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蕎麥掻
「
汝も
喰へ」
卯平は
蕎麥掻を
分けてやつた。
彼はさうして
更に
後の一
杯を
喫して
其茶碗へ
湯を
汲んで
飮んだ。
藥罐は
輕くなつた。
其夕暮であつたか、
小六は
又寒い
身體を
外套に
包んで
出て
行つたが、
八時過に
歸つて
來て、
兄夫婦の
前で、
袂から
白い
細長い
袋を
出して、
寒いから
蕎麥掻を
拵らえて
食はうと
思つて
今川橋の
際に
夜明しの
蕎麥掻きを
賣り
初し
頃の
勢ひは千
鈞の
重きを
提げて
大海をも
跳り
越えつべく、
知る
限りの
人舌を
卷いて
驚くもあれば、
猪武者の
向ふ
見ず
もとより
奧樣が
派手作りに
田舍ものゝ
姉者人がいさゝか
似たるよしは
無けれど、
中學校の
試驗前に
夜明しをつゞけし
頃、
此やうな
事を
言ふて、
此やうな
處作をして、
其上には
蕎麥掻きの
御馳走