)” の例文
くだん古井戸ふるゐどは、先住せんぢういへつまものにくるふことありて其處そこむなしくなりぬとぞ。ちたるふた犇々ひし/\としておほいなるいしのおもしをいたり。
森の紫陽花 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
あるいは彼らが骨冷かに肉ち、世人せじんの一半は彼等が名を忘却したる時において、始めて彼らのきたる種子の収穫を見ることあり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
柄は木質にてちて居りし事故、如何いかなる方法にて石斧いしおのくくり付けしか詳ならされど、其状そのじやう現今げんこんおこなはるるタガネと大差たいさ無かりしならん。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
だけど、私たちがこのちてしまふ肉體をぎ捨てることによつて、その重荷も捨てゝしまふ時が間もなく來ると、私は信じてゐるの。
「さればよ、惜しいのは、つるなき、流転の移りなき、名のみではある……が、又左殿、安んじておくりゃれ。決定けつじょうはつけておるで」
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あゝ、老いたくない、ちたくない、何時迄いつまでも同じ位置と名誉とを保つて居たい、後進の書生輩などにかぶとを脱いで降参したくない。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
そも/\汝等に屬する物はみな汝等の如くつ、たゞ永く續く物にありては、汝等の生命いのちの短きによりて、この事隱るゝのみ 七九—八一
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
枕木は重にドスならで、北海道に栗は少なく、釧路などには栗が三本と無いが、ドスなら堅硬けんこうにして容易にちず栗にも劣らぬそうである。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
鼻名びめい千載せんざいに垂れる資格は充分ありながら、あのままでち果つるとは不憫千万ふびんせんばんだ。今度ここへ来たら美学上の参考のために写生してやろう
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
雨になったのでいっそうせいてやってるようすである。もとより湿しっけのあるに、小雨こさめながら降ってるのだから、火足ひあしはすこしも立たない。
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
老宰相とともの者はあなの口へ来て内をのぞいていた。李張はちかけた衣服きものに包まれた白骨を抱いてその眼の前にあらわれた。
悪僧 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
ても恨めしい雪の湖ではあると、わたくしはいつまでも眺め入っています。渚にちた重箱の殻が一つ目にとまりました。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
ちたひくたけ垣根かきねつよ筋力きんりよくもつ破壤はくわいするになん造作ざうさもないはずであるが、先端せんたんれしめることさへ出來できないでるのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
あとにひと父親ちちおやのこされました。海辺うみべよこたわったふねは、ふるちてしまいました。煙突えんとつからけむりがるくもったに、オルゴールがっています。
汽船の中の父と子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
その奧に、七年の濕氣しつけちて、ボロボロになつた千兩箱が、十も積んであるのを發見したことは言ふ迄もありません。
古びて、ぼろぼろにてた館内をひととおり見終ると、やがて若い僧侶ロザリオは、一行をヘクザの塔に案内した。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
台所の流しの下には、根笹ねざさや、山牛蒡やまごぼうのような蔓草つるくさがはびこっていて、敷居しきいの根元はありでぼろぼろにちていた。
清貧の書 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
ところもの其人そのひとほねみなすでちたり、ひと其言そのげんのみ君子くんしは、其時そのときればすなは(二)し、其時そのときざればすなは(三)蓬累ほうるゐしてる。
「日蓮は日本国東夷東条、安房の国海辺の旃陀羅せんだらが子なり。いたづらにちん身を法華経の御故おんゆゑに捨てまゐらせん事、あに石をこがねにかふるにあらずや」
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
人をだまいて可惜あたらしき若き命をむざむざと枯木の如くちさす教……(やうやう夢幻的になり)それがし在家の折柄は蝴蝶は花に舞ひ戯れ、鳥が歌へばわが心
南蛮寺門前 (新字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
と、蝋燭ろふそくの火をげて身をかゞめた途端とたんに、根太板ねだいたの上の或物は一匹いつぴきの白いへびに成つて、するするとかさなつたたヽみえてえ去つた。刹那せつな、貢さんは
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
バル すれば、何事なにごと大事だいじござりませぬ、ひいさまは御安穩ごあんのんにカピューレット代々だい/\のお墓所はかどころにおやすみ、ちぬ靈魂みたま天使てんしがたと一しょにござります。
牡山羊が暴れるたびに、無花果のひろいち葉が、背に散りかかる。牝山羊は青空に頭をむけ、鼻の穴をひろげて「ミイ、ミイ」と哀れな声をだしている。
南方郵信 (新字新仮名) / 中村地平(著)
しかしその小屋こやはしらだとか屋根やねなどはちやすいものでつくつてあつたから、今日こんにちではまったくのこつてゐません。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
世に何の貢献もせずに死んだ、艸木さうもくと同じくちたと云はれても、私はさうでないと弁ずることが出来ない。
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
垣もすっかりち果てて、犬や猫も自由に通るし、蜘蛛くももあちこち巣を張るし、空には小鳥やアブや蜂がとび廻り、地には蟻やトカゲや斑猫はんみょうが這い廻っている。
庭の眺め (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
