じやう)” の例文
石狩いしかりの野は雲低く迷ひて車窓より眺むれば野にも山にも恐ろしき自然の力あふれ、此処に愛なくじやうなく、見るとして荒涼、寂寞
空知川の岸辺 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)
これぞくむしらせとでもいふものであらうかと、のちおもあたつたが、此時このときはたゞ離別りべつじやうさこそとおもるばかりで、わたくし打點頭うちうなづ
して、事あらはれなば一振ひとふりやいばに血を見るばかり。じやうの火花のぱつと燃えては消え失せる一刹那いつせつなの夢こそすなはち熱き此の国の人生のすべてゞあらう。
黄昏の地中海 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
愛に対する道徳の罪人は那辺なへんにか出来いできたらむ、女子はじやうのために其夫を毒殺するの要なきなり。男子は愛のために密通することを要せざるなり。
愛と婚姻 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
かの女が餘ほどじやうの籠つた時の外はおだやかに出ず、どことなく皮肉なやうな、いぢけたやうな物の云ひ振りをするのを、社會一般から見て
かれく/\午前ごぜんしばらわすれて百姓ひやくしやう活動くわつどうふたゝ目前もくぜんつけられてかくれて憤懣ふんまんじやう勃々むか/\くびもたげた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
じやうのないしぐさで、そんな風なスタイルを見せる一種のポーズが、ゆき子には、中学生のやうながんこさに見えた。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
それ羅山らざん口号こうがういはく萬葉集まんえふしふ古詩こしたり、古今集こきんしふ唐詩たうしたり、伊勢物語いせものがたり変風へんぷうじやうはつするににせたり、源氏物語げんじものがたり荘子さうし天台てんだいしよたりとあり。
落語の濫觴 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
敵をころしたる時復讐ふくしうの意を以て其肉を食ふとか、親戚しんせきの死したる時敬慕けいぼじやうを表す爲其肉を食ふとか、幾分いくぶんかの制限せいげんは何れの塲合にも存在そんざいするものなり。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
れでわたくし反應はんおうしてゐます。すなはち疼痛とうつうたいしては、絶※ぜつけうと、なんだとをもつこたへ、虚僞きよぎたいしては憤懣ふんまんもつて、陋劣ろうれつたいしては厭惡えんをじやうもつこたへてゐるです。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
病身の、じやうぶかい母親の看病もする。三造は物が叮寧である、叮寧すぎさへする。あゝ、三造は叮寧である。
青年青木三造 (新字旧仮名) / 中原中也(著)
をとこ自分じぶんのかたる浄瑠璃じやうるりに、さもじやうがうつったやうな身振みぶりをして人形にんぎやうをつかつてゐました。
桜さく島:見知らぬ世界 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
つひかんためにして、しんめにせず、(一一六)ひとじやうなりいまわうもちひず、ひさしくとどめてこれかへさば、みづかうれひのこなり(一一七)過法くわはふもつこれちうするにかず
だんだん馴れて来たせゐもあるんだけど、そん時の眼なんか、あたしたち女にさへ真似まねのできないやうな、優しいつていふのか、じやうの籠つたつていふのか、まあ、そんな眼だわね。
モノロオグ (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
鳴く蝉よりも鳴かぬ螢の身を焦すもあるに、聲なき哀れの深さにくらぶれば、仇浪あだなみ立てる此胸の淺瀬は物のかずならず。そもや心なき草も春に遇へば笑ひ、じやうなき蟲も秋に感ずれば鳴く。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
出たぎりかう便たよりもないゆゑ私しも兄弟きやうだいじやうにて今頃は何國いづくに何をして居けるやら行當り爲撥ばつたりしにはせぬかなどと案じて見たが其後三年ばかり立と不※ふと讃岐さぬきの丸龜より書状しよじやうが屆いたゆゑ夫を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
涙なくてはじやうもなかるらむ。涙なくては誠もなかるらむ。狂ひに狂ひしバイロンには涙も細繩ほどの役にも立ざりしなるべけれど、世間おほかたのものを繋ぎ止むるはこの宝なるべし。
山庵雑記 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
