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暮
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く
ふりがな文庫
“
暮
(
く
)” の例文
あはれ
新婚
(
しんこん
)
の
式
(
しき
)
を
擧
(
あ
)
げて、
一年
(
ひとゝせ
)
の
衾
(
ふすま
)
暖
(
あたゝ
)
かならず、
戰地
(
せんち
)
に
向
(
むか
)
つて
出立
(
いでた
)
つた
折
(
をり
)
には、
忍
(
しの
)
んで
泣
(
な
)
かなかつたのも、
嬉涙
(
うれしなみだ
)
に
暮
(
く
)
れたのであつた。
雪の翼
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
もし、二つなり、三つなりが、いっしょに
明
(
あか
)
るい
世界
(
せかい
)
へ
出
(
で
)
ることがあったら、たがいに
依
(
よ
)
り
合
(
あ
)
って
力
(
ちから
)
となって
暮
(
く
)
らしそうじゃないか。
明るき世界へ
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
年の
暮
(
く
)
れに軍功のあった
侍
(
さむらい
)
に加増があって、甚五郎もその数に
漏
(
も
)
れなんだが、藤十郎と甚五郎との二人には賞美のことばがなかった。
佐橋甚五郎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
この日、夕方までロボの遠ぼえがきこえていたが、日が
暮
(
く
)
れると、その声はだんだんに近づき次第にかなしい調子を
帯
(
お
)
びてきかれた。
動物物語 狼の王ロボ
(新字新仮名)
/
アーネスト・トンプソン・シートン
(著)
陰陽博士
(
おんやうはくし
)
で聞えた
安倍晴明
(
あべのせいめい
)
の後裔が京都の
上京
(
かみぎやう
)
に住んでゐる。ある時日の
暮
(
く
)
れ
方
(
かた
)
に
急
(
いそ
)
ぎ
歩
(
あし
)
で一条戻り橋を通りかゝると、橋の下から
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
▼ もっと見る
われを君が
仇
(
あだ
)
と
思
(
おぼ
)
し給ふ
勿
(
なか
)
れ、われは君のいづこに
在
(
いま
)
すかを
辨
(
わきま
)
へず、また見ず、また知らず、
唯
(
たゞ
)
この涙に
暮
(
く
)
るゝ
面
(
おもて
)
を君の方に向けたり。
頌歌
(旧字旧仮名)
/
ポール・クローデル
(著)
坊主
(
ぼうず
)
ではない、てんぐだというものもありました。そしてみんなこわがって、日が
暮
(
く
)
れると
五条
(
ごじょう
)
の
橋
(
はし
)
をとおる
者
(
もの
)
がなくなりました。
牛若と弁慶
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
どうもひとのうちの
門口
(
かどぐち
)
に立って、もしもし今晩は、私は旅の者ですが、日が
暮
(
く
)
れてひどく困っています。今夜一晩
泊
(
と
)
めて下さい。
楢ノ木大学士の野宿
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
一
風呂
(
ふろ
)
浴
(
あ
)
びて
日
(
ひ
)
の
暮
(
く
)
れゆけば
突
(
つき
)
かけ
下駄
(
げた
)
に七五三の
着物
(
きもの
)
、
何屋
(
なにや
)
の
店
(
みせ
)
の
新妓
(
しんこ
)
を
見
(
み
)
たか、
金杉
(
かなすぎ
)
の
糸屋
(
いとや
)
が
娘
(
むすめ
)
に
似
(
に
)
て
最
(
も
)
う一
倍
(
ばい
)
鼻
(
はな
)
がひくいと
たけくらべ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
ふるくからの
習慣
(
しゅうかん
)
をまもって、平和に
暮
(
く
)
らしている村の人たちは、この男のやることが気まぐれで、ひどく変わっているように思えた。
透明人間
(新字新仮名)
/
ハーバート・ジョージ・ウェルズ
(著)
そうなれば、なまけものだといって
叱
(
しか
)
られることもないでしょうし、だいいち、すきなように、ぶらぶら
暮
(
く
)
らすこともできるでしょう。
ニールスのふしぎな旅
(新字新仮名)
/
セルマ・ラーゲルレーヴ
(著)
「それから
何
(
な
)
