)” の例文
彼はひとの邪魔になる自分をにする男ではなかった。時と場合によると、それと知って、わざわざ邪魔までしかねない人間であった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
丑満うしみつ過ぐる夜の夢。見よや因果のめぐり来る。火車にごうを積むかずるしめて眼の前の。地獄もまことなり。げに恐ろしの姿や」
涙香・ポー・それから (新字新仮名) / 夢野久作(著)
十字軍とは余り大袈裟おほげさにあらずや、凡神的とは多分、禅道を唱へらるゝ天知翁をるしめるつもりにて、唯心的とは僕をいぢめる積ならむ。
人生の意義 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
が、まけきらひでもあつたし、またさうなると、今までの力の報いられなかつた悔しさから、成功せいこうへの要求ようきうぎやくつよくなつた。
むまじき事なりおとろふまじき事なりおとろへたる小生等せうせいらが骨は、人知ひとしらぬもつて、人知ひとしらぬたのしみと致候迄いたしそろまで次第しだいまるく曲りくものにそろ
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
と、兄弟の杯を交わし、そして、三人一体、協力して国家に報じ、下万民の塗炭とたんを救うをもって、大丈夫の生涯とせんと申し合った。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
入れ百八十兩の金子を殘らずもどしければ九助はお里を是迄の縁と斷念あきらめ殊に伯父の娘なればきびしき事も成難しと千しんしてためたる金の中を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
この感覚かんかくうちにおいて人生じんせい全体ぜんたいふくまっているのです。これをにすること、にくむことは出来できます。が、これを軽蔑けいべつすることは出来できんです。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
他人ひとばいしてせはしい勘次かんじがだん/\にりつゝあるたわら内容ないようにしてひどをしつゝ戸口とぐち出入でいりするのを卯平うへいるのがいやかつつらかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
わが越後のごとく年毎としごと幾丈いくぢやうの雪をなんたのしき事かあらん。雪のためちからつくざいつひやし千しんする事、しもところておもひはかるべし。
近づきにくくて近づき易いと云う事が肇の大変徳な性質になって会う人毎に自分を高く保つ事が何のもなく出来る事だった。
千世子(二) (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
一つとおもへばうらみもる、なんれがつとめなり、ことにはれほどがらの相違さうゐもあることなればひとばいもある道理だうり
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そうして、何かの仕事に絶えず働いて、いっさいのを忘れたい。それがすべて悲しみを受けた者のゆくべき道である。
「だが、まあ、そのうちにはなんとか判るだろう。神隠しに逢ったにしても、大抵は十日か半月で帰って来るものだ。あんまりにしねえがいい」
半七捕物帳:69 白蝶怪 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
お前も知ってるだろう、早船の斎藤さいとうよ、あの人にはお前も一度ぐらい逢った事があろう、お互いに何もかも知れきってる間だから、まことなしだ。
春の潮 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
べつにもならずすべてを義母おつかさんにおまかせしてちやばかりんで内心ないしん一のくいいだきながら老人夫婦としよりふうふをそれとなく觀察くわんさつしてた。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
さて、ルミ、あなたにご返事のできることはこれだけですよ。やくそくをしなすったりっぱなおくり物のできないことをにやむことはありません。
「おれは行くよ。おぬしらは六十、七十まで生きのびて、馬鹿なの世界で、いいだけっつっつするがよかろう。冥土の明窓あかりまどから見ていてやるぞ」
ボニン島物語 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
るい 若様は、賑やかなことがお好きさうに見えますが、それでは、なほさら、御病気がにおなり遊ばしませう。
(新字旧仮名) / 岸田国士(著)
近所きんじょ人々ひとびとは、とりのためにはたけや、にわらされるのをおもいましたけれど、いえや、地所じしょ金持かねもちの所有しょゆうであるために、なにもいわずにしのんでいました。
金持ちと鶏 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「本当に君に済まない。君のような善良な友達を斯んなにもるしめて、僕はうしていいか分らない……」
(新字新仮名) / 坂口安吾(著)
なにが恥ずかしいものか、これは人間ののたねではないか、とふじこが云った。へええ、ときよきが云った。なにが苦のたねだ、嬉しくってわくわくするくせに。
ベンヺ 馬鹿ばかな! そこがそれ、おさへられ、げんぜられるためしぢゃ。ぎゃく囘轉まはるとうたのがなほり、ぬるほど哀愁かなしみべつ哀愁かなしみがあるとわすれらるゝ。
その癖「何何してゐる。」と切れる時にはにならない。「て」の字の次は「く」の字である。これも丁度ちやうど折れ釘のやうに、上の文章の重量をちやんと受けとめる力に乏しい。
澄江堂雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「お有難や、お有難や。あゝ、を忘れてが抜けた。もし、太夫様たゆうさま。」と敷居をまたいで、蹌踉状よろけざま振向ふりむいて、「あの、其のおかんざしに……」——「え。」と紫玉が鸚鵡おうむる時
