)” の例文
火入ひいれにべた、一せんがおさだまりの、あの、萌黄色もえぎいろ蚊遣香かやりかうほそけむりは、脈々みやく/\として、そして、そらくもとは反對はんたいはうなびく。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
せめて死んだ人たちの冥福を祈るために、起きて線香でも火鉢の中にべておこうと思いながらそれすらも私にはもうでき得なかった。
逗子物語 (新字新仮名) / 橘外男(著)
夜もすがら語り明そうとも、たきぎだけは、鉢の木をべずとも、尽きる気づかいはございませぬゆえ、お心やすくおあたり下さいまし
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
烟草たばこゆらし居たる週報主筆行徳秋香かうとくあきか「渡部さん、恐れ入りますが、おついでにおみ下ださいませんか」「其れがい」「どうぞ」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
閼伽あかの具はことに小さく作られてあって、白玉はくぎょく青玉せいぎょくで蓮の花の形にした幾つかの小香炉こうろには蜂蜜はちみつの甘い香を退けた荷葉香かようこうべられてある。
源氏物語:38 鈴虫 (新字新仮名) / 紫式部(著)
その窓の前のたなの上に青磁の香炉こうろが据えてあったので、そこにじんのようなものがひそかにゆらしてあったのかも知れない。
そしてお父さまの膝に乘つかると、そのまま夕飯も食べない先に眠つてしまひます。臺所の圍爐裡ゐろり榾柮ほだべて家ぢゆうの者は夜を更かします。
業苦 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
それその麁朶そだべてな、ぱッ/\ともやしな……さア召上りまし、此方こっちが柔かなのでございますから、さア御比丘様
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
かれ凝然ぢつとほくへ自分じぶんこゝろはなつたやうにぽうつとしててはまたおもしたやうに麁朶そだをぽち/\とつてべた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
一夜作りの屋根——樅の青枝を解きほぐして、焚火にゆらしてしまう、どんなに山が荒れても、この谷底まで退かない決心である、脂の臭いのする烟は
白峰山脈縦断記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
善は急げと、其日すぐお由の家に移転うつつた。重兵衛の後にいて怖々おづおづ入つて来る松太郎を見ると、生柴なましば大炉おほろをりべてフウフウ吹いてゐたお由は、突然いきなり
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
その祭壇の神々こうごうしさ! 遥かの奥の厨子ずしの内には十字架に掛かった基督キリストの像と嬰児おさなごを抱いたマリアの像がゆる香煙けむりまといながら幻影まぼろしのように立っている。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ツマラナイと思ったらかまどの下へべて下さいと、言終ると共に原稿一綴を投出してサッサと帰ってしまった。
露伴の出世咄 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
床の側にはお妾のお峰が、たった一人泣き濡れて居り、無闇矢鱈むやみやたらべるらしい線香の煙が、部屋一杯にこめて、いきなり入るとむせ返るような心持になりました。
銭形平次捕物控:245 春宵 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
石炭をべてもべても容易に温まらない部屋の中で僕はしみじみと東京の家を恋しいと思つて居た。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
お絹は手炙てあぶりに煙草火をいけて、白檀びゃくだんべながら、奥の室の庭向きのところへ座蒲団を直して
挿話 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
私に私の宿命がある通り、妻には妻のまわり合せがあります、二人を一束ひとたばにして火にべるのは、無理という点から見ても、痛ましい極端としか私には思えませんでした。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
頭をこてで縮らし、椅子に斜にって、煙草をゆらしている自分の姿を、柱かけの鏡の中に見て、前とは別人のように思い、また若き発明家に相応ふさわしいものに自分ながら思った。
老妓抄 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
そうして、彼女が枯枝を火にべるごとに、彼らも彼女を真似て差し燻べた。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
そう云う内に香炉からは、道人のべたこうの煙が、あかるい座敷の中にのぼり始めた。
奇怪な再会 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
と言って、木の枝をうまく渡して、焚火にべておいた餅を片手でつまみ上げ
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そをだにかうゆるかと頼めるけはひ。
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
竈の中へべてやる
無法な火葬 (旧字旧仮名) / 小泉八雲(著)
火のない部屋の炉のそばで、一刀斎は笑っていた。典膳のほうを見てではない。そこに蚊やりをべているこのあるじに向ってである。
剣の四君子:05 小野忠明 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼等かれら途次みちみちさわぐことをめないで到頭たうとう村落むら念佛寮ねんぶつれうひきとつた。其處そこにはこれ褞袍どてらはおつた彼等かれら伴侶なかま圍爐裏ゐろり麁朶そだべてあたゝまりながらつてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