ゐない時は、やさしく、はにかんでゐるかと思ふと、なぜと云ふこともなく度々陰気な物案じに陥いる。ドルフが出てさへ来れば、じやうのある口の両脇に二本の𧞃ひだが出来て、上唇を上へ弔り上げる。
なき御身おんみあはれやとのじやうやう/\ちやうじては、一人ひとりをばあましたたのもしびとにして、一にも松野まつの二にも松野まつのと、だてなく遠慮ゑんりよなくあまへもしつ㑃強すねもしつ、むつれよるこゝろあいらしさよとおもひしが
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
それにあのじやうの薄く我儘な私と三つ違いの異母姉ねえさんも可哀かはいい姿で踊つた。五歳いつつ六歳むつつの私もまた引き入れられて、眞白に白粉を塗り、派出はでなきものをつけて、何がなしに小さい手をひらいて踊つた。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
じやうの上の感じをさせるやうにもなる。
妄想 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
着代きかへをすゝむるじやう素振そぶりよ。
焔の后 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
とざせる胸にじやうのたかまり
展望 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
じやうをいつはること知りぬ
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
神よじやうある人の子に
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
じやう立てましよと
雨情民謡百篇 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
ほこらちかところ少年せうねんそうあり。かね聰明そうめいをもつてきこゆ。含春がんしゆん姿すがたて、愛戀あいれんじやうへず、柳氏りうしせい呪願じゆぐわんして、ひそか帝祠ていしたてまつる。ことばいは
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かれ與吉よきち無意識むいしき告口つげぐちからひどかなしく果敢はかなくなつてあとひとりいた。憤怒ふんぬじやうもやすのにはかれあまりつかれてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
高価な時計を買つたりしてゐる富岡の心沙汰が、じやうの薄いものに思はれてきた。林檎をむいて富岡が半分くれた。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
ぼくこの少女せうぢよおもすとともに『こひしい』、『たい』、『ひたい』のじやうがむら/\とこみげてた。きみなんはうとも實際じつさいさうであつたから仕方しかたがない。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
いくら惡人あくにんでも、親子おやこじやうはまた格別かくべつへ、正直しやうじきなる亞尼アンニーは「一寸ちよつとで。」とそのをば、其邊そのへんちいさい料理屋れうりやれてつて、自分じぶんさびしい財嚢さいふかたむけて
其夜そのよ慙恨ざんこんじやうられて、一すゐだもず、翌朝よくてうつひけつして、局長きよくちやうところへとわび出掛でかける。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
退しりぞおくへ至り偖斯々と夫婦にはなせば二人は息子せがれ孝心かうしんめ又忠兵衞をねぎらひて明日あすの支度にかくと心をらうすは世の中のすべての親のじやう成可し斯て其翌日に成しかばあさより辨當べんたうなど製造こしらへて之を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
必然ひつぜんあく」を解釋かいしやくして遊歩塲いうほぢやう一少女いつせうぢよ點出てんしゆつしかの癖漢へきかん正義せいぎ狂欲きやうよくするじやうえがき、あるひ故郷こきやうにありしときのあたゝかきゆめせしめ、生活せいくわつ苦戰塲くせんぢやうりて朋友はうゆう一身いつしんだんずるところあり。
罪と罰(内田不知庵訳) (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
花のもとの半日のかく、月の前の一夜の友も、名殘は惜しまるゝ習ひなるに、一向所感の身なれば、先の世の法縁も淺からず思はれ、流石さすがの瀧口、かぎりなき感慨むねあふれて、轉〻うたゝ今昔こんじやくじやうに堪へず。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
あは手向てむけはなに千ねんのちぎり萬年まんねんじやうをつくして、れにみさをはひとりずみ、あたら美形びけい月花つきはなにそむけて、何時いつぞともらずがほに、るや珠數じゆずかれては御佛みほとけ輪廻りんゑにまよひぬべし
