)” の例文
ふとけやきぼんが原氏の目にとまつた。それは田舎の村長などの好きさうな鯛の恰好をしたもので二円三十銭といふ札が付いてゐた。
材は松板をったものでありますが、茶人だったら塵取ちりとりにでも取り上げるでしょう。荒物屋ではまたささらのような茶筅ちゃせんを売ります。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
それからまた胴乱どうらんと云ってきりの木をり抜いて印籠いんろう形にした煙草入れを竹の煙管筒にぶら下げたのを腰に差すことが学生間に流行はやっていて
喫煙四十年 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
帆柱を立てる腕木をり抜いたり、船の底から丈夫な糸で吊したり、沢庵漬たくあんづけの肉をえぐって詰め込んだり、飯櫃めしびつの底を二重にしていたりする。
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
発作の時ずたずたに裂いてしまった鼠色ねずみいろの服のうえから、り込みの大きいごわごわのズックの狭窄衣が、ぴっちりと胴体をめつけている。
其處の一番の高みに白い石造の燈臺が聳え、燈臺より一寸下つたところに、岩をり拔いた樣にして燈臺守の住宅が同じく石造で出來てゐた。
樹木とその葉:03 島三題 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
なるほどジーナの指ざすとおり、二、三町先には絶壁をえぐって、急な幾百階かの岩の階段が、斜めにり抜いてあります。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
のき風鐸ふうたくをつるし、丹塗にぬりの唐格子のはまった丸窓があり、舗石の道が丸くッた石門の中へずッと続いている。源内先生は
背後うしろの岩壁をり抜いてそこに灯皿ほざらが置いてあったが、そこで灯っている獣油の火が蒼然と四辺あたりを照らしているさまは、鬼々陰々たるものである。
それよりは抽斗の両横のわくを三分の一乃至二分の一ほど手の入るだけに浅くりぬいておくことを勧めたい(次図参照)。
老人はいつの間にやら、青玉せいぎょくの菓子皿を出した。大きなかたまりを、かくまで薄く、かくまで規則正しく、りぬいた匠人しょうじん手際てぎわは驚ろくべきものと思う。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
頭に戴けるは「フイノツキイ」(俗曲中にて無遠慮なる公民を代表したる役なり)の假髮かづらにて、目に懸けたるは柚子みかんの皮をりぬきて作りし眼鏡なり。
その巌丈がんじょうな石の壁は豪雨のたびごとに汎濫する溪の水を支えとめるためで、その壁にり抜かれた溪ぎわへの一つの出口がまた牢門そっくりなのであった。
温泉 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
りぬき盆をさしだして茶碗を受ける妻女は、日ごとに新しい境涯に順応し満足しつつあった。女には、おちぶれ果てた、と、別に比べるものも無かった。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
それでも先生は執拗しつこく乗り続けた。股をった女乗りの紅色の自転車にはまたハンドルに幅広のリボンが蝶型に結び付けられていた。赤城颪に吹きなびいた。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
関家の定紋九曜をりぬいた白木のがんで、あなたが死ぬ時一処に牧場ぼくじょうに埋めて牛馬の食う草木を肥やしてくれと遺言した老夫人の白骨は、此中に在るのだ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
しかもこの着物は襟許がってあるので、メリケン粉のまだらについた首筋が、いやらしくあらわれている。
削り直したところで何とかなりそうなもんだ、り抜いて埋木うめきをしておいたって知れたもんだろう、なんにしたって、ああして白紙を貼りかぶせるのは不吉だよ
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
お上品向きは背の高い表付、後部のってないあと丸もあったが華族さんか医者先生、先代土方伯など小柄な人はいつも高さ五、六寸の別製の駒下駄で埋め合せ。
明治世相百話 (新字新仮名) / 山本笑月(著)
鼠色の壁の塀の中央をり抜いた様な感じのするその入口の前の生垣には、山茶花さざんくわが白く咲いて居た。
世の中へ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
それから、砂函とインキ壺を入れる正方形の枡穴があって、その二つの枡穴の中間には、ペンや封蝋などといった細長い物を入れる長方形の溝がりぬいてある。
刺槐はりゑんじゆよ、い匂がして、ちくちくしてくれるのが愛のたはむれなら、後生ごしやうだ、わたしの兩眼りやうがんりぬいておくれ、さうしたら、おまへの爪の皮肉も見えなくなるだらう。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
つるの附いた鋸でものさしをあてつつ、その炭を同じ長さに切つて、大匏おほふくべ横腹よこつぱらり拔いた炭取に入れた。
父の婚礼 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
ぼんやりながら段々に物が見えて來るといふわけで、六疊間位にり拔いてあるのが焚火のすすで餘計に闇くなつて居るのだ。誰でもはじめは妙な心持がするであらう。
炭焼のむすめ (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
普通の人の使うのは、手に持って右の下に刃がついているのに、木地屋のは木材をりやすくするため、刃が左の下についているから、すぐ見分けがつくというのである。
故郷七十年 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
それでしたら、鍵盤キイのあるり込みの天井には、冬眠している蝙蝠こうもりがぶら下っておりました。また、大きな白い蛾が、まだ一、二匹生き残っていたのも知っておりますわ。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
同じ道を何べんも通る橇によって、陸地と同様に氷の上にも深い轍跡やくぼみができ、馬どもはみんな氷の切石をバケツのようにりぬいたものからかれらの燕麦えんばくを喰った。
