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啖
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く
ふりがな文庫
“
啖
(
く
)” の例文
今竜が見え次第大声でその竜肉を
啖
(
く
)
いたいと
連呼
(
よびつづ
)
けよと
耳語
(
ささや
)
いて出で、竜を呼び込むと右の通りで竜大いに
周章
(
あわ
)
て、袋を落し逃れた。
十二支考:03 田原藤太竜宮入りの話
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
……勅令……内務省令、
糞
(
くそ
)
を
啖
(
く
)
らえだ。いよいよ団結を固くして、益々大資本を集中しつつ、全国的に鋭敏な爆薬取引網を作って行く。
爆弾太平記
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「げえっ、沂嶺を越えて来たって。それじゃあ、
啖
(
く
)
い殺されねえ方が不思議なくらいだ。沂嶺の虎といったら、泣く子も黙るによ」
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
板橋
(
はんきょう
)
に
三娘女
(
さんろうじょ
)
という宿屋をしている老婆があって、それが旅人に怪しい
蕎麦
(
そば
)
の
餅
(
もち
)
を
啖
(
く
)
わして、旅人を
驢
(
ろば
)
にして金をもうけていたところで
怪譚小説の話
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
ふたりともに顔や身体の内を何かに
啖
(
く
)
い取られて、手足や
肋
(
あばら
)
の骨があらわれて、実にふた目とは見られない
酷
(
むご
)
たらしい姿になっていたそうです。
青蛙堂鬼談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
▼ もっと見る
憎い憎い女……肉を
啖
(
く
)
らって八つ裂きにしても飽き足りぬ! しかしこの世における最も美しき悩ましきもの!
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
立所
(
たちどころ
)
に
影
(
かげ
)
を
啖
(
くら
)
ふ、
啖
(
く
)
はるれば、それまでぢや、
生命
(
いのち
)
にも
及
(
およ
)
びかねぬ。
必
(
かなら
)
ず
此
(
こ
)
の
坂
(
さか
)
を
通
(
とほ
)
らるゝな……
三人の盲の話
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
僕は可哀想な人喰鬼だ、僕は八千代を
啖
(
く
)
って生きている。八千代には良いパトロンがあったんだ、それを僕が横から奪い取った。僕たちは愛を金で売りたくないと思ったからだ。
溜息の部屋
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
渠
(
かれ
)
に言わせると、自分は今までに九人の
僧侶
(
そうりょ
)
を
啖
(
く
)
った罰で、それら九人の
骸顱
(
しゃれこうべ
)
が自分の
頸
(
くび
)
の
周囲
(
まわり
)
について離れないのだそうだが、他の
妖怪
(
ばけもの
)
らには誰にもそんな
骸顱
(
しゃれこうべ
)
は見えなかった。
悟浄出世
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
わけをたずねると、舅と
所夫
(
おっと
)
を虎に
啖
(
く
)
い殺された上、今度はまた子供まで啖い殺されたのだという。わしは、その婦人に、ではなぜこんな恐ろしい山の中に住んでいるのかと訊ねて見た。
論語物語
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
立雲
(
たちぐも
)
の
怪
(
け
)
しくかがやく日のさなか
蟷螂
(
かまきり
)
が番ひ
雌
(
めす
)
は
雄
(
をす
)
を
啖
(
く
)
ふ
白南風
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
獲物
(
えもの
)
啖
(
く
)
つたる年寄さながら驚いて
ランボオ詩集
(新字旧仮名)
/
ジャン・ニコラ・アルチュール・ランボー
(著)
ギリシアのジオメデス王、その馬に人肉を飼ったが、ヘラクレス奮闘して王を殺し、その
尸
(
しかばね
)
を馬に
啖
(
く
)
わしむると
温柔
(
おとな
)
しくなったという。
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
其のうちに怪物の巣へ伴れて往かれて頭から
啖
(
く
)
われるに違いないと思いました。そう思うと恐ろしくて生きた心地が致しません。
人蔘の精
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
何かしら俺を脅迫しに来やがったんだな……と直感しましたので直ぐに……
糞
(
くそ
)
でも
啖
(
く
)
らえ……という覚悟を腹の中で決めてしまいました。
少女地獄
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「お……。ここは
麓
(
ふもと
)
の降り道か。じつアな
土地
(
ところ
)
の衆、ゆうべ
沂嶺
(
