックで反らして、美髯の、瀟洒な風姿であるが、何か気取って、笑うにも声もさして立てず、
肯
(
うなず
)
き肯きする。腕を
拱
(
く
)
む。ボーイに麦酒ひとつ呼んだことがない。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
しかし、困ったといって、こうして腕を
拱
(
く
)
んで、
阿呆
(
あほう
)
見たいな顔はしていられない。どうにかしなければならないという気が何よりもまず先立って来る。あの百観音が今焼かれようとしている。
幕末維新懐古談:33 蠑螺堂百観音の成り行き
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
『よし、さらば、
詰問
(
きつもん
)
せん』
王樣
(
わうさま
)
は
冱々
(
さえ/″\
)
しからぬ
御容子
(
ごようす
)
にて、
腕
(
うで
)
を
拱
(
く
)
み、
眉
(
まゆ
)
を
顰
(
ひそ
)
め、
兩眼
(
りようがん
)
殆
(
ほと
)
んど
茫乎
(
ぼうツと
)
なる
迄
(
まで
)
、
料理人
(
クツク
)
を
凝視
(
みつ
)
めて
居
(
を
)
られましたが、やがて
太
(
ふと
)
い
聲
(
こゑ
)
で、『
栗饅頭
(
くりまんぢう
)
は
何
(
なに
)
から
製
(
つく
)
られるか?』
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
手を
拱
(
く
)
んで考えているうち、内儀の日傘の上に日かげが移っていた。
蛾
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
と腕を
拱
(
く
)
み、権九郎の様子をじっと窺う。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
枝々の
拱
(
く
)
みあはすあたりかなしげの
在りし日の歌:亡き児文也の霊に捧ぐ
(新字旧仮名)
/
中原中也
(著)
と胸を抱くように腕を
拱
(
く
)
んで
夫人利生記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
腕
(
うで
)
拱
(
く
)
みて
一握の砂
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
戴宗は、彼にも
呪符
(
じゅふ
)
を持たせて、大きく腹中の気を
空
(
くう
)
へぷっと吐くやいな、
楊林
(
ようりん
)
の腕を
拱
(
く
)
んで飛走しだした。楊林は驚いた。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
暫らくの間は腕を
拱
(
く
)
んで、
顋
(
あご
)
を
襟
(
えり
)
に
埋
(
うず
)
めて、身動きをもせずに
静
(
しずま
)
り返ッて黙想していたが、
忽
(
たちま
)
ちフッと首を振揚げて
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
そして
確
(
たしか
)
に請取つた
由
(
よし
)
を言つたが、印度人は何か
待心
(
まちごころ
)
でゐるらしく、両手を胸の上に
拱
(
く
)
んだまゝ、
卓子
(
テーブル
)
の前に
立
(
た
)
ち
跨
(
はだ
)
かつて一向帰らうとしなかつた。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
半七は腕を
拱
(
く
)
んだ。どういう仔細があるか知らないが、おやじの新兵衛は土地を売って他国へ行こうという。
半七捕物帳:19 お照の父
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
生きざらむ命思はず仰ぎ寢て手は
拱
(
く
)
みにけり敢て息
繼
(
つ
)
ぎ
白南風
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
と織次は
屹
(
きっ
)
と腕を
拱
(
く
)
んだ。
国貞えがく
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
腕
拱
(
く
)
みながら歩み去る。
山羊の歌
(新字旧仮名)
/
中原中也
(著)
腕
拱
(
く
)
みて
一握の砂
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
しっかり、両方から腕を
拱
(
く
)
んで、ずるずると吉田町の河岸まで来ると、樫井と西村は、いきなり男を河の中へ突き落した。
かんかん虫は唄う
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
後
(
あと
)
に残つた宮嶋氏は、手を
拱
(
く
)
んで困りきつた顔をした。そしてペンギン
鳥
(
てう
)
やペリカン
鳥
(
てう
)
が食べ過ぎて腹を痛めた場合の処方箋を考へ出してみたりした。
茶話:05 大正八(一九一九)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
跡で文三は
暫
(
しば
)
らくの間また腕を
拱
(
く
)
んで黙想していたが、フト何か
憶出
(
おもいだ
)
したような
面相
(
かおつき
)
をして、
起上
(
たちあが
)
ッて羽織だけを着替えて、帽子を片手に二階を降りた。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
半七は殆ど猪口をそのままにして腕を
拱
(
く
)
んでいた。十右衛門も黙って自分の膝の上を眺めていた。一匹の蠅が障子の紙を忙がしそうに渡ってゆく
跫音
(
あしおと
)
が微かに響いた。
半七捕物帳:03 勘平の死
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
生きざらむ命思はず仰ぎ寝て手は
拱
(
く
)
みにけり敢て息
継
(
つ
)
ぎ
白南風
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
と、羅門塔十郎は、その活眼から燃えるするどい洞察力のあらんかぎりをこめているように、腕を
拱
(
く
)
んで、じいっと、奥の方を見つめながら呟いた。
牢獄の花嫁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と言つたきり、大きな腕を胸の上で
