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燒石
さうして
養蠶の
忙しい四
月の
末か五
月の
初迄に、それを
悉皆金に
換へて、
又富士の
北影の
燒石許ころがつてゐる
小村へ
歸つて
行くのださうである。
案じぬとは人非人とも
無義道とも
譬へがたき者なりと心の内には思へ共
色にも出さず只一
心に
稼ぎけれど
燒石へ水の
譬の如くなれば
左やせん
右やと
獨り心を
で、
立騰り、
煽り
亂れる
蚊遣の
勢を、ものの
數ともしない
工合は、
自若として
火山の
燒石を
獨り
歩行く、
脚の
赤い
蟻のやう、と
譬喩を
思ふも、あゝ、
蒸熱くて
夜が
寢られぬ。