きれい
)
の上で、連れていたおらの大事なおふくろを、虎に
啖
(
く
)
い殺されてしまってさ」
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しょせんは三井寺の僧徒を煽動して叡山に敵対させ、かれらを執念く
啖
(
く
)
い合わせて、仏法の乱れ、あわせて王法の乱れを惹き起こす巧みであろう。
玉藻の前
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
そういった趣で、
啖
(
く
)
う事は、豆大福から、すしだ、
蕎麦
(
そば
)
だ。
雪柳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
立雲
(
たちぐも
)
の
怪
(
け
)
しくかがやく日のさなか
蟷螂
(
かまきり
)
が番ひ
雌
(
めす
)
は
雄
(
をす
)
を
啖
(
く
)
ふ
白南風
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
曰くインドで狼が人子を乳した例ウーズ州に最も多い、しかしてこの州がインド中で最も狼害の多い所でまず平均年々百人は狼に
啖
(
く
)
わる。
十二支考:01 虎に関する史話と伝説民俗
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
「いや、これは轆轤首と申す
妖怪
(
ばけもの
)
の首でござる。これへついておるのは、妖怪の方から勝手に
啖
(
く
)
いついたまでで、拙僧の知ったことではござらぬ」
轆轤首
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
なるほど、お作はあんな女ですから、そこへ眼をつけるのも無理はありませんが、刃物で突くとか斬るとかいうなら格別、
啖
(
く
)
い殺すのがどうもおかしい。
半七捕物帳:23 鬼娘
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
啖
(
く
)
い殺しても上げたいほど女心では憎くてならなかったのである。彼女は
三十路
(
みそじ
)
をすこし越えた自分の容色と肉体に負けじたましいをふるいおこしていた。
私本太平記:06 八荒帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
吾輩は思わず犬を放り出して羽振学士の
横面
(
よこつら
)
を力一パイ
啖
(
く
)
らわせた。和製バレンチノが一尺ばかり飛上って、傍の猫の籠の上にブッ倒れて、そのままグッタリと伸びてしまった。
超人鬚野博士
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
明笛
(
みんてき
)
の
竹紙
(
ちくし
)
すらだに舌ねぶる鼠なりきや
啖
(
く
)
ひやぶりける
黒檜
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
差配が
立処
(
たちどころ
)
に
店
(
たな
)
だてを
啖
(
く
)
わせよう。
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
さてはわが子はこの犬に
啖
(
く
)
われたと無明の業火直上三千丈、刀を抜いてやにわに犬を切り捨てた。ところが揺籃の後ろに児の啼き声がする。
十二支考:09 犬に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
郭は珍しい
肴
(
さかな
)
を献上するといって、鹿の
腊
(
ほじし
)
を出すふりをして、その手を斬り落し、翌日血の痕をつけて往くと、大きな
猪
(
いのしし
)
であったから殺して
啖
(
く
)
った。
怪譚小説の話
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
答「いや、何よりは足利自体の
内訌
(
ないこう
)
です。
股肱
(
ここう
)
の臣と臣とが
啀
(
いが
)
みあい、骨肉の
弟御
(
おととご
)
や
異母子
(
いぼし
)
までが、みな主体に
叛
(
そむ
)
いてわが身をわが歯で
啖
(
く
)
いはじめました」
私本太平記:13 黒白帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
年は三十七八で、若いときに甲州の山奥で熊と闘って
啖
(
く
)
い切られたというので、左の耳が無かったそうです。
半七捕物帳:18 槍突き
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
とタンカを切ってやったら牛太の奴吾輩の襟首を
掴
(
つか
)
んでギューギューと小突きまわした。
序
(
ついで
)
に
拳固
(
げんこ
)
を固めて吾輩の
横面
(
よこつら
)
を一つ鼻血の出る程
啖
(
く
)
らわしたから、トタンに堪忍袋の緒が切れてしまった。
超人鬚野博士
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
雲海の荘厳をしも我が飛びていつ果つるなし心
食
(
は
)
み
啖
(
く
)
ふ
夢殿
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
人を
啖
(
く
)
う鬼の口に
髣髴
(
ほうふつ
)
する。
