)” の例文
あはれ新婚しんこんしきげて、一年ひとゝせふすまあたゝかならず、戰地せんちむかつて出立いでたつたをりには、しのんでかなかつたのも、嬉涙うれしなみだれたのであつた。
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
もし、二つなり、三つなりが、いっしょにあかるい世界せかいることがあったら、たがいにってちからとなってらしそうじゃないか。
明るき世界へ (新字新仮名) / 小川未明(著)
年のれに軍功のあったさむらいに加増があって、甚五郎もその数にれなんだが、藤十郎と甚五郎との二人には賞美のことばがなかった。
佐橋甚五郎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
この日、夕方までロボの遠ぼえがきこえていたが、日がれると、その声はだんだんに近づき次第にかなしい調子をびてきかれた。
陰陽博士おんやうはくしで聞えた安倍晴明あべのせいめいの後裔が京都の上京かみぎやうに住んでゐる。ある時日のかたいそあしで一条戻り橋を通りかゝると、橋の下から
われを君があだおぼし給ふなかれ、われは君のいづこにいますかをわきまへず、また見ず、また知らず、たゞこの涙にるゝおもてを君の方に向けたり。
頌歌 (旧字旧仮名) / ポール・クローデル(著)
坊主ぼうずではない、てんぐだというものもありました。そしてみんなこわがって、日がれると五条ごじょうはしをとおるものがなくなりました。
牛若と弁慶 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
どうもひとのうちの門口かどぐちに立って、もしもし今晩は、私は旅の者ですが、日がれてひどく困っています。今夜一晩めて下さい。
楢ノ木大学士の野宿 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
風呂ふろびてれゆけばつきかけ下駄げたに七五三の着物きもの何屋なにやみせ新妓しんこたか、金杉かなすぎ糸屋いとやむすめう一ばいはながひくいと
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ふるくからの習慣しゅうかんをまもって、平和にらしている村の人たちは、この男のやることが気まぐれで、ひどく変わっているように思えた。
そうなれば、なまけものだといってしかられることもないでしょうし、だいいち、すきなように、ぶらぶららすこともできるでしょう。
「それからんだぜ。火がおこったら、ぐに行燈あんどん掃除そうじしときねえよ。こんなァ、いつもよりれるのが、ぐっとはええからの」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
糟谷獣医かすやじゅういは、去年のしつまってから、この外手町そとでまちしてきた。入り口は黒板くろいたべいの一部をりあけ、かたちばかりという門がまえだ。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
とうとう、少年は、くらがりの中にいるのが心ぼそくなってきた。日はもうとっくにれかけているのに、あかりがともらないのだ。
それからといふもの、お月様つきさまおこつてれると、にはとりえぬやうにしてしまひました。それで「とりめ」になりました。
はじめは俳畫はいぐわのやうだとおもつてたが、これじつでもなんでもない。細雨さいうれなんとする山間村落さんかんそんらく生活せいくわつもつとしづかなる部分ぶゝんである。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
伯父をぢさんの金米糖こんぺいたうはげまされて、とうさんもいしころのおほ山坂やまさかのぼつてきましたが、そのうちにれかゝりさうにつてました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
御米およねなほした。宗助そうすけ途方とはうれて、發作ほつさをさまるのをおだやかにつてゐた。さうして、ゆつくり御米およね説明せつめいいた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
疱瘡神ほうそうがみを祭らなくなっても、種痘をさえほどこせば、たとえときどき天然痘てんねんとうが流行しても、少しもおそれることなくらせるようになりました。
ジェンナー伝 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
里子さとご時代に、乳母うばの家族とせまくるしい一室でらしていたころの光景までが、おりおりかれの眼にかんでいたのである。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
冬になるとすっかり雪にうずまってしまうこんな寒村に一人の看護婦を相手にらしている老医師とその美しい野薔薇のばらの話
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
ひぐらしいたとともに、れてしまつた、と自分じぶんがふっとさうかんがへたのは、やまのかげが、いへほうへさしてて、うすぐらくなつたためだつたのだ。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
『いろ/\くわしいことうけたまはりたいが、最早もはやるゝにもちかく、此邊このへん猛獸まうじう巣窟さうくつともいふところですから、一先ひとま住家すみかへ。』とじうつゝもたげた。
かせにしてめ寄るとなにとぞどこへなとおりなされて下さりませ一生独り身でらす私に足手まといでござりますとすずしい顔つきで云うのである
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
玉依姫様たまよりひめさまは一々首肯うなづきながらわたくし物語ものがたり熱心ねっしんみみかたむけてくだされ、最後さいごわたくしひとりさびしく無念むねんなみだれながらわかくて歿なくなったことを申上もうしあげますと
日がれると、いつの間にかホッケエ部の船室に入りこみ、ウイスキイのびんを片手に、時々喇叭呑らっぱのみをやりながら
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
それからまた魔女まじょるのは、大抵たいてい日中ひるまだから、二人ふたりはいつも、れてから、うことに約束やくそくめました。
今その格子戸を明けるにつけて、細君はまた今更に物を思いながら外へ出た。まだれたばかりの初夏しょか谷中やなかの風は上野つづきだけにすずしく心よかった。
鵞鳥 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
憑きものは落ちたが、以前の勤勉の習慣はもどって来なかった。働きもせず、さりとて、物語をするでもなく、シャクは毎日ぼんやり湖を眺めてらした。
狐憑 (新字新仮名) / 中島敦(著)
それに咳嗽せきが出る。ちょうどそこに行田に戻り車がうろうろしていたので、やすく賃銭ちんせんをねぎって乗った。寒いみちを日のれにようやく家に着いた。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
すでにその日は、天龍川てんりゅうがわのほとりにれた三騎のひとびと、はたして、翌日よくじつの午後までに、刑場けいじょう矢来やらいぎわまで、けつけることができるのであろうか?
