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喰
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く
ふりがな文庫
“
喰
(
く
)” の例文
身に浸みとおり、性格に
喰
(
く
)
い入って行った。従って彼のなすこと考えることは、一にかかって、彼らに対する何らかの反撃であった。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
表町
(
おもてちょう
)
で小さい
家
(
いえ
)
を借りて、酒に
醤油
(
しょうゆ
)
、
薪
(
まき
)
に炭、塩などの新店を出した時も、飯
喰
(
く
)
う
隙
(
ひま
)
が惜しいくらい、クルクルと働き詰めでいた。
新世帯
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
しかし光俊を見するなら、坂本の宝物渡しまで見すれば少しは筋が通れど、馬別れだけでは
喰
(
く
)
ひ足りずとは女子供までが申すなり。
明治座評:(明治二十九年四月)
(新字旧仮名)
/
三木竹二
(著)
一度でも
喰
(
く
)
えりゃまだいいだ。岩手の山奥じゃ、茶碗一ぱいの米のめしを、家から家へ持ち廻して、目で見るだけで喜んでるちゅうだ。
飢餓地帯を歩く:――東北農村惨状報告書――
(新字新仮名)
/
下村千秋
(著)
むす子がどれ程深く
喰
(
く
)
い入りそこから取り出すであろう芸術も、それをあの賢夫人やその他多くの世間人達がむす子に予言するような
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
▼ もっと見る
(互いが互いの反射作用のようにいい合っている間に、言葉の意味は全く
喰
(
く
)
い合わなくなって、それぞれ自身の幻想の中に落ちている)
胎内
(新字新仮名)
/
三好十郎
(著)
無事に着いたじゃねえかってんで、コチトラを初め、今まで怖がっていた毛唐連中をギャフンと
喰
(
く
)
らわせようって
心算
(
つもり
)
じゃねえかよ
難船小僧
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「人に驚かして
貰
(
もら
)
えばしゃっくりが止るそうだが、何も平気で居て牛肉が
喰
(
く
)
えるのに好んで
喫驚
(
びっくり
)
したいというのも
物数奇
(
ものずき
)
だねハハハハ」
牛肉と馬鈴薯
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
足音がまた廊下に響いて、女が
飯櫃
(
めしびつ
)
を持つて來た頃は、小池もお光も、
貪
(
むさぼ
)
り
喰
(
く
)
つた肉と野菜とに空腹を
滿
(
みた
)
して、ぐんにやりとしてゐた。
東光院
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
で、画かき達は曼舟氏を置いてきぼりにしてぐんぐん奥へ入つて往つた。
恰
(
ちやう
)
ど文展でいつも曼舟氏に置いてきぼりを
喰
(
く
)
はされたやうに。
茶話:05 大正八(一九一九)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
「やっぱりそうだ。恒川君、やつはこの辺で人形箱の
蓋
(
ふた
)
をひらいてみたんだ。そして、一杯
喰
(
く
)
わされたことを知って怒り出したんだね」
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
わたくしはあまりのもどかしさに、よくないことと
知
(
し
)
りながらもツイ
神様
(
かみさま
)
に
喰
(
く
)
ってかかり、さんざん
悪口
(
あくこう
)
を
吐
(
つ
)
いたことがございました。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
然し此れが寺だとすれば、
住持
(
じゅうじ
)
は恐ろしく悟の開けぬ、煩悩満腹、
貪瞋痴
(
どんじんち
)
の三悪を立派に具足した
腥坊主
(
なまぐさぼうず
)
である。彼は好んで人を
喰
(
く
)
う。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
唯
(
ただ
)
何でも書生を
養
(
やしなっ
)
て遣ると云うことが面白くて、書生の世話ばかりして、
凡
(
およ
)
そ当時仙台の書生で大童の家の飯を
喰
(
く
)
