廓内なか)” の例文
お前は知らないか美登利さんの居る処を、己れは今朝から探してゐるけれど何処どこゆつたか筆やへも来ないと言ふ、廓内なかだらうかなと問へば
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「中屋貫三郎の請出した誰袖たがそで華魁なんかは豪勢ですぜ、千兩箱を杉なりに積んで請け出し、廓内なかから馬喰町四丁目まで、八文字を踏んで乘込んだ」
戸外そとへ出るとすぐに駕籠に乗って飛ばして廓内なかへ這入り西河岸の桔梗屋という遊女屋へあがりました。
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
まへらないか美登利みどりさんのところを、れは今朝けさからさがしてるけれど何處どこゆつたかふでやへもないとふ、廓内なかだらうかなとへば
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「その誰袖華魁といふのは、一頃廓内なかで鳴らしましたよ。昔の高尾、揚卷も、あれほどではあるまいといふ全盛で、誰袖が引いたら、二丁町は闇になるだらうと言はれた位」
△「えへゝゝ是は有難うございます、いずれお浮れでございますな、昨夜ゆうべ廓内なかへ行って」
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
八月二十日は千束せんぞく神社のまつりとて、山車屋台だしやたいに町々の見得をはりて土手をのぼりて廓内なかまでも入込いりこまんづ勢ひ、若者が気組み思ひやるべし
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ひどく弱つているやうだなと見知りの台屋に咎められしほど成しが、父親はお辞義のてつとて目上の人につむりをあげた事なく廓内なかの旦那は言はずともの事
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ひどくよわつてるやうだなと見知みしりの臺屋だいやとがめられしほどなりしが、父親ちゝおやはお辭氣じぎてつとて目上めうへひとつむりをあげたことなく廓内なか旦那だんなはずとものこと
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
廓内なかおほきいうちにも大分だいぶ貸付かしつけがあるらしうきましたと、大路おほぢちて二三にん女房にようぼうよその財産たからかぞへぬ。
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
夫れでも此方こちどものつむりの上らぬは彼の物の御威光、さりとは欲しや、廓内なかの大きいうちにも大分の貸付があるらしう聞きましたと、大路に立ちて二三人の女房よその財産たからを數へぬ。
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
己れは今朝から探して居るけれど何處へ行たか筆やへも來ないと言ふ、廓内なかだらうかなと問へば、むゝ美登利さんはな今の先己れの家の前を通つて揚屋町の刎橋はねばしから這入つて行た
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
夫れどころでは無いとてふさぐに、何だ何だ喧嘩かと喰べかけの饀ぱんを懷中ふところに捻ぢ込んで、相手は誰れだ、龍華寺か長吉か、何處で始まつた廓内なかか鳥居前か、お祭りの時とは違ふぜ
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)