家内なか)” の例文
おもての雨戸はすっかり破られて、家内なかも、空家あきやのようになっていた。ところどころ壁まで落ちて、まるで半倒壊のありさまだった。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
警官達は一斉に背戸口から家内なかへ這入ろうとした。すると、却って背戸口を、家内の方から押し開けて、背戸畑へ出た男がある。
死の復讐 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
黒頭巾くろずきん黒羽織くろばおり、茶じまのはかま雪駄穿せったばきの、中年をすぎたようなからだつきの武家が一人、さっきから、足音をしのんで、ゆきつもどりつ、家内なかの容子を聴きすまそうとしていたのであった。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
長兵衛宅を訪ねあてると、家内なかでは昨夜から終夜よっぴての大喧嘩である。無理もない、町ところもしらず名もしらぬ男に娘を売った大枚百両恵んでしまったというのだからお神さんの信用しないのも。
三次が、大声を揚げて呶鳴り散らしていると、おもての戸が開け放しになっていて、家内なかが見える。通りかかった人がふとのぞき込んで
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
これぞ天の助くるところと、甚内は突嗟とっさに思案を決めると、パッと雨戸へ飛びかかり、引きあける間ももどかしく家内なかへはいって戸を立てた。
三甚内 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
若者の後に従って紋太夫は家内なかへはいって行った。はいった所に部屋があり、部屋には無数の土人がいた。ガヤガヤ喚きながら酒を飲んでいる。
これへ男の姿が消えたのを見澄みすました早耳三次、窓ぎわへぴったり身を寄せて、家内なかのようすに耳を立てた。
「ではマアちょっと家内なかへはいり、少しお休みなさりませ。ぬくもったら直るでござりましょう」つい勧めたものである。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
気を失った峰丹波の身体は、手早く家内なかへ運んだとみえて、そこらになかった。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「窓から、窓から、あの野郎が、あたいを引っ張ったあの野郎が、ジロジロ家内なかを覗いているよーッ」
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
これは家内なかの女は知らないから、しばらく呼吸を凝らしていると、どうやら文次も立ち去ったようすで、小窓からのぞけば、水のようなうっすらとした宵闇が三味線堀を渡って来るばかり
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
一眼でもよいから見たいと思って、窓から覗いて見ようとしたの。ところが窓が高くてね、ろくろく家内なかが見えないのよ。それで私連れていた山羊へ乗って、ようやく見ることが出来たんだわ
西班牙の恋 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
あとに残った文次、そっと戸口にたたずんで家内なかの気配をうかがうと——
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
呑気のんきだねえ。今ごろ家内なかの二人は……」
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
家内なかでは守人がたちあがるようす。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
弥生はうなずいて家内なかへはいった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「どなたですい?」と家内なかから。
と、ちょっと家内なかを振りかえり
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)