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蕎麥掻
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そばがき
「
汝も
喰へ」
卯平は
蕎麥掻を
分けてやつた。
彼はさうして
更に
後の一
杯を
喫して
其茶碗へ
湯を
汲んで
飮んだ。
藥罐は
輕くなつた。
其夕暮であつたか、
小六は
又寒い
身體を
外套に
包んで
出て
行つたが、
八時過に
歸つて
來て、
兄夫婦の
前で、
袂から
白い
細長い
袋を
出して、
寒いから
蕎麥掻を
拵らえて
食はうと
思つて
卯平は
蕎麥粉を
大事にして、
勘次が
開墾に
出た
後で
藥罐の
湯を
沸しては
蕎麥掻を
拵へてたべた。
其の
頃は
彼の
提げて
來た二
罎の
醤油はもう
無くなつて
居た。
其晩は
何故暮のうちに
式を
濟まさないかと
云ふのが、
蕎麥掻の
出來上る
間、三
人の
話題になつた。
御米は
方位でも
惡いのだらうと
臆測した。
宗助は
押し
詰つて
日がないからだらうと
考へた。
繩で
括つた
別の
罎の
底の
方に
醤油が
少しあつた。
卯平はそれでも
其れを
見つけて
漸く
蕎麥掻の
味を
補つた。