かを)” の例文
て、ぷんかをりのたか抽斗ひきだしから、高尾たかを薄雲うすぐも一粒選ひとつぶえりところして、ずらりとならべてせると、くだん少年せうねん鷹揚おうやうたが
人参 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
私が入ると音楽は止んだ。私は眼をしよぼ/\させて事の成り行きを告げると、出し立てのかをりのいゝお茶を一杯馳走になつて直ぐ辞し去つた。
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
……その風かをる橋のうへ、ゆきつ、もどりつ、人波ひとなみのなかに交つて見てゐると、撫子なでしこの花、薔薇ばらはな欄干らんかんに溢れ、人道じんだうのそとまで、瀧と溢れ出る。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
東作は煙草盆を引寄せて一服吸付け、長閑のどかな煙を長々と吐きました。プーンと高貴な、國府こくぶかをり——。
校友の控所にてられたる階上の一室には、盛装せる丸髷まるまげ束髪そくはつのいろ/\居並びて、立てこめられたる空気の、きぬの香にかをりて百花咲ききそふ春ともいふべかりける
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
 白菊一枝ひとえ ささげなば 君がおもひぞ いやさやに かをりめでたく 深まりぬらむ
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
だらしなくかかへ出されてかをりたる薄黄うすきの、赤の乳緑にふりよくの、青の、沃土えうど
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
まづ女御にようご御方おんかたにてむかしのおんものがたりなどきこえたまふに夜更よふけにけり、二十日の月さしいづるほどにいとゞ木高きかけどもこぐらうみえわたりて、近きたちばなのかをりなつかしくにほひて
すげ笠にあるべき歌と強ひゆきぬ若葉よかを生駒いこま葛城かつらぎ
みだれ髪 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
くしじようさまにもぞおよろこ我身わがみとても其通そのとほりなり御返事おへんじ屹度きつとまちますとえば點頭うなづきながら立出たちいづまはゑんのきばのたちばなそでにかをりて何時いつしつき中垣なかがきのほとりふきのぼる若竹わかたけ葉風はかぜさら/\としてはつほとゝぎすまつべきなりとやを
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
もとめ來てみてかをりぬ、あてにしみらに。
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
春の日の光の名残なごり花ぞのににほかをると
源氏物語:44 匂宮 (新字新仮名) / 紫式部(著)
紀の国のたより来る日や風かを
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
金銀きんぎん珠玉しゆぎよくたくみきはめ、喬木けうぼく高樓かうろう家々かゝきづき、花林曲池くわりんきよくち戸々こゝ穿うがつ。さるほどに桃李たうりなつみどりにして竹柏ちくはくふゆあをく、きりかんばしくかぜかをる。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「良いかをりだらう、線香の匂ひにも似て居るが、馬糞線香まぐそせんかうぢやない」
燃えあがる急須つらつらそれの息をそばの茶碗にかをしけるかも
雲母集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
かを淡海あはうみひらけ鏡なす波のかゞやき。
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
かかる折こそけがれたる身も世もかを
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
たきもしめざる蘭麝らんじやおのづからかをりて、くや蛺蝶けふてふ相飛あひとべり。蒲柳ほりう纖弱せんじやく羅綺らきにだもがたし。麗娟りけんつね何處いづくにも瓔珞やうらくくるをこのまず。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それから一と月、江戸は青葉の風かをる頃となりました。三百八十兩を取り返したのは、彦兵衞お富の親娘おやこの手柄と判つて、徳之助の家督相續にも、お富との祝言にも、今は文句を言ふ人もありません。
かを淡海あはうみひらけ鏡なす波のかゞやき。
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
なほりき、生きの芽の命かをすと
新頌 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
水仙すゐせんかを浮世小路うきよこうぢに、やけざけ寸法すんぱふは、鮟鱇あんかうきもき、懷手ふところで方寸はうすんは、輪柳わやなぎいとむすぶ。むすぶもくも女帶をんなおびや、いつもうぐひす初音はつねかよひて、春待月はるまちつきこそ面白おもしろけれ。
五月より (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
なほ在りき、生きのいのちかをすと
新頌 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
かをり、うつゝにほふ今
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
やがてみのころよ。——就中なかんづくみなみ納戸なんど濡縁ぬれえん籬際かきぎはには、見事みごと巴旦杏はたんきやうがあつて、おほきなひ、いろといひ、えんなる波斯ペルシヤをんな爛熟らんじゆくした裸身らしんごとくにかをつてつた。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
君なればそぞろ涙もかをるらむ。——
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
緑蝶夫人ろくてふふじんといふ艶麗あでやかなのが、麹町通かうじまちどほ電車道でんしやみちむかうへ、つい近所きんじよに、家内かないともだちがあるのに——けないとぷんとしないが、香水かうすゐかをりゆかしきびんならぬ、衣裳鞄いしやうかばんりてつた。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
また かをす、もはらなる白。
海豹と雲 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
されば水筋みづすぢゆるむあたり、水仙すゐせんさむく、はなあたゝかかをりしか。かりあとの粟畑あはばたけ山鳥やまどり姿すがたあらはに、引棄ひきすてしまめからさら/\とるをれば、一抹いちまつ紅塵こうぢん手鞠てまりて、かろちまたうへべり。
月令十二態 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
かをる日の光なよらに
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
しかれどもはなひらいて絢爛けんらんたり。昌黎しやうれいうるところ牡丹ぼたんもとむらさきいま白紅はくこうにしてふちおの/\みどりに、月界げつかい採虹さいこう玲瓏れいろうとしてかをる。はなびらごとに一聯いちれんあり。なるかないろ分明ぶんみやうにしてむらさきなり。
花間文字 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
清々すが/\しいのは、かけくちをちら/\と、こぼれて、やまぷんかをる、ひのきまきなど新緑しんりよくである。松葉まつばもすら/\とまじつて、浴槽よくさういて、くゞつて、るゝがまゝにふ。
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ひなはさてみやこはもとより、きぬかろこひおもく、つまあさく、そでかゞやかぜかをつて、みどりなか涼傘ひがさかげみづにうつくしき翡翠ひすゐいろかな。浮草うきくさはなくも行方ゆくへやまなりや、うみなりや、くもるかとすればまたまばゆ太陽たいやう
五月より (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ふといたまど横向よこむきにつて、ほつれ白々しろ/″\としたゆびくと、あのはなつよかをつた、とおもふとみどり黒髮くろかみに、おなしろはな小枝こえだきたるうてな湧立わきたしべゆるがして、びんづらしてたのである。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そして、木犀もくせいのやうなあまにほひが、いぶしたやうにかをる。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
なんともへない、あまい、なまめいたかをりが、ぷんかをつた。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)