わない者はなかろう。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
珊瑚珠
(
さんごじゅ
)
は沢山輸入されて居るが日本のように
無瑕
(
むきず
)
の物は少なく虫の
喰
(
く
)
ったような物が多い。それでもチベット人は好んで付けます。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
「まあまあ、こんどだけはかにしてやっとくんやす。
利助
(
りすけ
)
さも、まさか
牛
(
うし
)
が
椿
(
つばき
)
を
喰
(
く
)
ってしまうとは
知
(
し
)
らずにつないだことだで。」
牛をつないだ椿の木
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
『ああ、いい
塩梅
(
あんばい
)
に
墜
(
を
)
ちやがつた。
自分
(
じぶん
)
の
眼玉
(
めだま
)
を
喰
(
く
)
ふなんて
阿呆
(
あほう
)
がどこにゐる。ペンペの
邪魔
(
じやま
)
さえゐなけりや、もう
後
(
あと
)
はをれのものだ。』
火を喰つた鴉
(新字旧仮名)
/
逸見猶吉
(著)
伯父が、スープにした鶏の骨に
庖丁
(
ほうちょう
)
を二、三度入れて、それを池へもって行くと、鯉がみんな浮いて来る。そしてその骨を
喰
(
く
)
うのである。
由布院行
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
此
(
こ
)
ん
中
(
なか
)
に人が
居
(
ゐ
)
るだらう。と
怪
(
け
)
しからん
奴
(
やつ
)
で、指の先へ
唾
(
つば
)
を
附
(
つ
)
け、ぷつりと
障子
(
しやうじ
)
へ穴を
開
(
あ
)
け
覗
(
のぞ
)
き見て、弥「いやア
何
(
なに
)
か
喰
(
く
)
つて
居
(
ゐ
)
やアがる。 ...
にゆう
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
若
(
も
)
しも
厭
(
いや
)
の何のと云おうものなら、
笞
(
しもと
)
の
憂目
(
うきめ
)
を見るは愚かなこと、いずれかのパシャのピストルの弾を
喰
(
く
)
おうも知れぬところだ。
四日間
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
喰
(
く
)
わせたいと思いもせずさ。ただうらやましがらせて、情けなく思わせて、おまえが心に泣いている、その顔を見たいばっかりよ。ははは
夜行巡査
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
悟浄は、自分を取って
喰
(
く
)
おうとした
鯰
(
なまず
)
の
妖怪
(
ばけもの
)
の
逞
(
たくま
)
しさと、水に溶け去った少年の美しさとを、並べて考えながら、蒲衣子のもとを辞した。
悟浄出世
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
鼠は浜に引上げられて皆ちりぢりに
遁
(
に
)
げうせ、島にはそれ以来鼠
満
(
み
)
ち満ちて畠の物を
喰
(
く
)
い失い、耕作ができなくなったという話。
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
「
汝
(
われ
)
も
喰
(
く
)
へ」
卯平
(
うへい
)
は
蕎麥掻
(
そばがき
)
を
分
(
わ
)
けてやつた。
彼
(
かれ
)
はさうして
更
(
さら
)
に
後
(
あと
)
の一
杯
(
ぱい
)
を
喫
(
きつ
)
して
其
(
その
)
茶碗
(
ちやわん
)
へ
湯
(
ゆ
)
を
汲
(
く
)
んで
飮
(
の
)
んだ。
藥罐
(
やくわん
)
は
輕
(
かる
)
くなつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
喰
(
く
)
ひ居候が妻も
馬士
(
まご
)
も
行衞
(
ゆくゑ
)
更に知れ申さず候間東西を尋ね廻り
往來
(
わうらい
)
の人々に承はるに今此先へ馬士が女を引立て行たりと申により猶ほ
後
(
あと
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
一年に三万人の
生霊
(
せいれい
)
が、この便利な機械文明に
喰
(
く
)
われてしまっている。日本に於ても
浜尾子爵閣下
(
はまおししゃくかっか
)
が「自動車
轢殺
(
