室内なか)” の例文
室内なかにいらっしゃるからあけてはいるように、……そう眼顔で知らせて若侍はまるで逃げるように、サッサと引っ返してしまう。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
と、いった闇太郎、室内なかにはいって火鉢を掻きたてて、付木に火をうつすと、すぐに行灯あんどんがともされた。ぱあっと上りはなの一間があかるくなる。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
室内なかはいやにうす暗くて、初めは低いかさをかぶせたランプのほか何も見えなかったが、だんだん眼が慣れて来るにしたがって、一箇の人影がぼんやりと壁にうつっているのを認めた。
自責 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
“君、そこを下りて、室内なかへ入って下さい。私たちは、君に質問をしたいのだ!”
地球盗難 (新字新仮名) / 海野十三(著)
成程、割れるようにノックしても、室内なかはしいんとしている。内部から鍵が掛っているのでマダムは、ヘヤピンを鍵穴へ差込み、鍵を向うへ落して置いて、自分の持っている親鍵でドアを開けた。
ロウモン街の自殺ホテル (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
そんな予感の雷光いなずまが、同時に十文字に閃めいて、見る見る私の脳髄をしびらしてしまった。しかも、それと反対に、室内なかの様子をうかがっている私の眼と耳とは一時に、氷を浴びたように冴えかえった。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そこで燕はまた自分の事はわすれてしまって、今度は王子ののあたりから金をめくってその方に飛んで行きましたが、画家は室内なかには火がなくてうす寒いので窓をしめ切って仕事をしていました。
燕と王子 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
室内なかへ進んでいつて、つゝましくお辭儀をして、私が見上げると、黒い柱——さう、少くとも一見、私にはさう見えた——眞直ぐな、幅の狹い、黒い着物を着たものが、敷物の上に棒立ちになつてゐた。
と……玄心斎が、蔵のまえにつづくあんどん部屋の前を通りかかると、室内なかから、男とおんなの低い話し声がする。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
戸の下の隙間からあかりが洩れていて、室内なかに人の跫音あしおと——やわらかい絨毯でさえも消すことが出来ないほど慌てた跫音あしおとがしたので、彼は聴耳をたてた——やがてその跫音あしおとが止んで、あかりが消えた。
犬舎 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
この室内なかに、南町奉行大岡越前守忠相様がいらっしゃる——そう思うと音松は、そこのお廊下にべったりすわったきり、すっかりかたくなってしまって
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
戸を鋭く二度叩くと、室内なかから
犬舎 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
室内なかに若松屋惣七とお高の話し声がするので、立ちどまって、はいろうか引っ返そうかとためらっているうちに、自然話が聞こえて立ち聞きすることになった。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
室内なかの声が問いかけた。
犬舎 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
この夜ふけに、室内なかにはボーッと灯りがにじんでいます。呼吸いきをこらして、障子のそとに立っていると
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
室内なかにいるかも知れないのだ。この戸ひとつがくろがねの——容易に開けられる障子ではない。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
室内なかからは、別人べつじんのように町人町人した、若松屋惣七の声がしている。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
と、白髪しらがあたまを振って、しきりに室内なかへ言っている。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
対馬守は、どなるように言いながら、室内なかへはいった。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「黒よ、早く室内なかへはいれ!」
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)