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奇
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く
ふりがな文庫
“
奇
(
く
)” の例文
然るに恋愛なる一物のみは能く彼の厭世家の
呻吟
(
しんぎん
)
する胸奥に忍び入る秘訣を有し、
奇
(
く
)
しくも彼をして多少の希望を起さしむる者なり。
厭世詩家と女性
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
男ならば何人も
奇
(
く
)
しき感動の心にしむを感ぜずには読めないような、女ならば何人も
嘆息
(
ためいき
)
なしには読めないような一節——であった。
しめしあわせ
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
乾雲坤竜ふたたび糸を引いてか、乾を帯した栄三郎と、坤を持した丹下左膳、それは再び
奇
(
く
)
しき出会いであったと言わなければならぬ。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
目が空ろだったし、顔色が蝋の様に透通っていたので、それは大理石に刻んだ、微笑せるそこひ(盲目の
奇
(
く
)
しき魅力)の聖母像であった。
虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
この樹の
奇
(
く
)
しき根によりて誓ひて曰はん、我はいまだかく譽をうるにふさはしかりしわが主の信に背けることなしと 七三—七五
神曲:01 地獄
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
▼ もっと見る
ロオザは弟の手術を讚め、マリアも亦その恩惠を
稱
(
たゝ
)
へたり。マリアの云ふやう。目しひなりし時の心の
取像
(
しゆざう
)
ばかり
奇
(
く
)
しきは
莫
(
な
)
し。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
現代生活を描いた小品的な構成のうちに、この作者の人間愛と新鮮な感覚とが人を魅了する。美しくも
奇
(
く
)
しき音楽劇である。
名曲決定盤
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
、
野村長一
(著)
露子
(
つゆこ
)
の
目
(
め
)
には、それらの
楽器
(
がっき
)
は
黙
(
だま
)
っているのですが、ひとつひとつ、いい、
奇
(
く
)
しい
妙
(
たえ
)
な、
音色
(
ねいろ
)
をたてて、
震
(
ふる
)
えているように
見
(
み
)
えたのであります。
赤い船
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
わけても中山さまは若手のお目きき、ひと目ににせものとお見破りなさりましたが、人の世のまわり合わせはまことに
奇
(
く
)
しきものでござります。
右門捕物帖:31 毒を抱く女
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
今尚ほ
昨
(
きのふ
)
の如く覺ゆるに、
脇
(
わき
)
を勤めし重景さへ同じ
落人
(
おちうど
)
となりて、都ならぬ高野の夜嵐に、昔の哀れを物語らんとは、怪しきまで
奇
(
く
)
しき縁なれ。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
「ほう……叡山の東谷へ移られるか。
奇
(
く
)
しき縁じゃ。兄は、叡山の大衆より、法魔仏敵のそしりをうけて追われてゆくに」
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と襟を圧えて
俯向
(
うつむ
)
いて、撥袋を取って
背後
(
うしろ
)
に投げたが、
留南奇
(
とめぎ
)
の薫が
颯
(
さっ
)
として、夕暮の
奇
(
く
)
しき花、散らすに惜しき風情あり。辰吉は湯呑を片手に
浮舟
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
喜作の最後に就いては、当時猟友として行を共にして
奇
(
く
)
しくも生命を助かった上高地の庄吉が詳しく物語ってくれる。
案内人風景
(新字新仮名)
/
百瀬慎太郎
、
黒部溯郎
(著)
文学に精進する女性の
奇
(
く
)
しき運命の中にまきこまれ、かの女とゝもに、まゝならぬ人生のけはしい道をたどるより外はなくなるでせうとおもひます。
一葉の日記
(新字旧仮名)
/
久保田万太郎
(著)
彼は、
奇
(
く
)
しきめぐりあいをとげた
愛息
(
あいそく
)
隆夫のうつろな霊魂をみちびきながら、ようやくこれまで登ってきたのである。
霊魂第十号の秘密
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
奇
(
く
)
しき
因縁
(
いんねん
)
に
纏
(
まと
)
われた二人の師弟は
夕靄
(
ゆうもや
)
の底に大ビルディングが数知れず
屹立
(
きつりつ
)
する東洋一の工業都市を見下しながら、永久にここに
眠
(
ねむ
)
っているのである。
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
そしてこの
奇
(
く
)
しき家の内部を知るものはただ永久に、
蜘蛛
(
くも
)
と
鼠
(
ねずみ
)
