なか)” の例文
避ける工夫は仕てなかッた、殺すと早々逃たのだろう、余り智慧のたくましい男では無いと見える、此向このむきなら捕縛すればじきに白状するだろう
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
懸賞百兩ときいて其日から河にどぶん/\とび込む者が日に幾十人なんじふにんさながらの水泳場すゐえいぢやう現出げんしゆつしたが何人だれも百兩にありくものはなかつた。
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
外には何物をもれる余地のなかつたことを——皆さんが各々てんでに理想のひとを描いて泣いたり笑つたり、うつしたりして騒いで居なさる時にでも
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
かくてかの密室より、お藤を助けいだしつつ、かたのごとく老婆を縛りてまた雑具部屋へ引取りしを、知る者絶えてなかりけり。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
以て私しへ仰せきけらるゝやと申立るを越前守殿きかだまれ長庵其みぎりは確然しかとした證據人のなかりし故なり此度は其せつの證據人と對決申し付る間其時有無うむ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
文庫ぶんこのなかをさがしてもなかつた。鏡台きやうだいにも針箱はりばこにも箪笥たんす抽斗ひきだしにもなかつた。大方おほかた焼棄やきすてるか如何どうかしたのであらう。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
それもこれも承知せぬではなかろうが若い人の癖とてあのおたつに心をうばわれ、しかも取残されたうらみはなく
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
ここニ住シテ凡ソ幾年、しばしバ春冬ノかわルヲ見ル寄語ス鐘鼎家しょうていか、虚名ンデ益なかラン」
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
教の人における、一日もなかるべからず。飽食・暖衣・逸居いっきょして教なきは、禽獣に近し。教の政における、そのいつなり。われきく、文明の国たる、王家大礼あれば必ず教師をひきてこれをつかさどらしむ。
教門論疑問 (新字新仮名) / 柏原孝章(著)
雑魚ざこぴきかからない、万一や網でも損じてはいぬかと、調べてみたがそうでも無い、只管ひたすら不思議に思って水面みなも見詰みつめていると、何やら大きな魚がドサリと網へ引掛ひっかかった、そのひびき却々なかなか尋常でなかった
枯尾花 (新字新仮名) / 関根黙庵(著)
全く其頃の私の眼中には試験の外に何物もなかった。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
斯くも手掛てがゝりなき人殺しは其類少し去れば其日一日は到る所ろ此人殺しの噂ならぬはなかりしも都会は噂の種の製造所なり翌日は他の事の噂に口を
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
サスがの柿沢君も一言いちごんの答弁がなかつたと云ふことです、一言に尽したならば、兼吉の如きは新式江戸ツ子とでも言ひませうか
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
感伏したりけり此外に出會いであはせし公事くじ訴訟人迄も涙も流し感ぜぬ者はなかりしとぞ扨又大岡殿は市郎左衞門にむかはれ罪を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
はなし段々だん/\すゝんだ。わたし詰問きつもんたいして、つまは一ととほり弁解べんかいをしてから、それこひふほどではなかつたと説明せつめいする。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
さりとて人間を二つにする事も出来ず、お辰様が再度また花漬売にならるゝ瀬もなかるべければ、詰りあなたの無理な御望おのぞみ云者いうもの、あなたもいやなのは岩沼令嬢と仰せられて見ると
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「けれどもね六兵衛さん、死だ妻はお露ほど可愛かあいくなかったよ、何でもなかったよ」
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
「松島さん、そんな旧傷ふるきずの洗濯は御勘弁を願ひます、まんざら御迷惑の掛け放しと云ふ次第でもなかつた様でわすから」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
だッて牢屋には肝腎かんじんの藻西太郎が居るだろうじゃ無いか細「でも貴方、藻西に逢た所で別に利益はなかッたでしょう、それよりは何故直に藻西太郎の宅へ行きそのさいを ...
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
おびやか路用ろよううばひて己が酒色のれうにぞつかすてけり初の程は何者の仕業しわざとも知る者なかりしが遂に誰云ふとなく旅人りよじんはぐの惡黨は此頃常樂院の食客大膳と云ふ者の仕業なりとを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
加之それに用心深ようじんぶか其神経そのしんけいは、何時いつ背負揚しよいあげて、手紙てがみさはつたわたしにほひぎつけ、或晩あるばんつまつた留守るすに、そつ背負揚しよいあげしてると、手紙てがみはもうなかにはなかつた。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
牛のしりがいここに外れてモウともギュウとも云うべき言葉なく、何と珠運に云い訳せん、さりとて猥褻みだらなるおこないはお辰に限りてなかりし者をと蜘手くもでに思い屈する時、先程の男きたりてまた渡す包物つつみものひらきて見れば
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
折角よびやったけれど君を迎えるほどの事件ではなかッたよ目
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)