一本の花いっぽんのはな
表玄関の受附に、人影がなかった。 朝子は、下駄箱へ自分の下駄を入れ、廊下を真直に歩き出した。その廊下はただ一条で、つき当りに外の景色が見えた。青草の茂ったこちら側の堤にある二本の太い桜の間に、水を隔てて古い石垣とその上に生えた松の樹とが歩き …