トップ
>
情
>
じょう
ふりがな文庫
“
情
(
じょう
)” の例文
しかしその
間
(
ま
)
も出来る事なら、生みの親に会わせてやりたいと云うのが、
豪傑
(
ごうけつ
)
じみていても
情
(
じょう
)
に
脆
(
もろ
)
い日錚和尚の腹だったのでしょう。
捨児
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
少しは邪推の
悋気
(
りんき
)
萌
(
きざ
)
すも我を忘れられしより子を忘れられし所には起る事、正しき女にも切なき
情
(
じょう
)
なるに、天道怪しくも
是
(
これ
)
を恵まず。
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
「そうか、咲いたか。……今朝も
箒
(
ほうき
)
を持って掃いたに、気がつかなんだ。花も、武骨者の軒に咲いては、
情
(
じょう
)
なしよと、
無情
(
つれな
)
かろうな」
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「
牛女
(
うしおんな
)
が、こうもりになってきて、
子供
(
こども
)
の
身
(
み
)
の
上
(
うえ
)
を
守
(
まも
)
るんだ。」と、そのやさしい、
情
(
じょう
)
の
深
(
ふか
)
い、
心根
(
こころね
)
を
哀
(
あわ
)
れに
思
(
おも
)
ったのであります。
牛女
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
心と心とが戦い、
情
(
じょう
)
と意とが争い、理想と欲望とがからみ合う間にも、
体
(
からだ
)
はある大きな力に引きずられるように先へ先へと進んだ。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
▼ もっと見る
そのかわりに
壮
(
わか
)
い
和尚
(
おしょう
)
に頼んで手紙を夫人の
許
(
もと
)
へ送り、その返書を得て朝晩にそれを読みながら、
僅
(
わず
)
かに
恋恋
(
れんれん
)
の
情
(
じょう
)
を慰めていた。
悪僧
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
男「スリルだね。閨房の蜜語が
忽
(
たちま
)
ちにして恐怖となる。君はその時、あの男の目の中に、深い
憐愍
(
れんびん
)
の
情
(
じょう
)
を読みとったのだったね」
断崖
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
「え、ほんとうに。」と、答えたが、何だか
情
(
じょう
)
を迎えるような調子であったことに気がつき、自分一人で羞かしくなり、頬が熱くなった。
貞操問答
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
まアねえ二拾両も遣って長襦袢でも買えと云えば、気の毒なと云って嬉しいと思って、又お
前
(
ま
)
はんに前より
情
(
じょう
)
の増す事が有るかも知れませんよ
敵討札所の霊験
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
しかしあれは
情
(
じょう
)
三
分芸
(
ぶげい
)
七分で見せるわざだ。我らが能から
享
(
う
)
けるありがた味は下界の人情をよくそのままに写す
手際
(
てぎわ
)
から出てくるのではない。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「風は金波を揺がして遠く声あり、船頭、
何
(
いずく
)
ンぞ耐えん今夜の
情
(
じょう
)
か、オイ、
戸外
(
そと
)
へ行くと、怖いことがあるぜえ、承知かア」
湖畔
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
彼は
唯
(
ただ
)
自己
(
おのれ
)
の
情
(
じょう
)
の動くがままに働くのである。彼がお葉を嫁に貰いたいと云い出したのも、決して不思議でも無理でもない。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
奥畑自身の小遣いに化けたものもあるが、大部分が妙子の手に渡ったことは確かと見てよく、妙子はそれらを
情
(
じょう
)
を知って受け取ったのみならず
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
たとい教えのある人でも、どうせ死ななくてはならぬものなら、あの苦しみを長くさせておかずに、早く死なせてやりたいという
情
(
じょう
)
は必ず起こる。
高瀬舟縁起
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
主人の
口占
(
くちうら
)
から、あらまし以上のような推察がついた今となっては、客も
無下
(
むげ
)
に
情
(
じょう
)
を
強
(
こわ
)
くしている訳にも行かない。
雪の宿り
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
天候
情
(
じょう
)
なくこの日また雨となった。舟で高架鉄道の土堤へ漕ぎつけ、高架線の橋上を両国に出ようというのである。
水害雑録
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
一つずつ手をかけて、垂れをはぐって行こうとするから、
情
(
じょう
)
