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刳
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く
ふりがな文庫
“
刳
(
く
)” の例文
ふと
欅
(
けやき
)
の
刳
(
く
)
り
盆
(
ぼん
)
が原氏の目にとまつた。それは田舎の村長などの好きさうな鯛の恰好をしたもので二円三十銭といふ札が付いてゐた。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
材は松板を
刳
(
く
)
ったものでありますが、茶人だったら
塵取
(
ちりとり
)
にでも取り上げるでしょう。荒物屋ではまた
簓
(
ささら
)
のような
茶筅
(
ちゃせん
)
を売ります。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
それからまた
胴乱
(
どうらん
)
と云って
桐
(
きり
)
の木を
刳
(
く
)
り抜いて
印籠
(
いんろう
)
形にした煙草入れを竹の煙管筒にぶら下げたのを腰に差すことが学生間に
流行
(
はや
)
っていて
喫煙四十年
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
帆柱を立てる腕木を
刳
(
く
)
り抜いたり、船の底から丈夫な糸で吊したり、
沢庵漬
(
たくあんづけ
)
の肉を
抉
(
えぐ
)
って詰め込んだり、
飯櫃
(
めしびつ
)
の底を二重にしていたりする。
爆弾太平記
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
発作の時ずたずたに裂いてしまった
鼠色
(
ねずみいろ
)
の服のうえから、
刳
(
く
)
り込みの大きいごわごわのズックの狭窄衣が、ぴっちりと胴体を
緊
(
し
)
めつけている。
紅い花
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
▼ もっと見る
其處の一番の高みに白い石造の燈臺が聳え、燈臺より一寸下つたところに、岩を
刳
(
く
)
り拔いた樣にして燈臺守の住宅が同じく石造で出來てゐた。
樹木とその葉:03 島三題
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
なるほどジーナの指ざすとおり、二、三町先には絶壁をえぐって、急な幾百階かの岩の階段が、斜めに
刳
(
く
)
り抜いてあります。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
檐
(
のき
)
に
風鐸
(
ふうたく
)
をつるし、
丹塗
(
にぬり
)
の唐格子の
嵌
(
はま
)
った丸窓があり、舗石の道が丸く
刳
(
く
)
ッた石門の中へずッと続いている。源内先生は
平賀源内捕物帳:長崎ものがたり
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
背後
(
うしろ
)
の岩壁を
刳
(
く
)
り抜いてそこに
灯皿
(
ほざら
)
が置いてあったが、そこで灯っている獣油の火が蒼然と
四辺
(
あたり
)
を照らしている
態
(
さま
)
は、鬼々陰々たるものである。
加利福尼亜の宝島:(お伽冒険談)
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
それよりは抽斗の両横の
枠
(
わく
)
を三分の一乃至二分の一ほど手の入るだけに浅く
刳
(
く
)
りぬいておくことを勧めたい(次図参照)。
名曲決定盤
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
、
野村長一
(著)
老人はいつの間にやら、
青玉
(
せいぎょく
)
の菓子皿を出した。大きな
塊
(
かたまり
)
を、かくまで薄く、かくまで規則正しく、
刳
(
く
)
りぬいた
匠人
(
しょうじん
)
の
手際
(
てぎわ
)
は驚ろくべきものと思う。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
頭に戴けるは「フイノツキイ」(俗曲中にて無遠慮なる公民を代表したる役なり)の
假髮
(
かづら
)
にて、目に懸けたるは
柚子
(
みかん
)
の皮を
刳
(
く
)
りぬきて作りし眼鏡なり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
その
巌丈
(
がんじょう
)
な石の壁は豪雨のたびごとに汎濫する溪の水を支えとめるためで、その壁に
刳
(
く
)
り抜かれた溪ぎわへの一つの出口がまた牢門そっくりなのであった。
温泉
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
刳
(
く
)
りぬき盆をさしだして茶碗を受ける妻女は、日ごとに新しい境涯に順応し満足しつつあった。女には、おちぶれ果てた、と、別に比べるものも無かった。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
それでも先生は
執拗
(
しつこ
)
く乗り続けた。股を
刳
(
く
)
った女乗りの紅色の自転車にはまたハンドルに幅広のリボンが蝶型に結び付けられていた。赤城颪に吹き
靡
(
なび
)
いた。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
関家の定紋九曜を
刳
(
く
)
りぬいた白木の
龕
(
がん
)
で、あなたが死ぬ時一処に
牧場
(
ぼくじょう
)
に埋めて牛馬の食う草木を肥やしてくれと遺言した老夫人の白骨は、此中に在るのだ。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
しかもこの着物は襟許が
刳
(
く
)
ってあるので、メリケン粉のまだらについた首筋が、いやらしくあらわれている。
