矢田津世子
1907.06.19 〜 1944.03.14
著者としての作品一覧
万年青(新字新仮名)
読書目安時間:約13分
福子は笑い上戸で通っていた。睫毛のふかいパッチリと見開いた丸っこい眼が、みるみる三日月になってクツクツと笑いだす。そばにいるものまで、つい、つりこまれて笑い出す始末だった。 「まあ …
読書目安時間:約13分
福子は笑い上戸で通っていた。睫毛のふかいパッチリと見開いた丸っこい眼が、みるみる三日月になってクツクツと笑いだす。そばにいるものまで、つい、つりこまれて笑い出す始末だった。 「まあ …
女心拾遺(新字新仮名)
読書目安時間:約36分
常は無駄口の尠い唐沢周得氏が、どうしたはずみか、この数日来妙に浮きたって、食事の間も駄洒落をとばしたりしては家人を笑わせたりする。もともと脂肪肥りの血色のよい膚が、こんな時には、磨 …
読書目安時間:約36分
常は無駄口の尠い唐沢周得氏が、どうしたはずみか、この数日来妙に浮きたって、食事の間も駄洒落をとばしたりしては家人を笑わせたりする。もともと脂肪肥りの血色のよい膚が、こんな時には、磨 …
神楽坂(新字新仮名)
読書目安時間:約40分
夕飯をすませておいて、馬淵の爺さんは家を出た。いつもの用ありげなせかせかした足どりが通寺町の露路をぬけ出て神楽坂通りへかかる頃には大部のろくなっている。どうやらここいらへんまでくれ …
読書目安時間:約40分
夕飯をすませておいて、馬淵の爺さんは家を出た。いつもの用ありげなせかせかした足どりが通寺町の露路をぬけ出て神楽坂通りへかかる頃には大部のろくなっている。どうやらここいらへんまでくれ …
痀女抄録(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間6分
先き頃、京阪方面の古刹めぐりから戻られた柳井先生の旅がたりのうちに、大和中宮寺の「天寿国曼荼羅」のおはなしがあった。わたくしは不幸にして未だに中宮寺をおとなう折にはめぐまれぬけれど …
読書目安時間:約1時間6分
先き頃、京阪方面の古刹めぐりから戻られた柳井先生の旅がたりのうちに、大和中宮寺の「天寿国曼荼羅」のおはなしがあった。わたくしは不幸にして未だに中宮寺をおとなう折にはめぐまれぬけれど …
鴻ノ巣女房(新字新仮名)
読書目安時間:約24分
隣りの紺屋の婆様から、ぎんはこんな昔語りをきいた。 或る山の中に男が一人小屋がけをして住んでいた。働いても働いても食うに事かく有様で、おのれの行末を考えては心細がっていた。或る晩大 …
読書目安時間:約24分
隣りの紺屋の婆様から、ぎんはこんな昔語りをきいた。 或る山の中に男が一人小屋がけをして住んでいた。働いても働いても食うに事かく有様で、おのれの行末を考えては心細がっていた。或る晩大 …
旅役者の妻より(新字新仮名)
読書目安時間:約16分
暑い暑い言うたのも束の間にてもはや秋風たちはじめ、この頃では朝夕膚さむいようになりましたが、まことに久しくおたよりも致さず、あね様はじめ小さい菊ちゃんにもお変りもあらせられませんか …
読書目安時間:約16分
暑い暑い言うたのも束の間にてもはや秋風たちはじめ、この頃では朝夕膚さむいようになりましたが、まことに久しくおたよりも致さず、あね様はじめ小さい菊ちゃんにもお変りもあらせられませんか …
父(新字新仮名)
読書目安時間:約39分
居間の書棚へ置き忘れてきたという父の眼鏡拭きを取りに紀久子が廊下を小走り出すと電話のベルがけたたましく鳴り、受話機を手にすると麻布の姉の声で、昼前にこちらへ来るというのであった。お …
読書目安時間:約39分
居間の書棚へ置き忘れてきたという父の眼鏡拭きを取りに紀久子が廊下を小走り出すと電話のベルがけたたましく鳴り、受話機を手にすると麻布の姉の声で、昼前にこちらへ来るというのであった。お …