拱
(
く
)
んだ
儘
(
まゝ
)
、
大跨
(
おほまた
)
に
其辺
(
そこら
)
を歩き廻つてゐたが、いつの間にか姿が見えなくなつた。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
手はかたく
十字
(
じふじ
)
拱
(
く
)
み
邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
机の前に、腕を
拱
(
く
)
んで、新蔵は思わず太い息をついた——自分を
措
(
お
)
いて今、誰が老いたる師の病床を見る者があろう。
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と、じつと両手を
拱
(
く
)
んで思案に暮れてゐたが、ふと忘れ物をしてゐるのに気が注いてにやりとした。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
と、東儀もさすがに、死をもって、子の
破滅
(
はめつ
)
を救おうとする親心の前には、太い息をついて、腕を
拱
(
く
)
んでしまった。
牢獄の花嫁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
大麓はかういつて、両手を胸の上で
X
(
エツキス
)
といふ字に
拱
(
く
)
んだ。根が数学者だけに文字の恰好もよかつた。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
と、部屋の者はこう
囁
(
ささや
)
いて、皆、
大刀
(
どす
)
を
鞘
(
さや
)
におさめ、
性
(
しょう
)
もなく凍えきッた手を、ふところの奥に
拱
(
く
)
んでしまった。
八寒道中
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
小十郎は両手を
拱
(
く
)
んで考へ込んだ。
身体
(
からだ
)
ぢゆうを時鳥が矢のやうに飛んでゐるやうに思つたが、どうしてもその尻尾を
捉
(
とら
)
へる事が出来なかつた。で、やつとこさの事で
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
石秀は腕を
拱
(
く
)
み、
睨
(
ね
)
めすえるような眼で
女轎
(
おんなかご
)
の巧雲を見送った。淫婦め! と口のうちでは言っている。そして
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「所で最後の勇ぢやが……」と侯爵は
拱
(
く
)
んだ手を
解
(
ほど
)
いて、鉄砲のやうにまた前へ突き出した。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
そのうちに、沢庵の眼のまわりに、何ともいえない親しみぶかい
皺
(
しわ
)
が
和
(
なご
)
やかに寄ると、
拱
(
く
)
んでいた腕を解いて
宮本武蔵:02 地の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
農夫
(
ひやくしやう
)
は豚の前に立つて、手を
拱
(
く
)
むで考へ込んだ。お慈悲の深い神様は、貧乏なその男のために取つて置きの良い智慧を恵んで下すつたので、
農夫
(
ひやくしやう
)
ははたと手を
拍
(
う
)
つて喜んだ。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
罪の父は、
苛責
(
かしゃく
)
にたえかね、ついに書物もとじふせて、しんしんと傷む心を、両腕に
拱
(
く
)
んでいた。
大岡越前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「次は仁で、先づ庄屋のお人好しといつた所ぢやが……」と投げ出した手を庄屋のやうに胸の上で
拱
(
く
)
んだ。「ぢやが、当今のやうな時勢では、得て狐の智慧に
騙
(
だま
)
され易くての。」
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
その姿を、無作法に眼で撫で廻しながら、人足たちは
木像蟹
(
もくぞうがに
)
のような腕を
拱
(
く
)
んで近づいて来た。
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
医者は手を
拱
(
く
)
んで考へた。アンチヘブリンを
服
(
の
)
まさうかとも思つたが、それにしては熱が少しもなかつた。下剤をかけようかとも思つたが、それにしては腹に少しの
滞
(
とどこほ
)
りもなかつた。
茶話:06 大正十一(一九二二)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
三囲
(
みめぐり
)
の土手に立って、ぼんやり腕を
拱
(
く
)
んでいた。何となく、不安が胸へ潮のようにさしてくる。
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
今日久し振りで私を訪ねて来た——会社の人事係月俸百三十七円のB氏は、かういつて、用のない空気枕のやうにすうと長い溜息をついて、がつしりした胸の上で両手を
拱
(
く
)
み合せた。
茶話:07 大正十四(一九二五)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
と云ったのみで、腕を
拱
(
く
)
んで、
樹
(
こ
)
の
間
(
ま
)
に遠く見える本丸の
狭間
(
はざま
)
を睨みつめている者もある。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
すると、満谷氏は胸の上で手を
拱
(
く
)
むで、そつと溜息をついた。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
沢庵はそれっきり黙っていた、胸の両の腕を静かに
拱
(
く
)
む、そして、武蔵が睨んでいる限り彼も相手を見つめているのだ、——息の数まで同じように合せて呼吸しているように。
宮本武蔵:02 地の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
拱
漢検1級
部首:⼿
9画
“拱”を含む語句
拱手
腕拱
拱廊
拱揖
斗拱
拱門
手拱
拱手傍観
拱格
老拱
拱黙
拱道
拱路
拱貫
拱衛
拱梁
三拱
拱州
拱居
拱基
...