)” の例文
おれは目がらみながら、仰向あおむけにそこへ倒れてしもうた。おれの肉身に宿らせ給う、諸仏しょぶつ諸菩薩しょぼさつ諸明王しょみょうおうも、あれには驚かれたに相違ない。
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
由「まことにお気の毒な事で、何とも申そうようがございません、定めてお聞でしょうが、おうちへお出入の指物屋が金に目がれて殺したんですとサ」
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
御運とは申せ、力無き事とは申せ、御行末おんゆくすえの痛はしさを思へば、眼もれ、心も消えなむばかりと、涙を流して申し候。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
鮮血! 兇器! 殺傷! 死体! 乱心! 重罪! 貫一は目もれ、心も消ゆるばかりなり。宮はひしと寄添ひて
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
あれあれ、とばかりに学士は目もれ、心も消え、体に悪熱あくねつを感ずるばかり、血を絞って急を告げようとする声は糸より細うしておのが耳にも定かならず。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
取巻きの太鼓持か落語家のうちで、褒美の金に眼がれて、その役を買って出た奴があるに相違ねえ。洒落にしろ、悪戯いたずらにしろ、飛んだ人騒がせをしやあがるな
もしそういう立派な訪問者との会談なんぞに眼がれて太子までが私をナメて長く待たせるようであったら、かまわねえからこっちから縁を切ってさっさと引き揚げてしまおうかと
ナリン殿下への回想 (新字新仮名) / 橘外男(著)
実はさっきから、眼が少しらんで——眩らんだか、眩らまないんだか、あなの中ではよく分らないが、何しろ好い気持ではなかったが、こう尻を掛けて落ちつくと、大きにらくになる。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
松倉屋の財産に眼がれて、若さと美しさとを犠牲にしたのだし、松倉屋の方から云う時には、女の若さと美しさのために、財産とそうして位置と名誉とを、犠牲にしたということになる
生死卍巴 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
王はこのときれつ
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
長「何だか知りませんが、ひとの仕事を疑ぐるというのが全体ぜんてえ気にくわないから持って帰るんです、銭金ぜにかねに目をれて仕事をする職人じゃアございません」
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
先祖代々算盤そろばん生命いのちと思うておりまする私どもまでも、その友月上人様の御痛わしいお姿を拝みまする度毎たびごとに、まことに眼もれ、心もしどろになりまするばかり……
名娼満月 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
貞子の方は奥より駈出で(見るに眼もれ心も消え、)といとに乗るまでにはあらざるも、式台の戸より隙見すきみして、一方ならぬ御愁傷おなげきなり。書生は殊更にかっぷとつばこぶしに打占め
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
五千弗という金に眼がれた訳でもないんですが、その老人の様子がいかにも殊勝しゅしょうで、心の底から小鉄の死を悲しむようにも見えた。その誠心まごころに感動したとでもいうのでしょうか。
探偵夜話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
木曽の大領義明に打ち滅ぼされた西班牙イスパニアの司僧マドリド教主の遺児わすれがたみ千曲姫ちくまひめと申す者こそ、仮にわらわの娘となり、この篠井に住みましたなれど、今は行方をらまして、ひそかに敵を狙っている筈。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
人々これが為に目もれ、心も消えてまゆしわめぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
れてたふれ寄る身の
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
三両の給金というのに眼がれて、前後のかんがえも無しに是非そこへやってくれと強請せびりますので、お徳もとうとうを折って、当人の云うなり次第に奉公させることになりました。
半七捕物帳:20 向島の寮 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
お雪は見るも痛々しく、目もれたるさまして、おろおろ声で
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「アッハハハハ、莫迦な話だ。不肖なれど鏡家は当藩での家老職、まずは名門と云ってよい。たとえ財産はあるにしても大鳥井家はたかが百姓、そんなものに眼がれようか。それに紋兵衛は評判も悪い」
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)