“薫(かほ)” の例文
その一本の線香の細さ、立ち昇る煙のたよたよしさ、——少女は勿論(もちろん)目を閉ぢたなり、線香の薫(かほ)りを嗅(か)いでゐるのである。
わが散文詩 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
籠(こめ)し櫻山巡(めぐ)る麓(ふもと)に風薫(かほ)る時は卯月(うづき)の末の空花の藤枝(ふぢえだ)はや過て岡部に續く宇都(うつ)の山蔦(つた)の細道十團子(とほだんご)夢か現(うつゝ)にも人にも遇(あは)ぬ宇都の谷と彼の能因(のういん)が昔を今に振(ふり)も變らぬ梅若葉鞠子(まりこ)の宿を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
円(まろ)らに薫(かほ)る軟(そよ)かぜの
全都覚醒賦 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
見(み)せて薫(かほ)りも分(わか)ち合(あ)ふ中村(なかむら)園田(そのだ)と呼(よ)ぶ宿(やど)あり園田(そのだ)の主人(あるじ)は一昨年(をとゞし)なくなりて相続(さうぞく)は良之助(りやうのすけ)廿二の若者(わかもの)何某学校(なにがしがくかう)の通学生(つうがくせい)とかや中村(なかむら)のかたには娘(むすめ)只一人(たゞひとり)男子(をとこ)もありたれど早世(さうせい)しての一粒(つぶ)ものとて寵愛(ちやうあい)はいとゞ手(て)のうちの玉(たま)かざしの花(はな)に吹(ふ)かぬ風(かぜ)まづいとひて願(ねが)ふは
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)