売色鴨南蛮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
すなわち猫が鼠を捉えて直ちに
啖
(
く
)
わず、
手鞠
(
てまり
)
にして抛げたりまた虚眠して鼠その暇を伺い逃げ出すを片手で面白そうに掴んだりするがごとし。
十二支考:02 兎に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
そろそろ
彼
(
あ
)
の坊主を
啖
(
く
)
いたいものだな、
彼奴
(
あいつ
)
め、わしの言葉を真に受けやがって、頼みもせぬ経をはじめおった。
轆轤首
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
家のお絹さんは熊に
啖
(
く
)
われようとするところを、ここの勘蔵さんに助けられたと……。奉公人もみんな知っているくらいですから、主人が知らない筈はありません。
半七捕物帳:29 熊の死骸
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
女は夢中で女自身の
津液
(
しんえき
)
をふくんだ男の口を奪い、刹那、狂奮して顔を烈しくふるわせた。むしゃぶり
啖
(
く
)
らう勢いで如海の舌のその奥の根元までを痛いほど吸った。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
気に入らないと俺の
咽喉笛
(
のどぶえ
)
でも何でも
啖
(
く
)
い切りかねないので、毎日毎日俺に手向い出来ない事を知らせるつもりで、思い切りタタキ散らしてやるんだが、実は恐ろしくて恐ろしくて仕様がないから
超人鬚野博士
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
遂にスペイン人に
賠
(
つぐな
)
われて城に帰った、それは
吉
(
よ
)
かったが全体この女性質慓悍で上長の人の命に
遵
(
したが
)
わぬから遂に野獣に
啖
(
く
)
わす刑に処せられた
十二支考:01 虎に関する史話と伝説民俗
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
四つの首はまたたく間に地上へ落ちたが、主人の首だけは落ちずに、いつまでも怪量に飛びかかっていたが、やがて隙を見つけたのか怪量の衣の袖へ
啖
(
く
)
いついた。
轆轤首
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
かれが人を害せんとする時は、山の上からくるくると廻転しながら落ちて来て、往来の人を噛むのである。そうして、人の腋の下を
啖
(
く
)
い破ってその穴から生血を吸う。
中国怪奇小説集:08 録異記(五代)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
大きな拳骨で私の頭をゴツウ——ンと一つ
啖
(
く
)
らわせました。
近世快人伝
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
その辺の大都フェスの諺に口ばかり剛情な怯者を
詈
(
ののし
)
って汝はアグラの獅ほど勇なり
犢
(
こうし
)
にさえ尾を
啖
(
く
)
わるべしというとある。
十二支考:01 虎に関する史話と伝説民俗
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
烏龍はその肉を
啖
(
く
)
わないで、眼を据え、くちびるを
舐
(
ねぶ
)
りながら、仇の僕を睨みつめているのである。
中国怪奇小説集:04 捜神後記(六朝)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
張は俺は怪物には殺されずに此の虎に
啖
(
く
)
われるのだと思いました。
人蔘の精
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
と一本
啖
(
く
)
らわしてやったら親仁が
禿頭
(
はげあたま
)
を掻いた。
山羊髯編輯長
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
ケープ、カフィル人は魚を蛇に似るとて
啖
(
く
)
わずと(バートンの『
東亜非利加初行記
(
ファースト・フートステプス・イン・イースト・アフリカ
)
』第五章)。
十二支考:04 蛇に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
しかし彼女は何者にか喉を
啖
(
く
)
い破られていて、とてもその魂を呼びかえすすべはなかった。
玉藻の前
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「何か
食物
(
たべもの
)
の
啖
(
く
)
いあわせではございますまいか」
海神に祈る
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
「ずいぶん非道く
啖
(
く
)
い付いたもんだね」
呑仙士
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
“啖”の意味
《動詞》
啖す (たんす)
(古語)貪り食う。
(出典:Wiktionary)
啖
漢検1級
部首:⼝
11画
“啖”を含む語句
大啖呵
健啖
啖付
啖呵
健啖家
面啖
啖唾
飮啖
人肉啖食
青啖
蜥蜴啖
相啖
啖陰性
啖裂
啖肉
啖火交
啖壺
啖呵負
啖人鬼女
取啖