んだぜ。火がおこったら、
直
(
す
)
ぐに
行燈
(
あんどん
)
を
掃除
(
そうじ
)
しときねえよ。こんな
日
(
ひ
)
ァ、いつもより
日
(
ひ
)
の
暮
(
く
)
れるのが、ぐっと
早
(
はえ
)
えからの」
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
糟谷獣医
(
かすやじゅうい
)
は、去年の
暮
(
く
)
れ
押
(
お
)
しつまってから、この
外手町
(
そとでまち
)
へ
越
(
こ
)
してきた。入り口は
黒板
(
くろいた
)
べいの一部を
切
(
き
)
りあけ、
形
(
かたち
)
ばかりという門がまえだ。
老獣医
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
とうとう、少年は、
暗
(
くら
)
がりの中にいるのが心
細
(
ぼそ
)
くなってきた。日はもうとっくに
暮
(
く
)
れかけているのに、あかりがともらないのだ。
キリストのヨルカに召された少年
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
それからといふもの、お
月様
(
つきさま
)
は
怒
(
おこ
)
つて
日
(
ひ
)
が
暮
(
く
)
れると、
鶏
(
にはとり
)
の
眼
(
め
)
を
見
(
み
)
えぬやうにしてしまひました。それで「とりめ」になりました。
コドモノスケッチ帖:動物園にて
(新字旧仮名)
/
竹久夢二
(著)
初
(
はじ
)
めは
俳畫
(
はいぐわ
)
のやうだと
思
(
おも
)
つて
見
(
み
)
て
居
(
ゐ
)
たが、これ
實
(
じつ
)
に
畫
(
ゑ
)
でも
何
(
なん
)
でもない。
細雨
(
さいう
)
に
暮
(
く
)
れなんとする
山間村落
(
さんかんそんらく
)
の
生活
(
せいくわつ
)
の
最
(
もつと
)
も
靜
(
しづ
)
かなる
部分
(
ぶゝん
)
である。
湯ヶ原ゆき
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
伯父
(
をぢ
)
さんの
金米糖
(
こんぺいたう
)
に
勵
(
はげ
)
まされて、
復
(
ま
)
た
父
(
とう
)
さんも
石
(
いし
)
ころの
多
(
おほ
)
い
山坂
(
やまさか
)
を
登
(
のぼ
)
つて
行
(
い
)
きましたが、そのうちに
日
(
ひ
)
が
暮
(
く
)
れかゝりさうに
成
(
な
)
つて
來
(
き
)
ました。
ふるさと
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
御米
(
およね
)
は
猶
(
なほ
)
と
泣
(
な
)
き
出
(
だ
)
した。
宗助
(
そうすけ
)
も
途方
(
とはう
)
に
暮
(
く
)
れて、
發作
(
ほつさ
)
の
治
(
をさ
)
まるのを
穩
(
おだ
)
やかに
待
(
ま
)
つてゐた。さうして、
緩
(
ゆつ
)
くり
御米
(
およね
)
の
説明
(
せつめい
)
を
聞
(
き
)
いた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
疱瘡神
(
ほうそうがみ
)
を祭らなくなっても、種痘をさえほどこせば、たとえときどき
天然痘
(
てんねんとう
)
が流行しても、少しもおそれることなく
暮
(
く
)
らせるようになりました。
ジェンナー伝
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
里子
(
さとご
)
時代に、
乳母
(
うば
)
の家族と
狭
(
せま
)
くるしい一室で
暮
(
く
)
らしていたころの光景までが、おりおりかれの眼に
浮
(
う
)
かんでいたのである。
次郎物語:05 第五部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
冬になるとすっかり雪に
埋
(
うず
)
まってしまうこんな寒村に一人の看護婦を相手に
暮
(
く
)
らしている老医師とその美しい
野薔薇
(
のばら
)
の話
美しい村
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
蜩
(
ひぐらし
)
が
鳴
(
な
)
いたと
共
(
とも
)
に、
日
(
ひ
)
は
暮
(
く
)
れてしまつた、と
自分
(
じぶん
)
がふっとさう
考
(
かんが
)
へたのは、
山
(
やま
)
のかげが、
家
(
いへ
)
の
方