ルイスヒェン
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
削り直したところで何とかなりそうなもんだ、
刳
(
く
)
り抜いて
埋木
(
うめき
)
をしておいたって知れたもんだろう、なんにしたって、ああして白紙を貼りかぶせるのは不吉だよ
大菩薩峠:18 安房の国の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
お上品向きは背の高い表付、後部の
刳
(
く
)
ってないあと丸もあったが華族さんか医者先生、先代土方伯など小柄な人はいつも高さ五、六寸の別製の駒下駄で埋め合せ。
明治世相百話
(新字新仮名)
/
山本笑月
(著)
鼠色の壁の塀の中央を
刳
(
く
)
り抜いた様な感じのするその入口の前の生垣には、
山茶花
(
さざんくわ
)
が白く咲いて居た。
世の中へ
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
それから、砂函とインキ壺を入れる正方形の枡穴があって、その二つの枡穴の中間には、
鵞
(
が
)
ペンや封蝋などといった細長い物を入れる長方形の溝が
刳
(
く
)
りぬいてある。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
刺槐
(
はりゑんじゆ
)
よ、
好
(
い
)
い匂がして、ちくちく
刺
(
さ
)
してくれるのが愛の
戲
(
たはむれ
)
なら、
後生
(
ごしやう
)
だ、わたしの
兩眼
(
りやうがん
)
を
刳
(
く
)
りぬいておくれ、さうしたら、おまへの爪の皮肉も見えなくなるだらう。
牧羊神
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
弦
(
つる
)
の附いた鋸で
尺
(
ものさし
)
をあてつつ、その炭を同じ長さに切つて、
大匏
(
おほふくべ
)
の
横腹
(
よこつぱら
)
を
刳
(
く
)
り拔いた炭取に入れた。
父の婚礼
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
ぼんやりながら段々に物が見えて來るといふわけで、六疊間位に
刳
(
く
)
り拔いてあるのが焚火の
煤
(
すす
)
で餘計に闇くなつて居るのだ。誰でもはじめは妙な心持がするであらう。
炭焼のむすめ
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
普通の人の使うのは、手に持って右の下に刃がついているのに、木地屋のは木材を
刳
(
く
)
りやすくするため、刃が左の下についているから、すぐ見分けがつくというのである。
故郷七十年
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
それでしたら、
鍵盤
(
キイ
)
のある
刳
(
く
)
り込みの天井には、冬眠している
蝙蝠
(
こうもり
)
がぶら下っておりました。また、大きな白い蛾が、まだ一、二匹生き残っていたのも知っておりますわ。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
同じ道を何べんも通る橇によって、陸地と同様に氷の上にも深い轍跡やくぼみができ、馬どもはみんな氷の切石をバケツのように
刳
(
く
)
りぬいたものからかれらの
燕麦
(
えんばく
)
を喰った。
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
ふと目に着いたものは
白蝋
(
はくろう
)
のような色をした彼女の肉体のある部分に、
真紅
(
しんく
)
に咲いたダリアの花のように、
茶碗
(
ちゃわん
)
大に
刳
(
く
)
り取られたままに、鮮血のにじむ
隙
(
すき
)
もない深い
痍
(
きず
)
であった。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
樋の水がさらさらと木の
刳
(
く
)
りめへかかって一杯になると、ざアと
流
(
ながれ
)
へこぼれます、拍子を取って、
突尖
(
とっさき
)
の
杵形
(
きねがた
)
が、カーン、何とも言えない、
閑
(
しず
)
かな、
寂
(
さび
)
しい、いい
音
(
おと
)
がするんです。
菊あわせ
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ソレデ寝室ノ右側ニ接シテイタ老夫婦専用ノ便所ヲ、予専用ノモノトシテ椅子式ニ改良シ、寝室ト便所トノ境界ノ壁ヲ
刳
(
く
)
リ抜イテ、廊下ヘ出ナイデモ行ケルヨウニ、行ケ/\ニシタ。
瘋癲老人日記
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
この出っ張りは約十八インチほど突き出ていて、幅は一フィート以上はなく、そのすぐ上の崖に
凹
(
くぼ
)
みあるので、われわれの祖先の使ったあの背を
刳
(
く
)
った
椅子
(
いす
)
にあらまし似ているんだ。
黄金虫
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
大きなフシ穴を一つ
刳
(
く
)
り拔いて了つた頃に、小父さんが來て見て呆れまして
幼き日:(ある婦人に与ふる手紙)
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
見よ、
空舟
(
うつろぶね
)
を
刳
(
く
)
りて、殘る
船板
(
ふないた
)
をアポロオンに
彫
(
ほ
)
り刻みし未開人の如く
頌歌
(旧字旧仮名)
/
ポール・クローデル
(著)
洞窟の中は、入口から来る月光と、ところどころに
刳
(
く
)
り明けられた窓から射し入る月光とで、ところどころほの白く光っているばかりであった。彼は右方の岩壁を
手探
(
たぐ
)
り手探り奥へ奥へと進んだ。
恩讐の彼方に