ちかけたような陰気な建物に比べて、この煙だけがばかに威勢よく見える。この住人は余ほどの寒がりに違いない。それとも何か特別の理由があるのかしら。
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
やがて寺の本堂ほんどうへついた。大きな屋根はち、広い回廊かいろうかたむきかけ、太い柱はゆがみ、見るから怪物の住みそうなありさまに、勘太郎も始めはうす気味悪くなった。
鬼退治 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
永い間の戦いに夏彦の部下も俺の部下も一人残らず死に絶えた。俺の弓矢はちて折れ夏彦の弓矢も朽ちて折れた。しかも二人の怨みばかりは綿々めんめんとして尽きぬのだ
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
わしとともにこの島でち果てさすにしのびない。都へ帰ってよき主に仕え、世に出る道をはかってくれ。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
方々のはたの音が遠くの虫を聞くようである。自分は足もとのわが宿を見下す。宿は小鳥の逃げた空籠のようである。離れの屋根には木の葉が一面に積ってちている。
千鳥 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
また山林を開拓かいたくするに、大なる木の根はそのままさしおきて、まわりを切り開くべし。而して二三年をれば、木の根おのづからちて、力を入れずして取るるなり。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
もう老いちてしまえば山へも行かれず、海へも出られないでいますが、その代り小庭こにわ朝露あさつゆ縁側えんがわの夕風ぐらいに満足して、無難に平和な日を過して行けるというもので
幻談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
多数の漂着物は永い年代にわたって、誰ひとりかえりみる者もなく、空しく磯山いそやまかげち去った。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
これともうすもみな神様かみさま御加護ごかご、おかげ他所よそ銀杏いちょうとはことなり、何年なんねんてどえだれず、みきちず、日本国中にほんこくじゅう無類むるい神木しんぼくとして、いまもこのとおさかえてるような次第しだいじゃ。
「けれども、あなたは、高く光のそらにかかります。すべて草や花や鳥は、みなあなたをほめて歌います。わたくしはたれにも知られずおおきな森のなかでちてしまうのです。」
マリヴロンと少女 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「あの方さえお為合しあわせになっていて下されば、わたくしは此のままちてもいい。」
曠野 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
そればかりではなく、年のはじめに山へ上ったものの話では、お寺の中は荒れ次第で、仏具は錆びち、庭や廊下には見るかげもない草枯れの這うのにまかしてあることが分りました。
あじゃり (新字新仮名) / 室生犀星(著)
武士らかしこまりて、又豊雄を押したてて彼所かしこに行きて見るに、いかめしく造りなせし門の柱もちくさり、軒のかはらも大かたはくだけおちて、一八二草しのぶひさがり、人住むとは見えず。
それにしても生憎あやにくに雪が酷い。かくも一時をしのぐ為に、彼女かれ空屋あきやの戸を明けようとすると、なかばちたる雨戸は折柄おりからの風に煽られてはたと倒れた。お葉は転げるように内へ入った。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
せめて、私の死後、これらの紙片が泥にまみれて監獄の中庭で風になぶらるることさえなければ、あるいは、看守のガラス戸の破れめに点々と貼られて雨にちることさえなければ……。
死刑囚最後の日 (新字新仮名) / ヴィクトル・ユゴー(著)
うしお遠く引きさりしあとに残るはちたる板、ふち欠けたるわん、竹のきれ、木の片、柄の折れし柄杓ひしゃくなどのいろいろ、皆な一昨日おとといの夜のあれ名残なごりなるべし。童らはいちいちこれらを拾いあつめぬ。
たき火 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
どんな災難もよりつけないような福々ふくぶくしい見かけであったかやの、何を求めるでもなく成行にしたがって生きていたようなまっとうな生涯、ちて倒れる古木のような自然さで最後を閉じ
(新字新仮名) / 壺井栄(著)
とほしまちかえ、ちかふねかへつとほえ、其爲そのため數知かずしれず不測ふそくわざはひかもして、この洋中やうちゆう難破なんぱせる沈沒船ちんぼつせん船體せんたいすで海底かいていちて、名殘なごり檣頭しやうとうのみ波間はかん隱見いんけんせるその物凄ものすご光景くわうけいとふらひつゝ
みずくきのあとも細々ほそぼそと、ながしたようにきつらねた木目もくめいた看板かんばんに、片枝折かたしおりたけちた屋根やねから柴垣しばがきへかけて、葡萄ぶどうつる放題ほうだい姿すがたを、三じゃくばかりのながれにうつした風雅ふうがなひとかま
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
つまり身分不相応ふそうおうに力を表門にそそぎて美麗びれい宏壮こうそうに築き上げ、人目を驚かし、しかして裏門は柱が曲り、戸がち、満足に開閉することも出来ず、出入りにも危険きけんならしむるがごときものである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
あれほど深い自信のあるらしい芸術上の仕事などは忘れて、放擲はうてきして、ほんとうにこの田舎で一生をちさせるつもりであらうか。この人は、まあ何といふ不思議な夢を見たがるのであらう……。
それは、立ち木のちたのを投げ渡しただけのあぶないものであった。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
町立病院ちやうりつびやうゐんにはうち牛蒡ごばう蕁草いらぐさ野麻のあさなどのむらがしげつてるあたりに、さゝやかなる別室べつしつの一むねがある。屋根やねのブリキいたびて、烟突えんとつなかばこはれ、玄關げんくわん階段かいだん紛堊しつくひがれて、ちて、雜草ざつさうさへのび/\と。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
三軒が皆とおしのようになっていて、その中央なかの家の、立腐たちぐされになってる畳の上に、木のちた、如何いかにも怪し気な長持ながもちが二つ置いてある、ふたは開けたなりなので、気味なかのぞいて見ると
怪物屋敷 (新字新仮名) / 柳川春葉(著)