(
ほう
)
へさして
來
(
き
)
て、うす
暗
(
ぐら
)
くなつたためだつたのだ。
歌の話
(旧字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
『いろ/\
委
(
くわ
)
しい
事
(
こと
)
を
承
(
うけたまは
)
りたいが、
最早
(
もはや
)
暮
(
く
)
るゝにも
近
(
ちか
)
く、
此邊
(
このへん
)
は
猛獸
(
まうじう
)
の
巣窟
(
さうくつ
)
ともいふ
可
(
べ
)
き
處
(
ところ
)
ですから、
一先
(
ひとま
)
づ
我
(
わ
)
が
住家
(
すみか
)
へ。』と
銃
(
じう
)
の
筒
(
つゝ
)
を
擡
(
もた
)
げた。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
枷
(
かせ
)
にして
詰
(
つ
)
め寄るとなにとぞどこへなとお
遣
(
や
)
りなされて下さりませ一生独り身で
暮
(
く
)
らす私に足手まといでござりますと
涼
(
すず
)
しい顔つきで云うのである
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
玉依姫様
(
たまよりひめさま
)
は一々
首肯
(
うなづ
)
きながら
私
(
わたくし
)
の
物語
(
ものがたり
)
に
熱心
(
ねっしん
)
に
耳
(
みみ
)
を
傾
(
かたむ
)
けてくだされ、
最後
(
さいご
)
に
私
(
わたくし
)
が
独
(
ひと
)
りさびしく
無念
(
むねん
)
の
涙
(
なみだ
)
に
暮
(
く
)
れながら
若
(
わか
)
くて
歿
(
なくな
)
ったことを
申上
(
もうしあ
)
げますと
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
日が
暮
(
く
)
れると、いつの間にかホッケエ部の船室に入りこみ、ウイスキイの
瓶
(
びん
)
を片手に、時々
喇叭呑
(
らっぱの
)
みをやりながら
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
それから
又
(
また
)
、
魔女
(
まじょ
)
の
来
(
く
)
るのは、
大抵
(
たいてい
)
日中
(
ひるま
)
だから、
二人
(
ふたり
)
はいつも、
日
(
ひ
)
が
暮
(
く
)
れてから、
逢
(
あ
)
うことに
約束
(
やくそく
)
を
定
(
き
)
めました。
ラプンツェル
(新字新仮名)
/
ヤーコプ・ルートヴィッヒ・カール・グリム
、
ヴィルヘルム・カール・グリム
(著)
今その格子戸を明けるにつけて、細君はまた今更に物を思いながら外へ出た。まだ
暮
(
く
)
れたばかりの
初夏
(
しょか
)
の
谷中
(
やなか
)
の風は上野つづきだけに
涼
(
すず
)
しく心よかった。
鵞鳥
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
憑きものは落ちたが、以前の勤勉の習慣は
戻
(
もど
)
って来なかった。働きもせず、さりとて、物語をするでもなく、シャクは毎日ぼんやり湖を眺めて
暮
(
く
)
らした。
狐憑
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
それに
咳嗽
(
せき
)
が出る。ちょうどそこに行田に戻り車がうろうろしていたので、やすく
賃銭
(
ちんせん
)
をねぎって乗った。寒い
路
(
みち
)
を日の
暮
(
く
)
れ
暮
(
ぐ
)
れにようやく家に着いた。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
すでにその日は、
天龍川
(
てんりゅうがわ
)
のほとりに
暮
(
く
)
れた三騎のひとびと、はたして、
翌日
(
よくじつ
)
の午後までに、
刑場
(
けいじょう
)
の
矢来
(
やらい
)
ぎわまで、
馳
(
か
)
けつけることができるのであろうか?
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
搜索
(
さがし
)
出して
修羅
(
しゆら
)
の
靈魂
(
みたま
)
を
慰
(
なぐ
)
さめん南無阿彌陀佛/\と
首
(
くび
)
を
抱
(
いだ
)
きしめ
暫
(
しばら
)
く涙に
暮
(
く
)
れ居たり夫より
回向院
(
ゑかうゐん
)
の下屋敷を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