茶粥の記(新字新仮名)
読書目安時間:約30分
忌明けになって姑の心もようよう定まり、清子と二人は良人の遺骨をもって、いよいよ郷里の秋田へ引き上げることになった。秋田といってもずっと八郎潟寄りの五城目という小さな町である。実は善 …
読書目安時間:約30分
忌明けになって姑の心もようよう定まり、清子と二人は良人の遺骨をもって、いよいよ郷里の秋田へ引き上げることになった。秋田といってもずっと八郎潟寄りの五城目という小さな町である。実は善 …
凍雲(新字新仮名)
読書目安時間:約29分
秋田市から北の方へ、ものの一時間も汽車に揺られてゆくと、一日市という小駅がある。ここから軌道がわかれていて、五城目という町にいたる。小さな町である。封建時代の殻の中に、まだ居眠りを …
読書目安時間:約29分
秋田市から北の方へ、ものの一時間も汽車に揺られてゆくと、一日市という小駅がある。ここから軌道がわかれていて、五城目という町にいたる。小さな町である。封建時代の殻の中に、まだ居眠りを …
反逆(新字新仮名)
読書目安時間:約21分
「天にまします我らの父よ。願わくば御名の崇められんことを。御国の来らんことを。御意の天のごとく地にも行われんことを。我らの日用の糧を今日もあたえ給え、我らに負債あるものを我らの免し …
読書目安時間:約21分
「天にまします我らの父よ。願わくば御名の崇められんことを。御国の来らんことを。御意の天のごとく地にも行われんことを。我らの日用の糧を今日もあたえ給え、我らに負債あるものを我らの免し …
罠を跳び越える女(新字新仮名)
読書目安時間:約13分
三階利札室は銃声のない戦場だ。 凄じい誰かの咳、猛烈な紙埃、白粉の鬱陶しい香いと捌口のない炭酸瓦斯の匍匐、 拇指と人差指の多忙な債券調査、海綿の音高い悲鳴、野蛮な響きを撒きちらす鋏 …
読書目安時間:約13分
三階利札室は銃声のない戦場だ。 凄じい誰かの咳、猛烈な紙埃、白粉の鬱陶しい香いと捌口のない炭酸瓦斯の匍匐、 拇指と人差指の多忙な債券調査、海綿の音高い悲鳴、野蛮な響きを撒きちらす鋏 …
“矢田津世子”について
矢田 津世子(やだ つせこ、本名矢田ツセ、1907年(明治40年)6月19日 - 1944年(昭和19年)3月14日)は、日本の小説家、随筆家。秋田県南秋田郡五城目町出身。はじめモダン派であったが純文学に転進し、1936年に小説『神楽坂』が第3回芥川賞候補に選ばれる。文章力と美貌を兼ね備えた女流作家として人気を集めた。坂口安吾の恋人とされる。大和生命第5代社長の矢田不二郎は兄。
(出典:Wikipedia)
(出典:Wikipedia)
“矢田津世子”と年代が近い著者
きょうが命日(8月31日)
シャルル・ピエール・ボードレール(1867年)
今月で生誕X十年
今月で没後X十年
ハンス・クリスチャン・アンデルセン(没後150年)
フリードリッヒ・エンゲルス(没後130年)
細井和喜蔵(没後100年)
島木健作(没後80年)
戸坂潤(没後80年)
パウル・トーマス・マン(没後70年)
河本大作(没後70年)
高見順(没後60年)
安西冬衛(没後60年)
塚原健二郎(没後60年)
信時潔(没後60年)
池田勇人(没後60年)
木下夕爾(没後60年)
今年で生誕X百年
平山千代子(生誕100年)
今年で没後X百年
大町桂月(没後100年)
富ノ沢麟太郎(没後100年)
細井和喜蔵(没後100年)
木下利玄(没後100年)
富永太郎(没後100年)
エリザベス、アンナ・ゴルドン(没後100年)
徳永保之助(没後100年)
後藤謙太郎(没後100年)
エドワード・シルヴェスター・モース(没後100年)