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
「お誂らえだぜ、面倒なく、床板が
刳
(
く
)
り抜いてある」
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
巌
(
いわお
)
を
刳
(
く
)
り抜いて造った家の部屋と部屋との仕切りには
莚
(
むしろ
)
が釣ってあるばかり
有明
(
ありあけ
)
の灯も消えたと見えて家の内は真っ暗だ。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
一同は、清水の指揮に従って、
刳
(
く
)
りやすくするために、蘇鉄の幹の上に小枝を山のように積み上げ、それに火をつけた。
地底獣国
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
内側を深く
刳
(
く
)
った
挽物
(
ひきもの
)
で、そこに様々な色で横筋を入れてあります。かかる独楽は他の国に例が見当りません。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
水に強いと云う
桂
(
かつら
)
の
径
(
わたり
)
二尺余の
刳
(
く
)
りぬき、
鉄板
(
てっぱん
)
を
底
(
そこ
)
に
鋪
(
し
)
き、其上に
踏板
(
ふみいた
)
を渡したもので、こんな
簡易
(
かんい
)
な
贅沢
(
ぜいたく
)
な風呂には、北海道でなければ
滅多
(
めった
)
に入られぬ。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
縁日の夜店は
刳
(
く
)
りもの工場の煉瓦塀の前から始っていた。そこに乏しい荷を置いた金魚やからだんだん豊富な荷を置いた金魚やまで五六口、店を開いていた。
美少年
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
張り抜きにした上の方を
刳
(
く
)
り抜いて、戸障子や
手水
(
ちょうず
)
鉢、石燈籠、植え込みなぞいう舞台の仕掛けものや、書き割りなどの模様を
提灯
(
ちょうちん
)
の絵描きに頼むのですが
押絵の奇蹟
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「まあ一つ」と婆さんはいつの
間
(
ま
)
にか
刳
(
く
)
り抜き盆の上に茶碗をのせて出す。茶の色の黒く
焦
(
こ
)
げている底に、
一筆
(
ひとふで
)
がきの梅の花が三輪
無雑作
(
むぞうさ
)
に焼き付けられている。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
と自信満々で
毒蛇
(
コブラ
)
がコジあけるに、苦心したのも道理! この大金庫の内側の壁全体は
刳
(
く
)
り抜きの空洞となって、その中から今ザラザラと
零
(
こぼ
)
れ落ちてきたものは
グリュックスブルグ王室異聞
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
幅せまく
刳
(
く
)
りぬかれた舟の長さと波のうねりの大さとは、彼らの眼がとっくに比較していたのだ。むろんこの人夫は、舟を操ることでは、ずぶの
素人
(
しろうと
)
ではなかった。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
どの家も同じやうに、表格子の隅つこに、小さい
桝形
(
ますがた
)
の窓、といふよりも穴を
刳
(
く
)
り抜いてあつて、そこから白い首の女が顔だけ
覗
(
のぞ
)
かして、さう頻りに呼びかけてゐるのであつた。
乳の匂ひ
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
けれども、その刹那、身体が右の方へ
捻
(
ねじ
)
れていって、それなり、何もかも判らなくなってしまったのです。その瞬間でございましたわ——私が、
刳
(
く
)
り込みの天井に蛾を見たのは。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
そして肩には、幅の広い白い絹網の縁飾がついている。それが深く
刳
(
く
)
ってあるので、軟らかい、しなやかな
頸筋
(
くびすじ
)
があらわれている。帽子は結んだままの
紐
(
ひも
)
で、片方の腕にかかっている。
トニオ・クレエゲル
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
創
(
きず
)
は癒着するにはしたが、なにぶん、
眉間
(
みけん
)
の真中を
牡丹餅大
(
ぼたもちだい
)
だけ
刳
(
く
)
り取られたのだから、その
痕
(
あと
)
がありありと残って、まあ出来損ないの
愛染明王
(
あいぜんみょうおう
)
といった形だ、とても、あの人相では
大菩薩峠:21 無明の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
村の人達の湯にはまた溪ぎわへ出る拱門型に
刳
(
く
)
った出口がその厚い壁の横側にあいていて、湯に漬って眺めていると、そのアーチ型の空間を眼の高さにたかまって白い瀬のたぎりが見え
温泉
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
たとえば床脇の窓の
刳
(
く
)
り方、落懸の深さ、床框の高さなど、一つ/\に眼に見えぬ苦心が払われていることは推察するに難くないが、分けても私は、書院の障子のしろ/″\としたほの明るさには
陰翳礼讃
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
刳
漢検1級
部首:⼑
8画
“刳”を含む語句
刳舟
両刳
刳貫
刳込
刳形
刳抜
刳抜盆
刳物
刳盆
刳穴
絵刳
奪肉刳骨
刳門
刳鉢
刳貫舟
刳袴
刳磔
刳物台
丸刳