“木犀”の読み方と例文
読み方割合
もくせい100.0%
(注)作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
玄関と門の間にあるこんもりした木犀もくせい一株ひとかぶが、私の行手ゆくてふさぐように、夜陰やいんのうちに枝を張っていた。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
前には伽羅きゃらや松や躑躅つつじ木犀もくせいなどの点綴てんてつされた庭がひろげられてあって、それに接して、本堂に通ずる廊下が長く続いた。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
こつちの手水鉢てうづばちの側にある芙蓉ふようは、もう花がまばらになつたが、向うの袖垣の外に植ゑた木犀もくせいは、まだその甘い匂が衰へない。
戯作三昧 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
女は、金五郎へ、しなだれかかるように、寄り添った。木犀もくせいの花の香のような、官能をえぐる、誘惑的なにおいが、こころよく、金五郎の鼻をくすぐる。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
隣りの木犀もくせいにも、若楓わかかえでにも、えにしだにも、藤にも、桜にも、どの木にも、どの木にも、蛇がまきついていたのである。
斜陽 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「まあ、い景色ですことね! 富士が好く晴れて。おや、大相木犀もくせいにほひますね、お邸内やしきうちに在りますの?」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
夢からさめてしめやかな木犀もくせいほおをうたれたような、初秋の冷やかさほどで、むしろ快感のある突はなし加減だ。
豊竹呂昇 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
十里城外は、戦乱の巷というのに、ここの一かくは静かな秋の陽にみち、芙蓉の花に、雲は麗しく、木犀もくせいのにおいを慕って、小さい秋蝶が低く舞ってゆく。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
縁側に出て庭の木犀もくせいあたる日を眺めていると、植木屋の裏の畠の方から寂しい蛙の鳴声が夢のように聞えて来る。
芽生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「十一をんな」、芥菜からし木犀もくせいの花、僞のもつと少ない手足よりも、おまへたちのはうがわたしはすきだ。ほろんだ花よ、むかしの花よ。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)