『
否
(
いゝ
)
え、
然
(
さ
)
うではありません』と
云
(
い
)
つて
白兎
(
しろうさぎ
)
は、『
實
(
じつ
)
に
不思議
(
ふしぎ
)
だ』(
陪審官
(
ばいしんくわん
)
は
皆
(
みん
)
な
途方
(
とはう
)
に
暮
(
く
)
れて
了
(
しま
)
ひました)
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
そのわけもはじめてわかった。母は、
病院
(
びょういん
)
から帰ったあと、ハンケチのへりかがりをしていただけでは、この年の
暮
(
く
)
れが
越
(
こ
)
せないので、新しいしごとをはじめたのだ。
美しき元旦
(新字新仮名)
/
吉田甲子太郎
(著)
枯木
(
かれき
)
の
間
(
あひだ
)
には
殊更
(
ことさら
)
それが
明瞭
(
はつきり
)
と
目
(
め
)
に
立
(
た
)
つた。
黄昏
(
たそがれ
)
の
煙
(
けぶり
)
が
蒼
(
あを
)
く
割
(
わ
)
れた
空
(
そら
)
へ
吸
(
す
)
はれて
靜
(
しづ
)
かな
日
(
ひ
)
は
暮
(
く
)
れた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
折節
(
おりから
)
孰
(
いづ
)
れも
途方
(
とほう
)
に
暮
(
く
)
れて
居
(
お
)
りましたから、
取敢
(
とりあ
)
へず
之
(
これ
)
を
遣
(
や
)
ツて
見樣
(
みよう
)
と
云
(
い
)
ふので、
父親
(
ちゝおや
)
が
子供
(
こども
)
の
兩足
(
りようあし
)
を
捕
(
とら
)
へて
中
(
ちう
)
に
釣
(
つる
)
し、
外面
(
そと
)
を
向
(
む
)
かして
膝
(
ひざ
)
で
脊髓
(
せきずい
)
を
撞
(
つ
)
きました、トコロガ
手療法一則:(二月例会席上談話)
(旧字旧仮名)
/
荻野吟子
(著)
是より一行又
河
(
かは
)
を
溯
(
さかのぼ
)
り、
日
(
ひ
)
暮
(
く
)
れて
河岸
(
かはぎし
)
に
露泊
(
ろはく
)
す、此日や白樺の樹皮を
剥
(
は
)
ぎ来りて之を数本の竹上に
挿
(
はさ
)
み、火を
点
(
てん
)
ずれば其明
宛
(
さ
)
ながら
電気灯
(
でんきとう
)
の如し、鹽原君
其下
(
そのした
)
に在りて
利根水源探検紀行
(新字旧仮名)
/
渡辺千吉郎
(著)
わが背子が
朝
(
あさ
)
けの
形
(
すがた
)
能
(
よ
)
く
見
(
み
)
ずて
今日
(
けふ
)
の
間
(
あひだ
)
を
恋
(
こ
)
ひ
暮
(
く
)
らすかも 〔巻十二・二八四一〕 柿本人麿歌集
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
まアまア
何
(
なに
)
しろ
斯
(
こ
)
う
歇
(
や
)
みなしに雪が
降
(
ふ
)
つては
為方
(
しかた
)
がない、
此家
(
こ
)
の
檐下
(
のきした
)
を
拝借
(
はいしやく
)
しようか……エー
最
(
も
)
う日が
暮
(
く
)
れたからな、
尚
(
な
)
ほ
一倍
(
いちばい
)
北風
(
きたかぜ
)
が身に
染
(
し
)
むやうだ、
坊
(
ばう
)
は寒くはないか。
大仏餅。袴着の祝。新まへの盲目乞食
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
しかし
次
(
つぎ
)
の
日
(
ひ
)
の
暮
(
く
)
れ
方
(
かた
)
、おれは
帰
(
かへ
)
りゆく
労働者
(
らうどうしや
)
のすべての
拳
(
こぶ
)
しの
中
(
うち
)
に
握
(
にぎ
)
り
占
(
し
)
められたビラの
端
(
はし
)
を
見
(
み
)
た
電柱
(
でんちう
)
の
前
(
まへ
)
に、
倉庫
(
さうこ
)
の
横
(
よこ
)
に、
風
(
かぜ
)
にはためく
伝単
(
でんたん
)
を
見
(
み
)
た、
同志
(
どうし
)
よ
安
(
やす
)
んぜよ
生ける銃架:――満洲駐屯軍兵卒に――
(新字旧仮名)
/
槙村浩
(著)
そのうちに日が
暮
(
く
)
れてしまいました。新吉は
泣
(
な
)
きたくなりました。新吉は、公園の高台から、美しい
灯
(
ひ
)
の
街
(
まち
)
を見下ろしながら、いつまでもいつまでもそこに立っていました。
曲馬団の「トッテンカン」
(新字新仮名)
/
下村千秋
(著)
やゝ
眺
(
なが
)
めて居る内に、緑の武蔵野がすうと