に打たれてボンヤリ見ていたお絃が、あわてて止めた。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
妹の
情
(
じょう
)
にほだされて、せっかくかたった仲間や同志をむざむざ裏切ることもならず、乗りかかった船突っ切ったものの
可哀
(
かわい
)
そうなことをしてしもうた。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
短篇集
(
たんぺんしゅう
)
を四冊出しています。尤も「
可哀
(
かわい
)
い神様の事」という方は、切れていて続いているような話です。あどけない、無邪気な、そして
情
(
じょう
)
の深い作です。
家常茶飯 附・現代思想
(新字新仮名)
/
ライネル・マリア・リルケ
(著)
それで
私
(
わたくし
)
は
反応
(
はんのう
)
しています。
即
(
すなわち
)
疼痛
(
とうつう
)
に
対
(
たい
)
しては、
絶呌
(
ぜっきょう
)
と、
涙
(
なみだ
)
とを
以
(
もっ
)
て
答
(
こた
)
え、
虚偽
(
きょぎ
)
に
対
(
たい
)
しては
憤懣
(
ふんまん
)
を
以
(
もっ
)
て、
陋劣
(
ろうれつ
)
に
対
(
たい
)
しては
厭悪
(
えんお
)
の
情
(
じょう
)
を
以
(
もっ
)
て
答
(
こた
)
えているです。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
「エッ、そのお子さん、お亡くなんなすったかえ——こう言うんだ。でなきゃ、言葉に
情
(
じょう
)
ってものがねえや」
寄席
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
わたくしの耳にはこの「三月になるわネエ。」と少し引延ばしたネエの声が何やら遠いむかしを思返すとでも云うように無限の
情
(
じょう
)
を含んだように聞きなされた。
濹東綺譚
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
持って生れた
縹緻美
(
きりょうよ
)
しと
伝法肌
(
でんぽうはだ
)
から、
矢鱈
(
やたら
)
に身を持崩していたのを、持て余した親御さんと世話人が、
情
(
じょう
)
を明かして等々力の若親分に世話を頼んだものだそうですが
二重心臓
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「あれ、
情
(
じょう
)
が
強
(
こわ
)
いねえ、さあ、ええ、ま、
痩
(
や
)
せてる
癖
(
くせ
)
に。」と
向
(
むこ
)
うへ突いた、男の身が浮いた下へ、片袖を敷かせると、まくれた白い腕を、
膝
(
ひざ
)
に
縋
(
すが
)
って、お柳は
吻
(
ほっ
)
と
呼吸
(
いき
)
。
木精(三尺角拾遺)
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
こんな
稼業
(
かぎょう
)
をしてるんだから、いつまでも——一生その人に
情
(
じょう
)
を立ッて、一人でいることは出来ないけれども、平田さんを善さんと一しょにおしでは、お前さん済むまいよ。
今戸心中
(新字新仮名)
/
広津柳浪
(著)
実験室とはいえ自邸の
一隅
(
いちぐう
)
にとどめることの出来るのは何となく気強いことだったし、食事についても、何くれとなく
情
(
じょう
)
の
籠
(
こも
)
った手料理などをすすめることが出来ることを考えて
振動魔
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
しげ そうよ、涙あこぼしている暇も無えずらよ! お前はそうた
情
(
じょう
)
無しだあ。
鈴が通る
(新字新仮名)
/
三好十郎
(著)
「私は必要のないことを
情
(
じょう
)
にまかせてしゃべるような人間ではございません」
樅ノ木は残った:01 第一部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
私はそんな犬振りで
情
(
じょう
)
を二三にするような、そんな軽薄な心は
聊
(
いささ
)
かも無い。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
立っていた春吉君は、そのとき、いい知れぬ
羞恥
(
しゅうち
)
の
情
(
じょう
)
にかられた。
屁
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
「
情
(
じょう
)
なしのいじわるなエゴイスト!」とドゥーニャは叫んだ。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
自然な
情
(
じょう
)
に結ばれた平穏無事な親と子になっている。
一つ身の着物
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
夫婦の
情
(
じょう
)
親馬鹿入堂記
(新字新仮名)
/
尾崎士郎
(著)
彼には父が違っている、——しかしそのために洋一は、一度でも兄に対する
情
(
じょう
)
が、世間普通の兄弟に変っていると思った事はなかった。
お律と子等と
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
中二階の悲痛な声を耳にすると、大事の前の小事と、心を鬼にしてきた弦之丞も、かれを残して去ることは
情
(
じょう
)
においてしのびなくなった。
鳴門秘帖:04 船路の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
