)” の例文
乳牛はすこしがたがた四を動かしたが、飼い葉をえて一しんいはじめる。花前は、いささか戒心かいしん態度たいどをとってしぼりはじめた。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
「なにかわしてやりな。なあに、悪いことをするやつなら、ひもじくなって倒れなんかしやぁしねえ。早くなにか食わせてやれ。」
清造と沼 (新字新仮名) / 宮島資夫(著)
また貝殼かひがら一方いつぽうしかないといふことは、自然しぜんにたまつたものでなく、むかしひとつてからをすてたものであるといふほかはないのです。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
暑い木陰のない路を歩いてきて、ここで汗になった詰襟つめえり小倉こくらの夏服をぬいで、瓜をった時のうまかったことを清三は覚えている。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
「じゃ、弦之丞様、今夜はちょっとお暇をいただいて、うちの様子を見たり、また、当座とうざものを少し仕入れてまいりますから——」
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なんの、らい肥りの貧乏公家が何事をなし得ようぞと、彼はさんざんに実雅を罵って、無理無体に彼女を自分の物にしてしまった。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
元来がんらいこのバナナが正しい形状を保っていたなら、こんなえる肉はできずに繊維質のかた果皮かひのみと種子とが発達するわけだけれど
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
お友達がなく、自分でつて、自分で自分を助けてゆかねばならない人が、たんとあるのだ。では、その人たちはどうするのだらう?
二人ふたり呉服屋ごふくや反物たんものつてた。米屋こめやからこめつてつた。けれども其他そのたには一般いつぱん社會しやくわいところきはめてすくない人間にんげんであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
清水一角の武骨な手が、きょうも朝かららい酔って大の字形に寝こんでいる、兄狂太郎のからだに掛かって、揺り起そうとした。
口笛を吹く武士 (新字新仮名) / 林不忘(著)
大方遊んでばかりいやがったのだろう、このつぶ野郎やろうめッてえんでもって、釣竿を引奪ひったくられて、げるところをはすたれたんだ。
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
そのわりまた、ねずみがわるさをはじめたら、いつでもつけ次第しだいころしてもかまわない。どうだね、それで承知しょうちしてくれるか。
猫の草紙 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
よるになると方々ほう/″\あるまはつて、たけのこ松茸まつたけいもいね大豆等だいずなど農作物のうさくぶつをあらしたり、ひ、野鼠のねずみうさぎなどもとらへて餌食ゑじきにします。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
白は屠所の羊の歩みで、牽かれてようやくいて来た。停車場前の茶屋で、駄菓子だがしを買うてやったが、白はおうともしなかった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
なになにをしたつて身體からださへはたらかせりや、彼女あれはせて、ちゝはのまされます。」と、仕立屋したてやさんは、いそ/\とかへつていつた。
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
A いよ/\馬鹿ばかだなア此奴こいつは。およそ、洒落しやれ皮肉ひにく諷刺ふうしるゐ説明せつめいしてなんになる。刺身さしみにワサビをけてやうなもんぢやないか。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
みんなは自分じぶんたちがいきれぬほど収穫しゅうかくのあるのをよろこんでいます。そのさまは、とてもこの天国てんごく楽園らくえんさまどころではありません。
消えた美しい不思議なにじ (新字新仮名) / 小川未明(著)
マーキュ はて、うさぎではない、うさぎにしても脂肪あぶら滿ったやつではなうて、節肉祭式レントしき肉饅頭にくまんぢうはぬうちから、ふるびて、しなびて……
いまにもクマにわれそうになりながら、そのクマが人間にねらわれていることを教えてやって、あぶないところをすくってやったり
そのうへ個人こじん經濟状態けいざいじやうたいよつ是非ぜひなく粗惡そあくしよく我慢がまんせねばならぬひともあり、是非ぜひなく過量くわりやう美味びみはねばならぬひともある。
建築の本義 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
かねて燻製には意地いじのはったる博士は、卓子テーブルの上に載っている残りのノクトミカ・レラティビアの肉を一片又一片と口の中にほうり込む。
大井は酔人すゐじんを虎がねるやうに、やゝ久しく立ちすくんでゐたが、やう/\思ひ切つて、「やつ」と声を掛けて真甲まつかふ目掛めがけて切りおろした。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
らそれから五百匁ひやくめぐれえ軍鷄雜種しやもおとしくゝつて一ぺんつちまつたな、さうしたらねつた」かれにはかこゑひくくしたが、さら以前いぜんかへつて
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
その畜生ちくしやうおとされるとは、なにかの因縁いんえんちがひございません。それは石橋いしばしすこさきに、なが端綱はづないたままみちばたの青芒あをすすきつてりました。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「うまそうないものやみものの、いっぱいならべてあるテーブルがあってな、そのまわりにどろぼうどもがすわって、ごきげんでいる。」
