)” の例文
姉さんは誕生のお祝いに紙に包んだ小さなものを雄二にれました。あけてみると、チリンチリンといいひびきのする、小さな鈴でした。
誕生日 (新字新仮名) / 原民喜(著)
向うの帳場格子の中には人が三人ほどいたが、算盤そろばんをはじいたり帳面を繰ったりするだけで、誰もこっちの相手にはなってれない。
初蕾 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
冬の頃から頂戴いただいていたものを、花見の客が無闇に立て込む今日此頃では忘れたかのようにお寿賀さんは夫れをれようともしない。
温室の恋 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
老人としより子供こどもだから馬鹿ばかにしておもふやうにはうごいてれぬと祖母おばあさんがつてたつけ、れがすこ大人おとなると質屋しちやさして
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「ルンプが急に独逸ドイツへ帰つたよ。君によろしくと云つて、其れから写真代の取替とりかへとか割前わりまへとかを君に渡してれつて預けて行つたよ。」
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
この遊歩いうほあひだ武村兵曹たけむらへいそうめいずるまゝに、始終しじゆう吾等われらまへになり、うしろになつて、あらかじ猛獸まうじう毒蛇どくじや危害きがいふせいでれた、一頭いつとう猛犬まうけんがあつた。
そこは比較的に稿料を余計にれるからだ。しかし、作品には一定の範囲があるから、その範囲を越えれば没書になる恐れがある。
幸福な家庭 (新字新仮名) / 魯迅(著)
亭主も大喜びでしたがお神さんは亭主に向つて此金剛石このダイヤモンドの指環をめても恥かしく無い位の立派な着物をこしらへてれと頼みました。
金剛石 (新字旧仮名) / 夢野久作(著)
そのうちに私は肺をわるくした。意識不明の日がつづいた。医者は責任を持てないと、言っていたと、あとで女房が教えてれた。
川端康成へ (新字新仮名) / 太宰治(著)
すると此春になって長塚君が突然尋ねて来て、ようやく本屋が「土」を引受ける事になったから、序を書いてれまいかという依頼である。
「ようし。おれも大三だ。そのすきとほったばらの実を、おれがこさへて見せよう。おい、みんなばらの実を十貫目ばかり取ってれ。」
よく利く薬とえらい薬 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
T君は遍路に五十銭れたが遠慮をしながら丁寧にそれをしまつた。それから遍路はM君の呉れた紙巻煙草を一本その場で吸つた。
遍路 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
静岡の仕入れ元から到着した錫張すずばりの小箱の積んであるのをあれやこれやと探し廻つてようやく見付け出し、それからはかつて売つてれる。
蔦の門 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
「どうして警察のくせに、この大事件を信じて手配をしてれないんです」わたしはもうこらえきれなくなって、大声で叫びました。
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)
粟沢村の百姓が清水へ逃げて行ったのを、意見して帰してれるようにとの頼みの状で、羽筑後守昌幸は沼田の城主真田安房守である。
利根川水源地の山々 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
軽蔑しないでたまえ。君は浅間あさましいと思うだろうね。僕は人種が違っているのだ。すべての意味で異人種なのだ。だが、その意味を
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
穏当おとなしくなって姪子めいっこを売るのではない養女だかめかけだか知らぬが百両で縁をきっれろという人にばかりの事、それをおたつ間夫まぶでもあるか
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
それにほかのおうちかきへはのぼらうとおもつてものぼれませんでしたが、自分じぶんのおうちかきばかりはわるかほもせずにのぼらせてれました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
尤も、荘田夫人は普通の奥さん方とは違いますから、突然尋ねて行かれても、屹度きっとってれるでしょう。御宅は、麹町こうじまちの五番町です。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
『ぢや、エウゲニイ、フエオドロヰチでも此處こゝんでい、ちよつおれれツてつてるとへ……ちよつとでいからツて!』
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
映画に出て来る人間が物を云つてれたら、こんなに忘れる事はあるまいとも考へて見る。自分がお饒舌しやべりだからでもあるまいが。
拊掌談 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
そいでおらの方でも、奴にゃあ一桝ひとますがとこ余計に麦をれてやらあな、だって見上げたやつだもの。議員の奴もどうして、感心な馬だ……。
貴様は福澤の主人になったと知らせてれるくらいの事だ。てその跡をついだ以上は、実は兄でも親だから、五十日の忌服きふくを勤めねばならぬ。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
「それから彼奴あいつは妾にも仇だ。先刻さっき妾を突き倒して、半殺しの目に逢わした奴だ。お前達は復讐しかえしをしておれ。頼んだよ。」
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
亥太郎は少しも恐れないで「早くっておんねえ」などと云い、脊中に猪の刺青がってあり、悪々にく/\しいからぴしーり/\とちます。
