なか)” の例文
あおい、うつくしいそらしたに、くろけむりがる、煙突えんとつ幾本いくほんった工場こうじょうがありました。その工場こうじょうなかでは、あめチョコを製造せいぞうしていました。
飴チョコの天使 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ゆきなか紅鯛べにだひ綺麗きれいなり。のお買初かひぞめの、ゆき眞夜中まよなか、うつくしきに、新版しんぱん繪草紙ゑざうしはゝつてもらひしうれしさ、わすがたし。
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
市街まち中程なかほどおほきな市場いちばがある、兒童こども其處そこへ出かけて、山のやうに貨物くわもつつんであるなかにふんぞりかへつて人々ひと/″\立騒たちさわぐのをて居る。
怠惰屋の弟子入り (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
忘れていた武家の住居すまい——寒気なほどにも質素に悲しきまでもさびしいなかにいうにいわれぬ森厳しんげんな気をみなぎらした玄関先から座敷の有様。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「日本よりあたまなかの方がひろいでせう」と云つた。「とらはれちや駄目だ。いくら日本の為めを思つたつて贔負ひいきの引き倒しになる許りだ」
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
そればかりではありません、やまにある田圃たんぼにあるくさなかにも『べられるからおあがり。』とつてくれるのもありました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
またたかさのもつとたかくなるのはすぎで、秋田縣あきたけん長木澤ながきざは杉林すぎばやし甲州こうしゆう身延山みのぶさん千本杉せんぼんすぎなかには、たかさが三十五間さんじゆうごけんもあるのがられます。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
まがつた社會しやくわい正當防衞せいたうばうゑいくさつたなか大清潔法だいせいけつはふ、それらを完全くわんぜんちか執行しつかうするには、死刑しけいおほ利用りようするよりほかにないとかんがへた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
馬方うまかた馬方うまかた喧嘩けんくわをはじめました。すなツぽこりの大道だいどうべたで、うへになつたりしたになつたり、まるであんこ のなか團子だんごのやうに。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
たとへば越中えつちゆう氷見ひみ大洞穴だいどうけつなかには、いまちひさいやしろまつられてありますが、そのあななかから石器時代せつきじだい遺物いぶつがたくさんにました。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
彼方かなた山背やまかげからぞろ/\とあらはれてたが、鐵車てつしやるやいな非常ひじやう驚愕おどろいて、奇聲きせいはなつて、むかふの深林しんりんなかへとせた。
書窓しょそうから眺めると、灰色はいいろをした小雨こさめが、噴霧器ふんむきく様に、ふっ——ふっと北からなかぱらの杉の森をかすめてはすいくしきりもしぶいて通る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
が、うちもんをはひらないまへに、かれはからつぽになつた財布さいふなかつま視線しせんおもうかべながら、その出來心できごころすこ後悔こうくわいしかけてゐた。
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
麦畑むぎばたけ牧場ぼくじょうとはおおきなもりかこまれ、そのなかふか水溜みずだまりになっています。まったく、こういう田舎いなか散歩さんぽするのは愉快ゆかいことでした。
もと豊後ぶんご杵築きつきの藩士で、大阪なかしまにあった藩の蔵屋敷の定詰じょうづめであったが、御一新ごいっしん後大阪府の貫属かんぞくとなって江戸ぼりに住んでいた。
神仙河野久 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
としは二十四、仕事が面白くなりだしたときだから、女のことなどはどっちでもよかった。おさんは大茂の帳場でなかどんを勤めていた。
おさん (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
彼女かのぢよ小使部屋こづかひべやまへとほりかゝつたときおほきな炭火すみびめうあかえる薄暗うすくらなかから、子供こどもをおぶつた内儀かみさんがあわてゝこゑをかけた。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
多分たぶん被害者ひがいしゃは、くるしみもがき、金魚鉢きんぎょばちのところまでいよつてきて、くちをゆすぐか、または、はちなかみずもうとしたのだろう。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
ところで、たけなかからは、そだかたがよかつたとえて、ずん/\おほきくなつて、三月みつきばかりたつうちに一人前いちにんまへひとになりました。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
天王橋寄りが一ノ口、森田町の方がなかノ口、八幡町はちまんちょうに寄って三ノ口と三ツ門があって、米の出し入れをして、相場も此所できまる。
騙詐かたり世渡よわた上手じやうず正直しやうぢき無気力漢いくぢなし無法むはう活溌くわつぱつ謹直きんちよく愚図ぐづ泥亀すつぽんてんとんびふちをどる、さりとは不思議ふしぎづくめのなかぞかし。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
それと一しょにたきのような雨も、いきなりどうどうと降り出したのです。杜子春はこの天変のなかに、恐れもなく坐っていました。
杜子春 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
と、おもわずこえをだしたほどでした。ほこらのなかには、なんのへんてつもないいしころが、一つはいっているだけではありませんか。
「言へなければ言はなくともいゝ。けれど、これだけははつきり言つてごらん。このなかへ連れて來られる前、どこに何をしてゐたか。」