そして、校長は気毒相きのどくさうな顔をしながら、健には存在ぞんざいな字で書いた一枚の前借証を返してやる。渠は平然けろりとしてそれを受取つて、クル/\と円めて火鉢にべる。
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
近所で時々煙の立つのを、これが海人あまの塩を焼く煙なのであろうと源氏は長い間思っていたが、それは山荘の後ろの山でしばべている煙であった。これを聞いた時の作
源氏物語:12 須磨 (新字新仮名) / 紫式部(著)
とう/\彫像てうざうを——なんです——ちゝ暖炉ストーブべていたまでもわからなかつたんです。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
頭をこてで縮らし、椅子に斜にって、煙草をゆらしている自分の姿を、柱かけの鏡の中に見て、前とは別人のように思い、また若き発明家に相応ふさわしいものに自分ながら思った。
老妓抄 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
妾を撲るお前達の鞭こそ、涅槃ねはんに導く他力だとな! 妾はお前達に礼を云う。妾をべた松火たいまつの火こそ、真如へ導く導火だとな! おお人々よ慾を捨てよ! 慾こそは輪廻りんねを産む。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
床の間の香炉からは、始終紫色の香の煙が真っ直ぐに静かに立ち昇って、明るい暖かい室内をきしめて居た。私は時々菊屋橋ぎわみせへ行って白檀びゃくだん沈香じんこうを買って来てはそれをべた。
秘密 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
たまゆる海の色、うたげのゑまひ
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
「火ん中へべて了うた。」
南北 (新字新仮名) / 横光利一(著)
「親分、今ひときますから、体を暖かくしておやすみなさいまし」と空地の一端で、ドカドカと焚火たきびの焔を揚げ初めました。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
う言つて、お由は腰につた右手を延べて、燃え去つた炉の柴をべる。髪のおどろに乱れかかつた、その赤黒い大きい顔には、痛みをこらへる苦痛くるしみが刻まれてゐる。
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
主人しゆじんむら駐在所ちうざいしよ巡査じゆんさ耳打みゝうちをした。巡査じゆんさあるぶらつと勘次かんじうちつた。あさからあめなので勘次かんじ仕事しごとにもられず、火鉢ひばちすこしづゝべてあたつてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
かざりの鳥には、雉子、山鶏やまどり、秋草、もみじを切出したのを、三重みえ七重ななえに——たなびかせた、その真中まんなかに、丸太たきぎうずたかく烈々とべ、大釜おおがまに湯を沸かせ、湯玉のあられにたばしる中を、前後あとさきに行違い
貝の穴に河童の居る事 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
すずろかにゆる命の
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
聚議庁しゅうぎちょうの大香炉には香がべられ星を祭る壇には供え物が上げられて、鼓楽こがくのうちに、慶祝の酒もりがもよおされた。いつもこうした大祭は三日つづく。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
渠は平然けろりとしてそれを受取つて、クル/\と圓めて火鉢にべる。淡い焔がメラ/\と立つかと見ると、直ぐ消えて了ふ。と、渠は不揃ひな火箸を取つて、白くなつて小く殘つてゐる其灰を突く。
足跡 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
串戯じょうだんじゃあない、ちょうど一くべべた処だ、あったけえよ。」
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
町人のゆらしている煙は西国煙草さいこくたばこらしい。それも阿波あわ煙草や薩摩さつま煙草ではなく中国ものだ——。そんな事を考えたりして、釣糸いとに心はいていないのだ。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
赤葉の芽ぐみ物ゆる五月さつきの丘の
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
と、酒を位牌いはいにそそぎ、また冥土めいど供養の紙銭かみぜにをつかんでべ終ると、彼は声を放っておいおいと泣きだした。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すると半兵衛重治は、つらつら黙読していたが、読み終ると、黙って、炉の中へそれをべてしまった。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
喜太夫は、かやの葉を、縁でべ初める。その煙が逃げてゆくひさしに、薙刀なぎなたのような宵月がしていた。
大谷刑部 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
気にさわったか、夏駿は、獰猛どうもうな顔をして見せながら、仏像の頭を炉の中へべこんだ。
人間山水図巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
土足どそくのまま、炉のそばへ来た。そしてひとつかみの柴をべて、その明りに
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼は、金蓮を引きずッて来て、祭壇の前の菅莚すがむしろの前にぬかずかせ、自身は手を伸ばして、香炉こうろに香をべた。そしてまた、まつりの紙銭かみぜにへも火をつけたので、女は、せつなに、何か直感したらしい。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
見れば、欠けた土鍋の下に、べているのは、砕かれた琵琶であった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)