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
死因も全く病気という事だし、之以上突つく必要もないと思うが、なお君、念の為、昨日と今日の信造と卓一の足取りを洗って見てれ給え。
青服の男 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
しかしこうなって見ると自分もうっかり階下したへは下りられぬ。お千代の顔を見るがいなやどうしてれよう、何と云ってやろう。
夏すがた (新字新仮名) / 永井荷風(著)
中々なかなか親切に世話をやいてれる。そのうちに船はブリエンツの埠頭に着いた。ここは湖水の東端で、小さな船つきの村である。
スウィス日記 (新字新仮名) / 辻村伊助(著)
近所きんじよ女房にようばうれたのをさいはひに自分じぶんあとからはしつてつた。鬼怒川きぬがはわたしふね先刻さつき使つかひと行違ゆきちがひつた。ふねからことば交換かうくわんされた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
林檎りんごつてるッて、眞箇ほんとか!』とうさぎ腹立はらだゝしげにひました。『オイ、たすけてれ!』(硝子ガラスれるおとがする)
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
それから親身も及ばぬ介抱をしてれたまでは好かったが、其儘そのまま一歩も外に踏出させぬには、此上も無い迷惑なので有った。
死剣と生縄 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
『ほんとに、さうでしたねえ』とだれ合槌あひづちうつれた、とおもふと大違おほちがひ眞中まんなか義母おつかさんいましもしたむい蒲鉾かまぼこいでらるゝところであつた。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
爺さんがするだけの仕事をしてしまつて、役に立たない頃には、息子がちやんと孫をこしらへてれる。うまく出来たものだ
南京六月祭 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
アヽおまへこゝに居たネ、おつかさんが町へつれてつてれろといつたが、行くなら早く仕度をするがい、すぐと出るから
黄金機会 (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
隠居が自分の食べる分をしまっておいて、こうしてこっそりとれたがるのは、子供の時からの慣わしだったと、良人は、やはり懐かしかった。
万年青 (新字新仮名) / 矢田津世子(著)
漠然と響いてれればいいとこいねがつた。けれど声が変に熱い波動を帯びてふるへてゐた。明子は意識しながら、それをどうすることも出来なかつた。
青いポアン (新字旧仮名) / 神西清(著)
主婦は老人や子供の世話に忙殺ぼうさいされて居た。荷積の指図もしなければならなかつた。送つて来てれた人々の相手にもならなければならなかつた。
(新字旧仮名) / 田山花袋(著)
人に気前よく物をれてやる時にも別に相手の人に愛情はないので、それはそれだけで切り離されており、二度目をあてにしてももう連絡はないので
石の思い (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
そしたらね、よし子さんが、帯留おびどめね、せんから言ってたでしょう、あれを買いに行くから付き合ってれって言うの。
みごとな女 (新字新仮名) / 森本薫(著)
彼れはこれから手風琴をいて聞かせるから、もう少しこの座に居てれと、さも私を慰撫ゐぶするやうにささやいて呉れた。
アリア人の孤独 (新字旧仮名) / 松永延造(著)
で、僕は早速さっそく矢島君にこっそりと面会して、あのジャックナイフを買い取ってれんかとワタリを付けて見たんさ。
カンカン虫殺人事件 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
この言葉と共にブロクルハースト氏は、私の手に表紙をぢ付けた薄いパンフレットをれた。そして呼鈴ベルを鳴らして、馬車を呼んで、歸つて行つた。
「わしらがやうな勤めの身で、可愛かわいと思ふ人もなし、思うてれるお客もまた、広い世界にないものぢやわいな」
「いき」の構造 (新字新仮名) / 九鬼周造(著)
たとひ洗足せんそくを求めたところで、おうなは水をんでれたかうだか、根の生えた居ずまひで、例の仕事に余念のなさ、小笹おざさを風が渡るかと……音につれて積る白糸しらいと
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
独身漢ひとりもの/\と言つて貰ふめエよ、是でもチヤンと片時離れず着いてやがつて、お前さん苦労でも、どうぞ東京こつちで車をいてておれ、其れ程人夫になりたくば
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
但しそれには交換条件があって、おまえのもっている墨とかナイフとかをれたら、というのであった。
鷹を貰い損なった話 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
これを除きてまた他に求むべからず、今日品川沖に赤目魚めなた釣に往きし忘筌子ぼうぜんし、利根川(江戸川)に鯉釣に出でし江東子こうとうしに、獲物を見せて愕かしるるも一興なり。
大利根の大物釣 (新字新仮名) / 石井研堂(著)
あの恋喧嘩ヘルリス以来自分があの女に会いに行けない苦しさを、果してリメイは解ってれているだろうかと。
南島譚:02 夫婦 (新字新仮名) / 中島敦(著)
内の白とかの黒とがトチ狂うて、与右衛門の妹婿武太郎がはたけの大豆を散々踏み荒したと云うのである。如何してれるかと云う。仕方が無いから損害を二円払うた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
子供こども兩足りようあしとらへてさかさにつるし、かほそとけて、ひざもてせなかくとふのですさうすれば、かつての實驗じつけんよつるから、これツてれと熱心ねつしんすゝめました