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
しかれども(二五)しよしよくつらね、ことじやうるゐし、もつ(二六)じゆぼく剽剥へうはくす。當世たうせい(二七)宿學しゆくがくいへど(二八)みづか解免かいめんすることあたはざるなり 其言そのげん(二九)洸洋自恣くわうやうじしもつおのれかなふ。
半日はんにち散策さんさく神祇しんぎあり、釋教しやくけうあり、こひあり、無常むじやうあり、けいあり、ひとあり、したがうてまたじやうあり、ぜにすくなきをいかにせむ。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
勘次かんじ羞恥しうち恐怖きようふ憤懣ふんまんとのじやうわかしたがそれでも薄弱はくじやくかれは、それをひがんだ表現へうげんしてひとごと同情どうじやうしてくれとふるがごとえるのみであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ちかひ形式けいしきです。けれど愛國あいこくじやうふかきみは、あやまつてもこの秘密ひみつをば、無用むようひともらたまふな。』
しかし、ぼくけつしてさういふ輕薄けいはくこゝろもつふのではないのです。諸君しよくんうちぼくおなじく大島小學校おほしませうがくかうられたかたあつたなら、矢張やはりぼくおなじやうなじやうもたれるだらうとしんじます。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
このみて相應に打けるゆゑ折々をり/\は重四郎をの相手となせしを以て重四郎は猶も繁々しげ/\出入なし居しが偶然ふと娘お浪の容貌みめかたちうつくしきを見初みそめしより戀慕れんぼじやう止難やみがたく獨りむねこがせしがいつそ我が思ひのたけ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
見捨みすてゝじやうなしがおまへきかあはれといへば深山みやまがくれのはなこゝろさぞかしとさつしられるにもられずひとにもられずさきるが本意ほんいであらうかおなあらしさそはれてもおもひと宿やどきておもひとおもはれたらるともうらみはるまいもの谷間たにまみづ便たよりがなくは
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
丹後行たんごゆき舞鶴行まひづるゆき——つてたばかりでも、退屈たいくつあまりに新聞しんぶんうらかへして、バンクバー、シヤトルゆきにらむがごとき、じやうのない、他人たにんらしいものではない。
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
しかりつけられて我知われしらずあとじさりする意氣地いくぢなさまだしもこほる夜嵐よあらし辻待つじまち提燈ちやうちんえかへるまであんじらるゝは二親ふたおやのことなりれぬ貧苦ひんくめらるゝと懷舊くわいきうじやうのやるかたなさとが老體らうたいどくになりてやなみだがちにおなじやうなわづらかたそれも御尤ごもつともなりわれさへ無念むねんはらわたをさまらぬものを
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
さて、よしきりだが、あのおしやべりのなかに、もいはれない、さびしいじやうこもつたのがうれしい。いふまでもなく番町邊ばんちやうあたりでは、あこがれるかへるさへかれない。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ことあつてのちにして、前兆ぜんてうかたるのは、六日むいか菖蒲あやめだけれども、そこに、あきらめがあり、一種いつしゆのなつかしみがあり、深切しんせつがある。あはれさ、はかなさのじやうふくむ。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「あれ、じやうこはいねえ、さあ、えゝ、ま、せてるくせに。」とむかうへいた、をとこいたしたへ、片袖かたそでかせると、まくれたしろうでを、ひざすがつて、おりうほつ呼吸いき
三尺角拾遺:(木精) (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
かつまたおな一國一城いつこくいちじやうあるじるにも猛者もさ夜撃朝懸ようちあさがけとはたちちがふ。色男いろをとここなしは、じやうふくんで、しめやかに、ものやさしく、にしみ/″\としたふう天晴武者振あつぱれむしやぶりであるのである。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
たとひこれが閨秀けいしうたるの説明をなしたるのちも、吾人一片のじやうを動かすを得ざるなり。婦人といへどもまた然らむ。卿等けいらは描きたる醜悪の姉妹に対して、よく同情を表し得るか。恐らくは得ざるべし。
醜婦を呵す (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)