なか)” の例文
汝また彼の事を心に記してたづさへ行くべし、されど人に言ふなかれ。かくて彼はまのあたり見る者もなほ信ずまじきことどもを告げ 九一—九三
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
わたしは平生文学を志すものに向って西洋紙と万年筆とを用うることなかれと説くのは、廃物利用の法を知らしむる老婆心に他ならぬのである。
十日の菊 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
詩人はその題のために動さるゝことなかれ。その心は冷なること氷の如くならんを要す。その心の生ずるところをば、先づ刀もてり碎き、一片々々にしらべ視よ。
されども理屈の上に文学の皮をせて十七字の理屈をものするもまた文学の応用なれば時にこれを試むるも善し。ただ理屈のために文学を没却せらるることなかれ。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
静穏の美こそ最後の美である。『臨済録』にいう、「無事はこれ貴人、だ造作することなかれ」と。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
衣服に非ざることもまた知れり、衣服のかえりみるに足らざることもまた知れり、常識なき痴情ちじょうおぼれたりというなかれ、妾が良人の深厚しんこうなる愛は、かつて少しも衰えざりし
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
「我に酒をすゝむ、我辞せず、ふ君歌へ、歌うて遅きことなかれ。………」
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
卵は卵のままにてその功を為すべし、ひなは雛の儘にてその功を為すべし、時機に依れば、彼れみずから卵を煮、雛をあぶるも、以てさらに意とさざればなり。しかれどもこれを以て、彼を残忍なりというなかれ。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
○長く所謂いはゆる素人しろうとたれ、黒人くろうとたるなかれ。
青眼白頭 (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
錦片をして当前に失わしむることなか
断橋奇聞 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
えんなか
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
しかはあれ、汝己が翼を動かし、進むと思ひつゝ或ひは退しりぞなからんため、祈りによりて、恩惠めぐみを受ること肝要なり 一四五—一四七
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
枕山が求むるなか杜牧とぼく兵を論ずるの筆。かつ検せよ淵明が飲酒の詩。小室にを垂れて旧業を温めん。残樽ざんそん断簡これ生涯。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
われらあえて自らほこるに非ざれどもそれほどまでに西人を崇拝しをらず、それほどまでに日本人を軽蔑しをらず。誤解するなかれ、われらは子の如き西人崇拝にあらず。
人々に答ふ (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
「至道難なし、ただ揀択けんじゃくを嫌う。ただ憎愛することなかれ。洞然どうぜんとして明白なり」と。まして他力を説く浄土門じょうどもんは断えず云う、「ただ頼めよ、委ねよ」と。取捨には誤謬がある。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
言ふことなかれ、汝が心のきずは尚血をしたゝらすと。針につらぬかれたる蝶の猶その五彩の翼をふるふを見ずや。落ちたぎつ瀧の水のしぶきと散りて猶うるはしきを見ずや。これはこれ詩人の使命なり。
わが聞けることばにいふ。われ色を變ふと雖もあやしむなかれ、そはわが語るを聞きて是等の者みな色を變ふるを汝見るべければなり 一九—二一
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
子、これらの句を見て、余が特に悪句を示したる者と誤解するなかれ。余ははじめより句を撰ばず、ただ手当り次第に抜き出したるなり。もし百句を示せとならば百句を示すべし。
古池の句の弁 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
わが寢室に入りしとき、隣室なるジエンナロは上衣を脱ぎ襦袢じゆばん一つとなりて進み來り、いとさかしげに笑ひつゝ、たなぞこを我肩上に置きて、晝見つる美人の爲めに思を勞することなかれといふ。われ。
気早きばやの人みだりにわれらを以て好古癖に捉はるるものとなすなかれ。われら真に良きものなれば何ぞ時の今古きんこと国の東西を云々うんぬんするのいとまあらんや。西班牙スペインに固有の橙紅色とうこうしょくあり。仏蘭西フランスに固有の銀鼠色ぎんねずみいろあり。
一夕 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
芭蕉の自ら感じたるもここなり。少くとも芭蕉は蛙なる一動物の上に活眼を開きたり。しかれども芭蕉が、蛙を以て特に雅致ありて愛すべき者と思ひたり、と誤解するなかれ。
古池の句の弁 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
巧を求むるなかれ、せつおおふ莫れ、他人に恥かしがる莫れ。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
ただ語を以て意を害するなかれ。(三月二十九日)
人々に答ふ (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
剛慢ごうまんなるは善し。弱者後輩を軽蔑するなかれ。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)