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
搜索さがし出して修羅しゆら靈魂みたまなぐさめん南無阿彌陀佛/\とくびいだきしめしばらく涙にれ居たり夫より回向院ゑかうゐんの下屋敷を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
いゝえ、うではありません』とつて白兎しろうさぎは、『じつ不思議ふしぎだ』(陪審官ばいしんくわんみん途方とはうれてしまひました)
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
そのわけもはじめてわかった。母は、病院びょういんから帰ったあと、ハンケチのへりかがりをしていただけでは、この年のれがせないので、新しいしごとをはじめたのだ。
美しき元旦 (新字新仮名) / 吉田甲子太郎(著)
枯木かれきあひだには殊更ことさらそれが明瞭はつきりつた。黄昏たそがれけぶりあをれたそらはれてしづかなれた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
折節おりからいづれも途方とほうれてりましたから、取敢とりあへずこれツて見樣みようふので、父親ちゝおや子供こども兩足りようあしとらへてちうつるし、外面そとかしてひざ脊髓せきずいきました、トコロガ
是より一行又かはさかのぼり、れて河岸かはぎし露泊ろはくす、此日や白樺の樹皮をぎ来りて之を数本の竹上にはさみ、火をてんずれば其明ながら電気灯でんきとうの如し、鹽原君其下そのしたに在りて
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
わが背子があさけのすがたずて今日けふあひだらすかも 〔巻十二・二八四一〕 柿本人麿歌集
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
まアまアなにしろみなしに雪がつては為方しかたがない、此家檐下のきした拝借はいしやくしようか……エーう日がれたからな、一倍いちばい北風きたかぜが身にむやうだ、ばうは寒くはないか。
しかしつぎかた、おれはかへりゆく労働者らうどうしやのすべてのこぶしのうちにぎめられたビラのはし電柱でんちうまへに、倉庫さうこよこに、かぜにはためく伝単でんたんた、同志どうしやすんぜよ
そのうちに日がれてしまいました。新吉はきたくなりました。新吉は、公園の高台から、美しいまちを見下ろしながら、いつまでもいつまでもそこに立っていました。
曲馬団の「トッテンカン」 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
やゝながめて居る内に、緑の武蔵野がすうとかげった。時計をもたぬ二人は最早もうるゝのかと思うた。蒸暑かった日は何時いつしか忘られ、水気を含んだ風が冷々と顔を撫でて来た。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
いやしくも『叔女』であり、おまけに公爵夫人ともあろう人に、返事をしないわけにはゆかず、ではどう返事をするかという段になると——母は途方とほうれざるを得なかった。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
やまなか古池ふるいけがありました。そこにかへるの一ぞく何不自由なにふじいうなくらして、んでをりました。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
くてのちなほ二人ふたりはなしは一時間じかんつゞいたが、れより院長ゐんちやうふか感動かんどうして、毎日まいにち毎晩まいばんのやうに六號室がうしつくのであつた。二人ふたり話込はなしこんでゐるうちれてしまこと往々まゝくらゐ
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ある地方ちはう郡立病院ぐんりつびやうゐんに、長年ながねん看護婦長かんごふちやうをつとめてるもとめは、今日けふにち時間じかんからはなたれると、きふこゝろからだたるんでしまつたやうな氣持きもちで、れて廊下らうかしづかにあるいてゐた。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
そして傾いたボートの船縁ふなべりからすれすれに、蒼冥そうめいれた宵色の湖面が覗かれた。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
いづれも渋々しぶ/\食堂しよくだうりて、れいつてうまくもなんともない晩餐ばんさん卓子テーブルく。食事しよくじがすんでまた甲板かんぱんると、すでにとツぷりとれて、やツとのことでふね桟橋さんばしよこづけになつたらしい。
検疫と荷物検査 (新字旧仮名) / 杉村楚人冠(著)
なつさかりながれかけ、いつもならば洗湯せんたうき、それから夕飯ゆふめしをすますとともに、そろ/\かせぎに出掛でかける時刻じこくになるのであるが、道子みちこがけにいたまゝの夜具やぐうへよこたはると
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
往来おうらいにはつめたい風が吹いているし、今はもうれの売出うりだしの時節じせつです。
清造と沼 (新字新仮名) / 宮島資夫(著)