『ほんとに、さうでしたねえ』とだれ合槌あひづちうつれた、とおもふと大違おほちがひ眞中まんなか義母おつかさんいましもしたむい蒲鉾かまぼこいでらるゝところであつた。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
しかし決して岩倉公に無礼をくわうるかんがえなく、ただえといわれたから食ったまでで、いわば至当のことをなしたに過ぎぬ。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
なにいつくようなくろじゃなし、げてなんぞないでも、大丈夫だいじょうぶかね脇差わきざしだわな。——こっちへおいで。あたまけてあげようから。……
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
その左右に帝釈天たいしゃくてんのような青白い穏かなかおが、かえって物凄い無気味さを以て、三つまで正面首の左右にっついている。
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
彼女は自分で扶持ぶちを稼いでゐるので、決して楽ではないであらうに、貧しい中でもリヽーに滋養分を与へると見える。
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
我彼に曰ふ、我は汝の欺くをしる、ブランカ・ドーリアは未だ死なず、彼ひ飮みねまたころもを着るなり 一三九—一四一
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
『鮎うまかつたなえ』『旨かつたなえ、おれ頭も皆た』『おまへ腹わたもたか』『うん腹わたもたす、骨もくた』
最上川 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
半時間毎はんじかんごとくらいかれ書物しょもつからはなさずに、ウォッカを一ぱいいでは呑乾のみほし、そうして矢張やはりずに胡瓜きゅうり手探てさぐりぐ。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
居酒屋や食べ物屋のごとくで彼を釣ろうとするのもあるし、呉服屋や宝石屋のごとく洒落気しゃれけでとらえようとするのもあるし、理髪店、靴店
一所ひとつところに土橋がかかっていた。その下に枯蘆かれあしが茂っていた。また一所にの口があった。枯れたこけいていた。
隠亡堀 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
なにない。——ないけれど面白おもしろい。疲勞ひらうしては天幕てんとり、菓物くわぶつひ、サイダをむ。いきほひをてはまたりにかゝるが、はなはだしくなにない。
遠くにちらつく燈火を目当に夜道を歩み、空腹に堪えかねて、見あたり次第、酒売る家に入り、怪しげな飯盛めしもりの女に給仕をさせて夕飯をう。電燈の薄暗さ。
西瓜 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
灸は指をわえて階段の下に立っていた。田舎宿いなかやど勝手元かってもとはこの二人の客で、急に忙しそうになって来た。
赤い着物 (新字新仮名) / 横光利一(著)
うしたんだ……どう/\……ハハアわかつたいまつたもちが、大仏餅だいぶつもちだから、から鼻へけたのだ。
さういふ人達ひとたちきて鬪鷄しやもをむしりまして、まへまはして面白おもしろがつたものです。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
わるもののキツネのズルスケは、下巻げかんのほうのお話にも出てきています。なんとかしてガンのむれをいちらし、ニールスをころしてしまおうと、つけねらっているのです。
このはず、まずにくらして、くるしき一夜いちやは、一睡いつすいゆめをもむすばず翌朝よくあさむかへたが、まだんの音沙汰おとさたい、ながめるとそらにはくもひくび、やままたやま彼方此處あちこちには
虫といえば去年の夏頃腸チフスの虫が水と一緒に流れ込んで来た時には驚いたよ。あの虫は腸のチフスという位で私へばかりってかかってあんなひどい目に逢った事がない。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
『ナニ、さうぢやない!』と帽子屋ばうしやひました。『何故なぜッて、うもへるぢやないか、「わたしふところのものる」とも、また、「わたしるところのものふ」とも!』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
名越氏の著述を読んでみると、鼠のいたずらの是ほどはげしかった島もちょっと珍らしい。稲作もっとも害を受く。苗蒔なえまきのもみい、二、三寸出てからも食い、また穂さきも食う。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
その時宮の前のれんじの木に、男山おとこやまのほうから山ばとが三羽飛んできてあやしい声で鳴きつつらい合いをはじめました。それがいかにもしつこく、憎み合っているように、長い長い間。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
よね ボーイにそぎやん云ふて、何なツとて来なつせ、もう時間のなかツだるけん。
牛山ホテル(五場) (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
すると一ぴきのとんぼが出て来て、たちまちそのあぶをころしてんで行きました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
時鳥ほとヽぎす時分じぶんをさがしてかへるなどをみちくさにさし、れをはせておわびをするとか、れは本當ほんたう本當ほんたうはなしにて和歌うたにさへめば、姉樣ねえさまきてもわかることヽ吾助ごすけひたり
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「いくら呉れまっしゃろな? 六十円、それぐらいは貰わなていかれへんがな」
青春の逆説 (新字新仮名) / 織田作之助(著)