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
一心に迷うて、あくまで小さい自我に固執するならば、現実の世界は、畢竟ひっきょう牢獄ろうごくです。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
すくときはひびあかぎれに指のさきちぎれるようにてたんとたんとろういたし候
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
明日は上有知かみうち泊り、それから長良川ながらがわ河渡こうどまで舟で下って赤坂泊りはにならぬ。
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
甘扁桃油かんへとうゆ扁桃油、接骨木花水せっこつぼくかすい沈降硫黄ちんこういおう、そうして闇夜に絞り取った、売春婦いろをうるおんなの肝臓の血、それを合わせた冷罨剤れいあんざい、これを塗ることに致しましょう。……おうおう白くなりました。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
勉強べんきょうをすることは、このあいだ、にいさんからいわれて、なるほどとおもい、自分じぶんでも、やらなければならないな、とかんがえるようになっていたので、それほどにはならなかったのです。
しかしそのままにしておいても、どうせ死ななくてはならぬ弟であったらしい。それが早く死にたいと言ったのは、苦しさに耐えなかったからである。喜助はそのを見ているに忍びなかった。
高瀬舟 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
無論むろん此樣こん妄想もうざうは、平生いつもならばもなく打消うちけされるのだが、今日けふ先刻せんこくから亞尼アンニーが、だのこくだのとつた言葉ことばや、濱島はまじま日頃ひごろ氣遣きづかはしなりし樣子やうすまでが、一時いちじこゝろうかんで
「時計ばかりにしてるよ。」というような声が聞えました。
耕耘部の時計 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
林太郎のおじいさんは、それを年中にしていて
あたまでっかち (新字新仮名) / 下村千秋(著)
(九荷といふ荷物はなかつた。に通じるから嫌はれたらしい。十一荷では少しはんぱの数だから十三と極めたのであらう。西洋風に勘定すれば十一の方が十三よりは数がよろしいけれど、昔はそんな事は知らなかつた)
よめいり荷物 (新字旧仮名) / 片山広子(著)
あんのとおり、ドアはもなくひらいた。
變化へんげしてらくとならむとやすらむ。
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
でもまあにもならぬやら
どんたく:絵入り小唄集 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
ひとりむ権兵衛が
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
拵えものをにせらるるよりも、活きているとしか思えぬ人間や、自然としか思えぬ脚色を拵える方を苦心したら、どうだろう。
田山花袋君に答う (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それに蓋をつける。もつと心したのは、かん板を入れる裝置そうちところだつたが、とにかく週間しうかんほどの素晴すはらしい心で、それが、どうにか出來上つた。
殺すはもなし拙僧の儀は御氣遣おきづかひあるべからず呉々くれ/″\小姓共は仕損じ給ふなと約束やくそくし夫より酒宴をもよほし四方山の雜談ざふだんに時を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
その者のことばで、伊那丸のとおる道がわかったから、関所せきしょに兵をせておいて、もなくしばりあげたのじゃ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まちかどって、一人ひとりおとこがうろうろしていました。子供こどもははだしで、あしゆびあかくしていましたけれど、それをにもかんじないようでありました。
角笛吹く子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
とお政は早や声をくもらして、四に気もみする。おっとにすこし客の相手あいてをしていてくれとたのめば源四郎は「ウンウン」と返事へんじはしても、立ちそうにもせぬ。
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
家主いへぬし女主人をんなあるじところ見知みしらぬひとさへすればれもになる。もん呼鈴よびりんたび惴々びく/\しては顫上ふるへあがる。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
しなはゝとの關係くわんけい餘計よけい告口つげぐちから女房にようばうみゝはひつた。ころあつさにいて所爲せゐでもあつたが女房にようばうはそれをにしはじめてからがつかりとやつれたやうにえた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
なにおどろかせるがるしさに結局つまりいはねばならぬこと今日けふまでもだまつてりしなり、三ねんか五ねんかへるつもりなれどもそのほどは如何どうわからねばまづ當分たうぶんわかれの覺悟かくご
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
またのぼりゆき/\て桟齴かけはしのやうなる道にあたり、岩にとりつき竹の根を力草ちからくさとし、一歩に一声をはつしつゝ気を張りあせをながし、千しんしのぼりつくして馬のといふ所にいたる。
殊にそういう商売屋の娘であるから、当人も平生からひどくそれをにしていたらしい。
鴛鴦鏡 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)