吉原なか)” の例文
一と月ほど前に、吉原なかねんがあけて、この二、三軒先の付木屋つけぎやの息子といっしょになったばかりの、これでも花恥ずかしい花嫁さま。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
吉原なかで鳴らした藝者の小稻、去年の秋宗次郎に捨てられ、氣が狂つて自分の子を殺して、自分も身を投げて死んだことは御聞きでせう
普通の客としか見えない男を捕えて「吉原なかまで如何いかがです」と図星を指したりするのも皆この「第六感」の一種に数えられるのである。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「ちょッとこっちへ寄ろうじゃねえか。ここは土手へ出る馬道うまみちの本通りだ、吉原なかへゆく四ツ手や人通りが多くって、おちおち話もしていられない」
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
守って来たし、お金まで貢いでたじゃありませんか、そのために八方へ不義理ができて、吉原なかへでも身を売るほかはないような始末になってるわ、それを
五瓣の椿 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
吉原なかへ這入って残った奴をみんな売りましたというと、それはえらい。俺よりは上手だなどいって大笑いしました。
けれども吉原なかに居た時よりは樂だと思ふ。まアどうかなるだらうと考へて大きな欠びをする。疊紙たたうを拵へるのもそろそろ厭になる。其處へ三藏が這入つて來る。
俳諧師 (旧字旧仮名) / 高浜虚子(著)
現今いまの金に算して幾両の金数きんすは安く見えはするが、百文あれば蕎麦そばが食えて洗湯にはいれて吉原なかへゆけたという。くらべものでないほど今日より金の高かった時代である。
「末社どもに用談すんだと申してくれ。そしてすぐに吉原なかへゆくゆえ、乗物の、支度支度」
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
勝「何故ったッて、何うも誠に先生のめえでは、ちっときまりの悪い話でげすが、実は彼奴あいつを連れて吉原なかへ遊びに行ったんでげすから、何うしても此方こちらへ来る筈がごぜえませんので」
「今っからこの姿なりで、吉原なかへも行けめえじゃねえか」
「そう。お糸さんは吉原なかへ来たことはないの?」
桜林 (新字新仮名) / 小山清(著)
「それから八は、吉原なかは言うまでもなく四宿の盛り場を廻って、去年の暮頃から住込んだ、新顔のおんなに出来るだけ逢ってみるんだ」
吉原なかで大尽遊びをして来たと景気のいい嘘言うそを吐こうと思った勘次は、これでいささか出鼻を挫かれた形で逡巡たじたじとなった。
あんな道化てばかりいる暢気者のんきものはないぞとは、客の云うことであるが、吉原なかの者は、台屋の横丁のぬかるみを、苦虫を噛みつぶして、黙然もくねん腕拱うでぐみしながら
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
丁度あの鳶頭が来た翌日あくるひでした、吉原なか彼女やつ駈落かけおちと出懸けやしたがね、一年足らず野州やしゅう足利あしかゞで潜んでいるうちにかゝあは梅毒がふき出し、それが原因もとで到頭お目出度めでたくなっちまったんで
あけっ放しで惚れきってるからあんな事になるんだ、なによ、……相手が吉原なかとか柳橋やなぎばしあたりで、だれそれといわれるねえさんならともかく、女中に亭主をとられるなんて女の恥じゃないの
寒橋 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「さうやつていたゞくと大變樂ですこと」といつて細君は又文束から次の一枚の手紙をほぐし取りながら「あのね塀和さん、あなたもどうせ行らつしやるでせうけれど吉原なかのお話をしませうか」
俳諧師 (旧字旧仮名) / 高浜虚子(著)
吉原なかへ、是ッ非、一緒にいって貰いたいな
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
昨夜ゆうべ——宵のうちのことだが、土手の綱七の死んだ話を吉原なかで聞くと、主人の孫右衛門殿は、大変なことを思い付いたのだ——」