ふと目に着いたものは白蝋はくろうのような色をした彼女の肉体のある部分に、真紅しんくに咲いたダリアの花のように、茶碗ちゃわん大にり取られたままに、鮮血のにじむすきもない深いきずであった。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
樋の水がさらさらと木のりめへかかって一杯になると、ざアとながれへこぼれます、拍子を取って、突尖とっさき杵形きねがたが、カーン、何とも言えない、しずかな、さびしい、いいおとがするんです。
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ソレデ寝室ノ右側ニ接シテイタ老夫婦専用ノ便所ヲ、予専用ノモノトシテ椅子式ニ改良シ、寝室ト便所トノ境界ノ壁ヲリ抜イテ、廊下ヘ出ナイデモ行ケルヨウニ、行ケ/\ニシタ。
瘋癲老人日記 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
この出っ張りは約十八インチほど突き出ていて、幅は一フィート以上はなく、そのすぐ上の崖にくぼみあるので、われわれの祖先の使ったあの背をった椅子いすにあらまし似ているんだ。
黄金虫 (新字新仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
大きなフシ穴を一つり拔いて了つた頃に、小父さんが來て見て呆れまして
見よ、空舟うつろぶねりて、殘る船板ふないたをアポロオンにり刻みし未開人の如く
頌歌 (旧字旧仮名) / ポール・クローデル(著)
洞窟の中は、入口から来る月光と、ところどころにり明けられた窓から射し入る月光とで、ところどころほの白く光っているばかりであった。彼は右方の岩壁を手探たぐり手探り奥へ奥へと進んだ。
恩讐の彼方に (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「お誂らえだぜ、面倒なく、床板がり抜いてある」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いわおり抜いて造った家の部屋と部屋との仕切りにはむしろが釣ってあるばかり有明ありあけの灯も消えたと見えて家の内は真っ暗だ。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
一同は、清水の指揮に従って、りやすくするために、蘇鉄の幹の上に小枝を山のように積み上げ、それに火をつけた。
地底獣国 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
内側を深くった挽物ひきもので、そこに様々な色で横筋を入れてあります。かかる独楽は他の国に例が見当りません。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
水に強いと云うかつらわたり二尺余のりぬき、鉄板てっぱんそこき、其上に踏板ふみいたを渡したもので、こんな簡易かんい贅沢ぜいたくな風呂には、北海道でなければ滅多めったに入られぬ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
張り抜きにした上の方をり抜いて、戸障子や手水ちょうず鉢、石燈籠、植え込みなぞいう舞台の仕掛けものや、書き割りなどの模様を提灯ちょうちんの絵描きに頼むのですが
押絵の奇蹟 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「まあ一つ」と婆さんはいつのにかり抜き盆の上に茶碗をのせて出す。茶の色の黒くげている底に、一筆ひとふでがきの梅の花が三輪無雑作むぞうさに焼き付けられている。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
と自信満々で毒蛇コブラがコジあけるに、苦心したのも道理! この大金庫の内側の壁全体はり抜きの空洞となって、その中から今ザラザラとこぼれ落ちてきたものは
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)
幅せまくりぬかれた舟の長さと波のうねりの大さとは、彼らの眼がとっくに比較していたのだ。むろんこの人夫は、舟を操ることでは、ずぶの素人しろうとではなかった。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
どの家も同じやうに、表格子の隅つこに、小さい桝形ますがたの窓、といふよりも穴をり抜いてあつて、そこから白い首の女が顔だけのぞかして、さう頻りに呼びかけてゐるのであつた。
乳の匂ひ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
けれども、その刹那、身体が右の方へねじれていって、それなり、何もかも判らなくなってしまったのです。その瞬間でございましたわ——私が、り込みの天井に蛾を見たのは。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
そして肩には、幅の広い白い絹網の縁飾がついている。それが深くってあるので、軟らかい、しなやかな頸筋くびすじがあらわれている。帽子は結んだままのひもで、片方の腕にかかっている。
きずは癒着するにはしたが、なにぶん、眉間みけんの真中を牡丹餅大ぼたもちだいだけり取られたのだから、そのあとがありありと残って、まあ出来損ないの愛染明王あいぜんみょうおうといった形だ、とても、あの人相では
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
村の人達の湯にはまた溪ぎわへ出る拱門型にった出口がその厚い壁の横側にあいていて、湯に漬って眺めていると、そのアーチ型の空間を眼の高さにたかまって白い瀬のたぎりが見え
温泉 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
たとえば床脇の窓のり方、落懸の深さ、床框の高さなど、一つ/\に眼に見えぬ苦心が払われていることは推察するに難くないが、分けても私は、書院の障子のしろ/″\としたほの明るさには
陰翳礼讃 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
岩をり抜いて作られたがんから、獣油の灯が仄かに射し、石竹せきちく色の夢のような光明が、畳数にして二十畳敷きほどの、洞窟の内部なか朦朧もうろうけむらせ
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)