卒然として
此
(
この
)
書
(
しょ
)
のみを読めば、王に理ありて帝に理なく、帝に
情
(
じょう
)
無くして王に情あるが如く、祖霊も民意も、帝を去り王に就く
可
(
べ
)
きを覚ゆ。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
「あれは、私の相手を勤めた婦人は、井上次郎の細君だったのか」そして、云い難き
悔恨
(
かいこん
)
の
情
(
じょう
)
が、私の心臓をうつろにするかと
怪
(
あやし
)
まれました。
覆面の舞踏者
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
肉の足らぬ
細面
(
ほそおもて
)
に予期の
情
(
じょう
)
を
漲
(
みなぎ
)
らして、重きに過ぐる唇の、
奇
(
き
)
か
偶
(
ぐう
)
かを疑がいつつも、
手答
(
てごたえ
)
のあれかしと念ずる様子である。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「やい、勘作さん、おまえさんのような
情
(
じょう
)
なしがどこにある、おまえさんはなんの
怨
(
うらみ
)
があって、私の仕事の邪魔をした」
ある神主の話
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
おじいさんは、それらの
文字
(
もじ
)
ににじむ、
親思
(
おやおも
)
いの
情
(
じょう
)
をうれしく、ありがたく
感
(
かん
)
じ、
手紙
(
てがみ
)
をいただくようにして、また
仏壇
(
ぶつだん
)
のひきだしへしまいました。
とうげの茶屋
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
主人の
口占
(
くちうら
)
から、あらまし以上のやうな推察がついた今となつては、客も
無下
(
むげ
)
に
情
(
じょう
)
を
強
(
こわ
)
くしてゐる訳にも行かない。
雪の宿り
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
それにわたくしはしゃみせんの曲をかんがえまして、文句のあいだにおもしろい合いの手などをくわえて、いちだんと
情
(
じょう
)
のふかいものにいたしました。
盲目物語
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
と勧められ、くよ/\して客を取る気もなく
情
(
じょう
)
のある様な
振
(
ふり
)
をするも
外見
(
みえ
)
かは知れませんが、皆来ては
悔
(
くや
)
みを云う。
敵討札所の霊験
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「あああ、子供でさえも、思う人のことを、あんなに、夢にまで口に出すのに……ほんとににくらしい
情
(
じょう
)
なしだ」
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
かれは日記に「荻生君はわが
情
(
じょう
)
の友なり、利害、道義もってこの間を
犯
(
おか
)
し破るべからず」と書いた。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
情
(
じょう
)
のいたるところ、いかんとも忍びがたし……さぁ、どうでもしろというわけで、意気込みときたら、すばらしいもんだった……戦争をしている国の国民の一人として
春雪
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
その
夜
(
よ
)
は
慙恨
(
ざんこん
)
の
情
(
じょう
)
に
駆
(
か
)
られて、一
睡
(
すい
)
だもせず、
翌朝
(
よくちょう
)
遂
(
つい
)
に
意
(
い
)
を
决
(
けっ
)
して、
局長
(
きょくちょう
)
の
所
(
ところ
)
へと
詑
(
わび
)
に
出掛
(
でかけ
)
る。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
大木のほうでも矢野が
頭脳
(
あたま
)
のよいばかりでなく、性質が清くて
情
(
じょう
)
に富んでるのを愛している。
廃める
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
われわれは
市
(
いち
)
ヶ
谷
(
や
)
外濠
(
そとぼり
)
の埋立工事を見て、いかにするとも将来の新美観を予測することの出来ない限り、
愛惜
(
あいせき
)
の
情
(
じょう
)
は自ら人をしてこの堀に
藕花
(
ぐうか
)
の
馥郁
(
ふくいく
)
とした昔を思わしめる。
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
(お前さんが
情
(
じょう
)
を立てているほど、お艶ちゃんのほうでも情を立ててくれているのかい)
寄席
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
“情(
感情
)”の解説
感情(かんじょう)とは、ヒトなどの動物がものごとや対象に対して抱く気持ちのこと。喜び、悲しみ、怒り、諦め、驚き、嫌悪、恐怖などがある(感情の一覧)。
(出典:Wikipedia)
情
常用漢字
小5
部首:⼼
11画
“情”を含む語句
情人
情夫
無情
強情
事情
情緒
情婦
感情
表情
愛情
心情
同情
情無
情事
人情
性情
熱情
情合
情死
真情
...