れきさつ
)
取締
(
とりしまり
)
をもっと
峻厳
(
しゅんげん
)
にせよ」
電気看板の神経
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
その
上
(
うへ
)
個人
(
こじん
)
には
特殊
(
とくしゆ
)
の
性癖
(
せいへき
)
があつて、
所謂
(
いはゆる
)
好
(
す
)
き
嫌
(
きら
)
ひがあり、
甲
(
かふ
)
の
好
(
この
)
む
處
(
ところ
)
は
乙
(
おつ
)
が
嫌
(
きら
)
ふ
處
(
ところ
)
であり、
所謂
(
いはゆる
)
蓼
(
たで
)
喰
(
く
)
ふ
蟲
(
むし
)
も
好
(
す
)
き
好
(
ず
)
きである。
建築の本義
(旧字旧仮名)
/
伊東忠太
(著)
二十三日の晩のことも、今夜のことも、いつもお嬢さんがイニシアチブを取り、僕は黙ってそれに
喰
(
く
)
っ着いて行ったまでです。
鍵
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
そうして一字ごとにみんな黒点を加えて、お
灸
(
きゅう
)
を
据
(
す
)
えたつもりでいる。おれは床の中で、
糞
(
くそ
)
でも
喰
(
く
)
らえと
云
(
い
)
いながら、むっくり飛び起きた。
坊っちゃん
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
いつの日か、かならず
喰
(
く
)
いつかれるであろうという自信である。私は、きっと
噛
(
か
)
まれるにちがいない。自信があるのである。
畜犬談:―伊馬鵜平君に与える―
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
「
蓼
(
たで
)
喰
(
く
)
う
蟲
(
むし
)
」以後の谷崎君の作品は、残りなく通読しているつもりでいたが、この「武州公秘話」だけにはまだ目を触れていないのであった。
武州公秘話:02 跋
(新字新仮名)
/
正宗白鳥
(著)
ロンドンのサボイ・ホテルやカルトンで腕を
揮
(
ふる
)
っていた頃には、どれほどの
喰
(
く
)
いしん坊がはるばる海を渡って彼の皿を求めに来たか知れない。
世界の「料理王逝く」ということから
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
工場へ入つて
愈々
(
いよ/\
)
働くことになるまでには随分めんだうな手数を
喰
(
く
)
はされるのだ。二月や三月は居喰ひで過さねばなるまい。
煤煙の匂ひ
(新字旧仮名)
/
宮地嘉六
(著)
小説たるも随筆たるも
旨
(
むね
)
とする処は
男女
(
だんじょ
)
の仲のいきさつを写すなり。客と芸者の悶着を語るなり。亭主と女房の喧嘩犬も
喰
(
く
)
はぬ話をするなり。
矢はずぐさ
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
そうしてその二重の部屋(つまりこのおれの部屋だが)、それは夢と現実とをくっつけたように、何処かですこしずつ
喰
(
く
)
い違いを生じている。
恢復期
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
謂ふ心は、両足を
地面
(
ぢべた
)
に
喰
(
く
)
つ
付
(
つ
)
けてゐて歌ふ詩といふ事である。実人生と何等の間隔なき心持を以て歌ふ詩といふ事である。
弓町より
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
お前さんの
魂
(
たましい
)
がわたしの魂の中へ、丁度
蛆
(
うじ
)
が
林檎
(
りんご
)
の中へ
喰
(
く
)
い込むように喰い込んで、わたしの魂を喰べながら、段々深みへもぐり込むのだわ。
一人舞台
(新字新仮名)
/
アウグスト・ストリンドベリ
(著)
恩
(
おん
)
ある
人
(
ひと
)
は
二年目
(
にねんめ
)
に
亡
(
う
)
せて
今
(
いま
)
の
主
(
あるじ
)
も
内儀樣
(
かみさま
)
も
息子
(
むすこ
)
の
半次
(
はんじ
)
も
氣
(
き
)
に
喰
(
く
)
はぬ
者
(
もの
)
のみなれど、
此處
(
こゝ
)
を
死場
(
しにば
)
と
定
(
さだ
)
めたるなれば
厭
(
いや
)
とて
更
(
さら
)
に
何方
(
いづかた
)
に
行
(
ゆ
)
くべき
わかれ道
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
