かをる)” の例文
そこで綱宗の吉原へ通つた時、何屋の誰のもとへ通つたかと云ふと、それは京町の山本屋と云ふ家のかをると云ふ女であつたらしい。
椙原品 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
力づよい後見を得たいばかりに、光源氏に嫁いだが、柏木と密通懐妊してかをるを生んだことはすでに語つた。
それからずつと素人しろうとになつて母と二人で、前から関係のある兜町かぶとちやうの男から、時々支給を仰ぎながら細々暮らしてゐた古い商売友達のかをるが、浅草のカフヱに出てゐて
のらもの (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
御髮みぐしはいとこちたうもあらぬほどにうちやられたる、枕よりおちたるきはの、つやつやと」した宇治の姫君が愛人のかをるの君たちにみとられながら、遂に息を引きとつてしまふ。
黒髪山 (旧字旧仮名) / 堀辰雄(著)
大分たつてから一度かをるに勧められて、父や母に内密で、そつともとの古巣へ行つて見た。そして勝手口から台所へあがつて見た。竹の皮や皿小鉢の散乱した食卓がはふり出されてあつた。
のらもの (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)