とだけかも知れないわけである事を
惜
(
おし
)
むのである。
めでたき風景
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
それにしても、たった一つの最初の
想出
(
おもいで
)
があった。あとにもさきにもない、一度きりの、
奇
(
く
)
しき縁ではあった。
蕎麦の花の頃
(新字新仮名)
/
李孝石
(著)
してみれば、あの狂女と、この少年の間に、何か
奇
(
く
)
しき
因縁
(
いんねん
)
があるに違いない。そこで白雲も妙な心持になり
大菩薩峠:24 流転の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
いよいよ自殺を決心した以上、今更、未練がましい言葉をつらねるのも気恥かしいが、思えば、君と僕とは何という
奇
(
く
)
しき運命のもとに置かれたのであろう。
ある自殺者の手記
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
この花園の
奇
(
く
)
しき美の
秘訣
(
ひけつ
)
を問わば、かの花作りにして花なるひとり、一陣の秋風を呼びて応えん。「私たちは、いつでも死にます。」一語。二語ならば汚し。
もの思う葦:――当りまえのことを当りまえに語る。
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
恁
(
か
)
くまでも
昨日
(
きのふ
)
の
奇
(
く
)
しき
懊惱
(
なやみ
)
が
自分
(
じぶん
)
から
離
(
はな
)
れぬとして
見
(
み
)
れば、
何
(
なに
)
か
譯
(
わけ
)
があるのである、さなくて
此
(
こ
)
の
忌
(
いま
)
はしい
考
(
かんがへ
)
が
這麼
(
こんな
)
に
執念
(
しふね
)
く
自分
(
じぶん
)
に
着纒
(
つきまと
)
ふてゐる
譯
(
わけ
)
は
無
(
な
)
いと。
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
我を
司
(
つかさ
)
どるものの我にはあらで、先に見し人の姿なるを
奇
(
く
)
しく、怪しく、悲しく念じ煩うなり。いつの間に我はランスロットと変りて常の心はいずこへか
喪
(
うしな
)
える。
薤露行
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
この芳子を妻にするような運命は永久その身に来ぬであろうか。この父親を自分の
舅
(
しゅうと
)
と呼ぶような時は来ぬだろうか。人生は長い、運命は
奇
(
く
)
しき力を持っている。
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
むせ返るような前夜の幻に酔っていた。けわしくにらんでいるその奥で見る者の心をぎゅっと捕え、底知れぬ
闇
(
やみ
)
の世へ引っさらって行くような
奇
(
く
)
しくも甘い目つき。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
鉄道の土堤をあるいているとき、わたしは自分の影のまわりの光りの
隈
(
くま
)
を
奇
(
く
)
しく思い、自分が選ばれた者の一人であるかのように想像したくなることがよくあった。
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
あなたは私と毛沼博士との
奇
(
く
)
しき因縁については、あら方御存じだと思います。二人はごく近い所に生れ、大学を卒業し教授となるまで、全く同じ道を通って来ました。
血液型殺人事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
これが頽廃した文明から逃れんとした一ヨーロッパ人が、東洋の孤島で夢みた
涅槃
(
ねはん
)
だったのである。そしてゴーガンは
奇
(
く
)
しくも
仏陀
(
ぶつだ
)
の
教
(
おしえ
)
をひそかに
憧
(
あこが
)
れているのである。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
既報“人生紙芝居”の相手役秋山八郎君の居所が
奇
(
く
)
しくも本紙記事が機縁となって判明した。
アド・バルーン
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
ゆがんだ
燭台
(
しょくだい
)
に立っているろうそくの燃えさしは、
奇
(
く
)
しくもこの貧しい部屋の中に落ち合って、永遠な書物をともに読んだ殺人者と
淫売婦
(
いんばいふ
)
を、ぼんやりと照らし出しながら
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
そは只
奇
(
く
)
しき夢を見るべく運命づけられた人間のあこがれの幻影で、愛は
美酒
(
うまざけ
)
の一場の酔に過ぎないことは、千古の鉄案として動かせないのであるが、我れ感じ、我れ生きて
愛人と厭人
(新字旧仮名)
/
宮原晃一郎
(著)
長順 (舞踊の間に黒き法衣を脱ぎ華美なる姿となる)あれ、南蛮寺の中に
奇
(
く
)
しき響きがしておぢやるわ。(奥よりゆきて)あの響ぢや、あの響ぢや。わがこがるるはあの響ぢや。
南蛮寺門前
(新字旧仮名)
/
木下杢太郎
(著)
我らのユーザ・サヨ・サマーレをかえって中尉並びにロゼリイス姫に托することとなりました
奇
(
く
)
しき運命の変転に、無量の感慨を
懐
(
いだ
)
きつつ、この再度の書翰を結ぶことといたします。
