分明あきらか)” の例文
見おろす町にからころと駒下駄の音さして行かふ人のかげ分明あきらかなり、結城さんと呼ぶに、何だとて傍へゆけば、まあ此處へお座りなさいと手を取りて、あの水菓子屋で桃を買ふ子がござんしよ
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
殺害に及びしなどとはゆめにも知らぬ無實むじつの難にて入牢なし其事故の分明あきらかわからぬ内に情無なさけなくも牢死に及びける故遂に死人に口なしとて悉皆こと/″\く長庵の佞辯ねいべんにより種々いろ/\言廻いひまはされをつと道十郎の罪科ざいくわとは定まりし事無念骨髓こつずゐとほり女ながらも再度ふたゝびねがひを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
おろすまちにからころと駒下駄こまげたおとさしてゆきかふひとのかげ分明あきらかなり、結城ゆふきさんとぶに、なんだとてそばへゆけば、まあ此處こゝへおすはりなさいとりて、あの水菓子屋みづぐわしやもゝがござんしよ
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
まをすまいと思ふ時はどうしても嫌やでござんすとて、ついと立つてえんがはへいづるに、雲なき空の月かげ涼しく、見おろす町にからころと駒下駄こまげたの音さしてゆきかふ人のかげ分明あきらかなり、結城さんと呼ぶに
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)