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売出
それは、
目下売出しの青年探偵、
帆村荘六にとって、
諦めようとしても、どうにも諦められない彼一生の
大醜態だった。
たった
一人、
江戸で
生れて
江戸で
育った
吉次が、
他の
女形を
尻目にかけて、めきめきと
売出した
調子もよく、やがて二
代目菊之丞を
継いでからは
上上吉の
評判記は
米は
俵より
涌き
銭は
蟇口より
出る
結構な
世の
中に
何が
不足で
行倒れの
茶番狂言する事かとノンキに
太平楽云ふて、
自作の
小説が
何十遍摺とかの
色表紙を
付けて
売出され