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恩惠
そは神は人をして再び身を
上るに
適しからしめん爲己を與へ給ひ、たゞ自ら赦すに
優る
恩惠をば現し給ひたればなり 一一五—一一七
天の
恩惠は
重ね/″\
脊に
下り、
幸福が
餘所行姿で
言寄りをる。それに
何ぢゃ、
意地くねの
曲った
少女のやうに、
口先を
尖らせて
運命を
呪ひ、
戀を
呪ふ。
それは
他でも
無い、
今迄は
恰も
天の
恩惠の
如く、
極めて
順當に、
南から
北へと、
吾が
輕氣球をだん/″\
陸地の
方へ
吹き
送つて
居つた
風が、
此時、
俄然として、
東から
西へと
變つた
事である。
彼は
燃木が火から救ひ出されると同じやうな
恩惠を願ひ乞ひ求めた。