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
山国の深さを思わせるような朝雲が、見あげる山の松の
梢
(
こずえ
)
ごしに
奇
(
く
)
しく眺められた。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
女の弱き心につけ入りたもうはあまりに
酷
(
むご
)
きお心とただ恨めしく存じ参らせ
候
(
そろ
)
妾
(
わらわ
)
の運命はこの船に結ばれたる
奇
(
く
)
しきえにしや
候
(
そうら
)
いけん心がらとは申せ今は過去のすべて未来のすべてを
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
まして、こゝ、灯は
暗
(
くら
)
し、某々劇場の花ランプさへ、幻に、
奇
(
く
)
しくも美しい。
偶感一束
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
勿論それはあとで書くことと前後して、わたしも妹
御
(
ご
)
だと知ったあとゆえ驚きはしなかったが、わたしはこれから、この
奇
(
く
)
しき姉妹と卓をかこんで、打解けた物語をしたあらましを書いて見よう。
一世お鯉
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
山
(
やま
)
の
半腹
(
はんぷく
)
以上
(
いじやう
)
は
赤色
(
せきしよく
)
の
燒石
(
やけいし
)
の
物凄
(
ものすご
)
い
樣
(
やう
)
に
削立
(
せうりつ
)
して
居
(
を
)
るが、
麓
(
ふもと
)
は
限
(
かぎ
)
りもなき
大深林
(
だいしんりん
)
で、
深林
(
しんりん
)
の
中央
(
ちうわう
)
を
横斷
(
わうだん
)
して、
大河
(
たいか
)
滔々
(
とう/\
)
と
流
(
なが
)
れて
居
(
を
)
る
樣子
(
やうす
)
、
其邊
(
そのへん
)
を
進行
(
しんかう
)
したら
隨分
(
ずいぶん
)
奇
(
く
)
しき
出來事
(
できごと
)
もあらうと
思
(
おも
)
つたので
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
惜
(
を
)
しからじ、願ふは
極秘
(
ごくひ
)
、かの
奇
(
く
)
しき
紅
(
くれなゐ
)
の夢
邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
奇
(
く
)
しくもあるかな、
蝋石
(
らふせき
)
の壁に這ひゆく
導線
(
だうせん
)
は
有明集
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
「自然」の
奇
(
く
)
しき作用をお感じになるのです。
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
奇
(
く
)
しき
畏
(
おそれ
)
の滿ちわたる海と空との原の上。
海潮音
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
到底彼の企て及ばざりし
奇
(
く
)
しき一曲。
鳥料理
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
奇
(
く
)
しき光の
魚
(
うを
)
を抱かんとす。
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
名のれ名のれ
奇
(
く
)
しき
處女
(
をとめ
)
よ
藤村詩抄:島崎藤村自選
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
奇
(
く
)
し
御靈
(
みたま
)
葉
(
は
)
にもゆらぎて
白羊宮
(旧字旧仮名)
/
薄田泣菫
、
薄田淳介
(著)
奇
(
く
)
しき
戰
(
いくさ
)
や
冬
(
ふゆ
)
は
負
(
ま
)
け
孔雀船
(旧字旧仮名)
/
伊良子清白
(著)
目の能くこれに教ふるをまたず、たゞ彼よりいづる
奇
(
く
)
しき力によりて、昔の愛がその大いなる
作用
(
はたらき
)
を起すを覺えき 三七—三九
神曲:02 浄火
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
フルヰアの
老媼
(
おうな
)
はテレザの髮とその藏め居たりしジユウゼツペの髮とを
銅銚
(
どうてう
)
に投じて、
奇
(
く
)
しき藥艸と共に煮ること數日なりき。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
ああ思ひきや、
西土
(
せいど
)
はるかに
征
(
ゆ
)
くべかりし身の、こゝに
病躯
(
びやうく
)
を故山にとゞめて山河の契りをはたさむとは。
奇
(
く
)
しくもあざなはれたるわが
運命
(
うんめい
)
かな。
清見寺の鐘声
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
“奇”の意味
《名詞》
変わっていること。特異。
(出典:Wiktionary)
“奇”の解説
奇(き)は、漢姓の一つ。
(出典:Wikipedia)
奇
常用漢字
中学
部首:⼤
8画
“奇”を含む語句
奇怪
奇異
怪奇
好奇
好奇心
奇観
奇術
奇妙
数奇
奇体
奇蹟
奇矯
奇態
奇々怪々
珍奇
奇特
奇禍
留南奇
御奇特
奇縁
...