翳
(
かげ
)
った。時計をもたぬ二人は
最早
(
もう
)
暮
(
く
)
るゝのかと思うた。蒸暑かった日は
何時
(
いつ
)
しか忘られ、水気を含んだ風が冷々と顔を撫でて来た。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
いやしくも『叔女』であり、おまけに公爵夫人ともあろう人に、返事をしないわけにはゆかず、ではどう返事をするかという段になると——母は
途方
(
とほう
)
に
暮
(
く
)
れざるを得なかった。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
山
(
やま
)
の
中
(
なか
)
に
古池
(
ふるいけ
)
がありました。そこに
蛙
(
かへる
)
の一
族
(
ぞく
)
が
何不自由
(
なにふじいう
)
なく
暮
(
く
)
らして、
住
(
す
)
んでをりました。
ちるちる・みちる
(旧字旧仮名)
/
山村暮鳥
(著)
恁
(
か
)
くて
後
(
のち
)
、
猶
(
なほ
)
二人
(
ふたり
)
の
話
(
はなし
)
は一
時間
(
じかん
)
も
續
(
つゞ
)
いたが、
其
(
そ
)
れより
院長
(
ゐんちやう
)
は
深
(
ふか
)
く
感動
(
かんどう
)
して、
毎日
(
まいにち
)
、
毎晩
(
まいばん
)
のやうに六
號室
(
がうしつ
)
に
行
(
ゆ
)
くのであつた。
二人
(
ふたり
)
は
話込
(
はなしこ
)
んでゐる
中
(
うち
)
に
日
(
ひ
)
も
暮
(
く
)
れて
了
(
しま
)
ふ
事
(
こと
)
が
往々
(
まゝ
)
有
(
あ
)
る
位
(
くらゐ
)
。
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
ある
地方
(
ちはう
)
の
郡立病院
(
ぐんりつびやうゐん
)
に、
長年
(
ながねん
)
看護婦長
(
かんごふちやう
)
をつとめて
居
(
を
)
るもとめは、
今日
(
けふ
)
一
日
(
にち
)
の
時間
(
じかん
)
からはなたれると、
急
(
きふ
)
に
心
(
こゝろ
)
も
體
(
からだ
)
も
弛
(
たる
)
んでしまつたやうな
氣持
(
きも
)
ちで、
暮
(
く
)
れて
行
(
ゆ
)
く
廊下
(
らうか
)
を
靜
(
しづ
)
かに
歩
(
ある
)
いてゐた。
悔
(旧字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
そして傾いたボートの
船縁
(
ふなべり
)
からすれすれに、
蒼冥
(
そうめい
)
と
暮
(
く
)
れた宵色の湖面が覗かれた。
金魚撩乱
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
孰
(
いづ
)
れも
渋々
(
しぶ/\
)
食堂
(
しよくだう
)
に
下
(
お
)
りて、
例
(
れい
)
に
依
(
よ
)
つて
旨
(
うま
)
くも
何
(
なん
)
ともない
晩餐
(
ばんさん
)
の
卓子
(
テーブル
)
に
就
(
つ
)
く。
食事
(
しよくじ
)
がすんで
又
(
また
)
甲板
(
かんぱん
)
に
出
(
で
)
ると、
日
(
ひ
)
は
既
(
すで
)
にとツぷりと
暮
(
く
)
れて、やツとのことで
船
(
ふね
)
は
桟橋
(
さんばし
)
に
横
(
よこ
)
づけになつたらしい。
検疫と荷物検査
(新字旧仮名)
/
杉村楚人冠
(著)
夏
(
なつ
)
の
盛
(
さかり
)
の
永
(
なが
)
い
日
(
ひ
)
も
暮
(
く
)
れかけ、いつもならば
洗湯
(
せんたう
)
へ
行
(
ゆ
)
き、それから
夕飯
(
ゆふめし
)
をすますと
共
(
とも
)
に、そろ/\
稼
(
かせ
)
ぎに
出掛
(
でか
)
ける
時刻
(
じこく
)
になるのであるが、
道子
(
みちこ
)
は
出
(
で
)
がけに
敷
(
し
)
いたまゝの
夜具
(
やぐ
)
の
上
(
うへ
)
に
横
(
よこ
)
たはると
吾妻橋
(新字旧仮名)
/
永井荷風
、
永井壮吉
(著)
往来
(
おうらい
)
にはつめたい風が吹いているし、今はもう
暮
(
く
)
れの
売出
(
うりだ
)
しの
時節
(
じせつ
)
です。
清造と沼
(新字新仮名)
/
宮島資夫
(著)
暮
常用漢字
小6
部首:⽇
14画
“暮”を含む語句
薄暮
日暮
夕暮
歳暮
年暮
朝暮
鰥暮
旦暮
日暮里
日暮方
御暮
暮秋
田舎暮
野暮
暮方
明暮
暮靄
皆暮
暮春
盆暮
...