綿結城めんゆうきに胡麻柄唐桟の半纏はんてんを羽織って白木の三尺を下目に結んでいる着付けが、どう見ても男は吉原なかの地廻りか、とにかく堅気の者ではなかった。
「前にわかつてゐたら迎へに行つて上げたのに。そりや本當に困つたでせうねえ。でもまあそれだけで濟んで好かつたわ。朦朧組といつてね吉原なかへ行く車屋なんかには手の附けられないのがありますつてね」
俳諧師 (旧字旧仮名) / 高浜虚子(著)
花「それから吉原なかへ行ったんでしょう」
「褒美に、吉原なかへ連れて行ってやろう」
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
吉原なかで鳴らした芸者の小稲、去年の秋宗次郎に捨てられ、気が狂って自分の子を殺して、自分も身を投げて死んだことは御聞きでしょう
すこしおそいが、大引おおびけ過ぎのこぼれを拾いに、吉原なかへでもかせぎに行こうと、今し本所ほんじょのほうから、吾妻橋の袂へさしかかっていた一ちょうの辻駕籠。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
吉原なかへさ」
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「でもね、親分。——犬が女を殺した事だけは本当ですぜ。上根岸の寮で、元吉原なかで鳴らした、薄雲花魁おいらんられたんで」
守人をねらう黒法師の群れを見失った安は、今ごろは吉原なかへでもしけ込んでどこかのちょんちょん格子で枕の番でもおおせつかっていることであろう。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
一と頃は恐ろしい女道楽で、吉原なかから四宿、岡場所まで、いて廻り、何十人、何百人の若いおんなを泣かせたか解りません。
有森利七なんてえ野暮仁やぼじんは、もう、とっくのむかし死んだんで、ここにこうしておりますのは、吉原なかから遠く深川たつみへかけて、おんなの子を泣かせる恋慕流しの宗七さま、へへへへへ。
煩悩秘文書 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「町内の衆や遊び友達は、押かけて来てお祭のような騒ぎだ、吉原なかじゃあぶが一匹死んだほどにも思わないだろう」
「何んにもありません、久兵衞の野郎は、急に小遣が出來たと言つて、吉原なかへ冷かしに出かけた樣ですが——そのお小遣は、お高さんから借りた樣子でした」
吉原なかではいま流行兒はやりつこですが、無理強ひに飮まされて少し醉つてゐるのと、土地に馴染がないから、氣が詰つていけないと言ひ出して、到頭船の中に殘ることになり
吉原なかから始まって、千住せんじゅ、新宿、品川、板橋、の四宿を始め、大根畑から金猫銀猫、いろは茶屋といった岡場所、比丘尼びくにから夜鷹よたかまで、八丁堀の旦那の御声掛りで
吉原なかではいま流行児はやりっこですが、無理強いに飲まされて少し酔っているのと、土地に馴染がないから、気が詰っていけないと言い出して、とうとう船の中に残ることになり
「最初は使ひ屋でございました。吉原なかから華魁衆おいらんしうの手紙を束にして持つて來る使ひ屋の男が、小僧を呼出して、旦那へそつと渡すやうにと言つて置いて行つたさうで——」
「最初は使い屋でございました。吉原なかから華魁衆おいらんしゅうの手紙を束にして持って来る使い屋の男が、小僧を呼出して、旦那へそっと渡すようにと言って置いて行ったそうで——」
平次は黙って死骸を起し、あごで指図をして八五郎に後ろから抱かせました。かつては吉原なかで鳴らした太夫たゆうだけに、「死の手」も美しさを奪うことは出来なかったでしょう。
「遊び人の良助は女の怨だ。——出雲屋の新造といふのは元吉原なかの藝者で、良助と深い仲だつたといふから、これも命の二つや三つは取り度かつたでせう。それから——」
「遊び人の良助は女の怨みだ。——出雲屋の新造というのは元吉原なかの芸者で、良助と深い仲だったというから、これも命の二つや三つは取りたかったでしょう。それから——」
吉原なかで、花魁おいらん八朔はっさくに着る白無垢だよ。三輪の、お狐様じゃないようだね」
吉原なかへ飛ばす四つ手は、魂が拔けて居るから輕いつてね」
吉原なかへ飛ばす四つ手は、魂が抜けているから軽いってね」