なか)” の例文
しばらくすると、女はなかば真顔になり、きみわるそうに微笑わらいをふくんで、わたしの目を覗き込んだ。
童子 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
不等辺三角形をしたその国のなかほどのところを、青ペンキ色に塗られたダニューブの河が流れている。
墓地展望亭 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「どうしたい!」と私は束々つかつかと進んで、「アこっちへ来給え、」と応接へ案内し、卓をなか相対さしむかいとなるや、「大変悪いように聞いたが、能く出て来られたネ!」
……雲の後ろから、幅のひろい緑色の光が射して、空のなかばまでとどいている。暫くすると、この光に紫色の光が来て並ぶ。その隣には金色のが、それから薔薇色のが。
グーセフ (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
追々お話がなかばに相成りますから、これからが面白く成りますが、兎角開けぬ其の昔のお物語は嘘のようなお話が多いというのは、物成ものなりごくお安く、唯今では物価が高直たかね
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
自分は、そして、自分の生存の尖端は、その焔のなかにあって我が生の歌を一つうたおう。
一本の花 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
先ず卯月うづきなかばごろ、池水あおくして緑あざやかなる不忍池畔でのめぐり合いを語り、それがえにしとなって、お互に訪問たずねかわすようになり、どうにもしてこの絶世の美の化身を
艶容万年若衆 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
打ってもついても、音もなければ手応てごたえもない、折角せっかく自然の大観に接しようとしたがこの始末、そこでやぐらに登り中食をしながら附近を見る、櫓柱は朽ちてなかば以上形なし、東下の石小屋は
穂高岳槍ヶ岳縦走記 (新字新仮名) / 鵜殿正雄(著)
……雲の後から幅のひろい緑色の光がして、空のなかばまで達している。暫くするとこの光は紫色の光が来て並ぶ。その隣には金色のが、それから薔薇色ばらいろのが。が空はやがて柔かな紫丁香ライラック色になる。
冬日記 (新字新仮名) / 原民喜(著)
さてもわれは今童兒どうじにあらず、いのちなかに在りて、事理分別を辨へ
頌歌 (旧字旧仮名) / ポール・クローデル(著)
私を見ると、腰のなかをギックリ屈めて、ビックリしました。
アイヌ神謡集 (新字新仮名) / 作者不詳(著)
いづれの太陽をなかにして
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
少し怪しい奴があとからおっかけて参りまして、少々貯えもありますから、大橋のなかばまでげてまいりますと、貴方あなたのお姿が見えますから、追付おいつこうと思って駈けてまいりますと
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
上げると神々は腰のなか
アイヌ神謡集 (新字新仮名) / 作者不詳(著)