かつて或る暴風雨の日に
俄
(
にわか
)
に
鰻
(
うなぎ
)
が
喰
(
く
)
いたくなって、その頃名代の
金杉
(
かなすぎ
)
の
松金
(
まつきん
)
へ風雨を犯して
綱曳
(
つなひ
)
き
跡押
(
あとおし
)
付
(
つ
)
きの
俥
(
くるま
)
で
駈付
(
かけつ
)
けた。
二葉亭余談
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
この
妖
(
あや
)
しげな夢の風景には恐怖などと云うより、もっともっとどうにもならぬ郷愁が
喰
(
く
)
らいついてしまっているようなのだ。
鎮魂歌
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
「ばか、貴様は、女の尻に
喰
(
く
)
いつくだけが、得意なんだな」と
罵
(
ののし
)
り、
豪傑
(
ごうけつ
)
笑いしてから、上原なんかと行ってしまいました。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
「けれども山口を見給え、事務を取らせたらあの男程捗の往く者はあるまいけれども、やっぱり免を
喰
(
く
)
ったじゃアないか」
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
ぢや私もおつ
母
(
か
)
さんの言ふことをきかないで、油断した
罰
(
ばち
)
とあきらめて、お前さんに
喰
(
く
)
はれてしまひませう。けれども私には年よりの母がゐる。
孝行鶉の話
(新字旧仮名)
/
宮原晃一郎
(著)
平次は
度肝
(
どぎも
)
を拔かれました、
檜木
(
ひのき
)
官之助の細目に開いた格子へ手をかけて、ガラリとやると、頭の上から小氣味の良い一
喝
(
かつ
)
を
喰
(
く
)
はされたのです。
銭形平次捕物控:303 娘の守袋
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
彼は歯を
喰
(
く
)
ひしばつて
口惜
(
くや
)
しがつた。が、やつぱりどうすることも出来なかつた。
覿面
(
てきめん
)
なもので、林檎林はその後、日に増し生気を失つて行つた。
新らしき祖先
(新字旧仮名)
/
相馬泰三
(著)
小父
(
おぢ
)
さんの帰りはとつかはと馬車に乗りて
喰
(
く
)
はねばならぬ
我宿
(
わがやど
)
の三
膳
(
ぜん
)
の
冷飯
(
ひやめし
)
に急ぎ
申候
(
まうしそろ
)
。
今
(
いま
)
や
則
(
すなは
)
ち
如何
(
いかん
)
前便
(
ぜんびん
)
申上
(
まうしあ
)
げ
候
(
そろ
)
通り、
椽端
(
えんばた
)
の
日向
(
ひなた
)
ぼつこに
候
(
そろ
)
。
もゝはがき
(新字旧仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
仁右衛門はいわれる事がよく飲み込めはしなかったが、腹の中では
糞
(
くそ
)
を
喰
(
く
)
らえと思いながら、今まで働いていた畑を気にして入口から眺めていた。
カインの末裔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
だれかゞ
喰
(
く
)
ひつかれでもしたら、あとで悔んでも追ッつかないでせう、ともかく、その男に一おう見ておもらひなさいと、しきりにさう言ひました。
蛇つかひ
(新字旧仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
何か気に
喰
(
く
)
わぬことを言われた
口惜
(
くやし
)
まぎれに、
十露盤
(
そろばん
)
で番頭の頭をブン
擲
(
なぐ
)
ったのは、宗蔵が年季奉公の最後の日であった。流浪はそれから始まった。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
... それだから自然と仕事も粗末になって荒ごなしの物を
和郎
(
おまえ
)
さんの方へ送って
進
(
あ
)
げて毎度
剣突
(
けんつく
)
を
喰
(
く
)
うがこれからはお互に仲を
好
(
よ
)
くしようではないか」腸蔵
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
喰
漢検準1級
部首:⼝
12画
“喰”を含む語句
漆喰
喰付
馬喰
喰込
喰物
大喰
酒喰
面喰
馬喰町
喰切
喰止
何喰
喰屍鬼
出喰
喰違
虫喰
漆喰壁
買喰
喰殺
喰気
...