天国の記録 (旧字旧仮名) / 下村千秋(著)
垣根かきねなかンのめったばっかりに、ゆっくり見物けんぶつ出来できるはずのおせんのはだかがちらッとしきゃのぞけなかったんだ。——面白おもしろくもねえ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
いいえ、」とおかあさんがった。「わたしはむねくるしくって、がガチガチする。それでみゃくなかでは、えているようですわ。」
冷吉は氣の拔けたやうななかに再び看護婦に手を引かれて二階へ歸つた。それからまた飽き/\する長い時間が暗く續いて夕飯になつた。
赤い鳥 (旧字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
なかの杉戸の鍵に注意を向けられたり、老母の枕元の財布の位置まで観察されたりした時には、正直のところもうイケないと思った。
巡査辞職 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
さしもになかよしなりけれど正太しようたとさへにしたしまず、いつもはづかしかほのみあかめてふでやのみせ手踊てをどり活溌かつぱつさはふたゝるにかたなりける
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
おまえにもいろいろ世話せわになりました……。』こころなかでそうおもっただけでしたが、それはかならずうまにもつうじたことであろうとかんがえられます。
卯平うへい薄暗うすぐらうちなかたゞ煙草たばこかしてはおほきな眞鍮しんちう煙管きせる火鉢ひばちたゝいてた。卯平うへい勘次かんじとはあひだろくくちきかなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ここを通るは白雲しらくも眞珠船しんじゆぶね、ついそのさきを滑りゆく水枝みづえいかだ……それ、眼のしたせきの波、渦卷くもやのそのなかに、船もいかだもあらばこそ。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
やつぱり、此方こちらが思ひ出せないのだ。そのなかには、また屹度きつとあの人達と顔を合せる機会があるに違ひない。屹度機会が来るに違ひない。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
信州上田の在で、なか条村じょうむらにいるというから、それを訪ねてまいろうと心を決しまして、忠平という名の如く忠実な若党を呼びまして
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
また春日のなか若子わくごが女、老女子おみなこの郎女に娶ひて、生みませる御子、難波の王、次に桑田の王、次に春日の王、次に大俣おほまたの王四柱。
仲平はまきをおいて、徳利の酒をうまそうに飲んで寝るのであった。なか一年おいて、二十三になったとき、故郷の兄文治が死んだ。
安井夫人 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
それで、それが、小劍の多くの作品のなかに、あぢをつけるために、しばしば、出てゐて、小説をおもしろくしてゐるところがある。
「鱧の皮 他五篇」解説 (旧字旧仮名) / 宇野浩二(著)
なかあたりから谷が迫って景色がけわしく荒涼な鬼気を帯びて来る。それが上高地へ来ると実に突然になごやかな平和な景色に変化する。
雨の上高地 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
「二かいればねずみがさわぐ。うすなかはくものだらけ。かまの中はあたたかで、用心ようじんがいちばんいい。そうだ、やっぱりかまの中によう。」
山姥の話 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
猟人かりうど鸚鵡あうむがゐないので「おまへはどこへいつた」とひますと、鸚鵡あうむ子供こどものポツケツトのなかで「わたしはこ〻にゐる」とこたへました。
そして、かわにとびこんでこうぎしげようか、やぶなかにもぐりこんで、姿すがたをくらまそうか、と、とっさのあいだにかんがえたのであります。
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
どう大動搖だいどうえうはじめた。はやなかたいからである。けれどもなが密閉みつぺいせられてある岩窟がんくつ内部ないぶには、惡瓦斯あくぐわす發生はつせいしてるに相違さうゐない。
そのあいだ、頭のうちには、まあ、どんな物があったろう。夢のような何とも知れぬ苦痛の感じが、車の輪のまわるように、頭のなかに動いていた。
ところが江戸時代えどじだいになると、徳川氏とくがはし政治せいじ方針ほうしんがさうであり、またなかをさまつてたゝめか、學問がくもんさかんになつてました。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
郵便事務の暑い忙しいなかで、暑中休暇もなしに、不平も言わずに、生活している。友だちのズンズン出て行くのをうらやもうともしない。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
さうして、彼女が封を切つて、なかを讀んでゐる間、私は珈琲コーヒーを飮みつゞけてゐた(私共は朝食をとつてゐたのである)。珈琲コーヒーは熱かつた。
しかし、彼女かのじょのものの考え方には、どことなく面白おもしろいところがあったので、うちなかのつまらない仕事しごともそのために活気かっきづき、うるおいがしょうじた。
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
其の静ななかに、長屋の隅ツこの方から、トントン、カラリ……秋晴の空氣を顫はせて、はたを織る音かさも田舎びて聞えて來る。
昔の女 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
すずの(種々)御供養ごくやう送給畢おくりたびをはんぬ大風たいふうくさをなびかし、いかづちひとををどろかすやうに候。よのなかに、いかにいままで御信用候けるふしぎさよ。
部屋へやには箪笥たんすほかに、鏡台きやうだいもある。針函はりばこもある。手文庫てぶんこもある。秘密ひみつがあるとすれば、其等それらなかにもいとはしがたい。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)