“はっきり”のいろいろな漢字の書き方と例文
語句割合
判然58.4%
明瞭18.7%
瞭然5.1%
分明3.9%
判明3.5%
明白3.1%
明確1.6%
判切1.2%
瞭乎0.8%
確然0.8%
(他:8)2.9%
(注)作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
しかし叔父の使った文句の意味は、頭の発達しない当時よく解らなかったと同じように、今になっても判然はっきりしなかった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
長「へい……まア左様そういう次第ではございますが、幸兵衛という人は本当の親か義理の親か未だ判然はっきり分りません」
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それなので、いよいよ明瞭はっきりとここで、あのプロヴィンシヤ人の物々しい鬼影を認めなければならなくなってしまったのだ。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
何をいっているのか、坂口にはよく聴取れないが、明瞭はっきりした愛蘭アイリッシュ訛で、折々口ぎたない言葉を吐いていた。
P丘の殺人事件 (新字新仮名) / 松本泰(著)
いくら考えても考え直してみても記憶と記憶との間に一カ所大きな穴があって、そこのところがどうしても瞭然はっきりとしない。
六月 (新字新仮名) / 相馬泰三(著)
そして、それを不思議だと思っているうちに、幽霊は再び元の姿になるのであった、元のように瞭然はっきりとして鮮明な元の姿に。
しかし養父のその考えが、段々分明はっきりして来たとき、お島の心は、おのずから生みの親の家の方へいていった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
その日も養父は、使い道の分明はっきりしないような金のことについて、昼頃からおとらとの間に紛紜いざこざ惹起ひきおこしていた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
健三の眼を落しているあたりは、夜具の縞柄しまがらさえ判明はっきりしないぼんやりした陰で一面につつまれていた。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
爪さきが薄く白いというのか、もすそつますそが、瑠璃るり、青、あかだのという心か、その辺が判明はっきりいたしません。
半島一奇抄 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ロレ はて、明白はっきり素直すなほ被言おッしゃれ。懺悔ざんげなぞのやうであると、赦免みゆるしなぞのやうなことにならう。
ロミオ されば明白はっきりはうが、わしはカピューレットのあのうつくしいむすめまた戀人こひゞとめてしまうた。
お鶴も柳屋の娘も私にはただ娘であったとばかりでその年ごろを明確はっきりと言うことは思いも及ばないことに属している。
山の手の子 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
結局倍音についての法水の推断は、明確はっきりと人間思惟創造の限界を劃したに止まっていた。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
外套がいとう判切はっきり霜降しもふりとは見分けられなかったが、帽子と同じ暗い光を敬太郎のひとみに投げた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
年の若い彼の眼には、人間という大きな世界があまり判切はっきり分らない代りに、男女という小さな宇宙はかくあざやかに映った。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その声の中には、斉彬の、死の覚悟が、瞭乎はっきりとしていたし、死の影さえ、含まれているように感じられるものであった。
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
そして自分の部屋へ這入ると初めて先刻の影が或るかすかな物音を引いていたことを瞭乎はっきりと思い出した。
三階の家 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
従って、それ程頻繁に自動車の通る途ではないから、其処の路上に、残雪に濡れて確然はっきりと印された新しい車輪タイヤの跡を発見することは、比較的容易な仕事だった。
双面獣 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
しかしそれは確然はっきり覚えていない。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
⦆それは昨年の二月、日は判乎はっきりと記憶にはありませんが、何でも私の書いた原稿がM雑誌社に売れてたんまり稿料の這入った月初めの夜の事でありました。
陳情書 (新字新仮名) / 西尾正(著)
其の家は、——判乎はっきり記憶には在りませんが、其の貧相な路次の中では異彩を放つ粋な小造りの二階家で、男が硝子格子に口を押し付ける程近寄せて、今晩は、と声を懸けると、内部からはいと答える四十女らしい者の婀娜あだめいた声が聞えて来
陳情書 (新字新仮名) / 西尾正(著)
さかのぼって当時の事を憶出してみれば、初めおぼろのがすえ明亮はっきりとなって
婆さんはしばらく手をひざの上にせて、何事も云わずに古いぜにおもてをじっと注意していたが、やがて考えの中心点が明快はっきりまとまったという様子をして、「あなたは今迷っていらっしゃる」と云い切ったなり敬太郎けいたろうの顔を見た。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
二つ折れに屈んで地面をしらべると、井戸の縁に片足かけて刀に滴る血潮を振りさばいたものとみえて、どす黒い点が土の上を一列に走ってもよりの油障子の腰板へ跳ねて、障子の把手にも歴然はっきりと血の手形が付いていた。
「どうも今度の病気は爽快はっきりせん」という声さえ衰えて沈んでいる。
富岡先生 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
この世でなければ見る事の出来ない明瞭な程度と、これに伴う爽涼はっきりした快感をもって、他界の幻影まぼろしに接したと同様の心持になったのである。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
うちへ帰って、のっそりしている時ですら、この問題を確的はっきり眼の前にえがいて明らかにそれをながめる事をはばかった。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
これまであなた様はただの一度も寂しく暮らしている妾達をお訪ねくださらないではございませぬか。ですもの妾はあなた様のことを人情のない怖らしい、意地の悪いお方に相違ないと思っていたのでございます。——でもこうしてお目にかかり、しみじみお話しいたしました今は、妾の考えておりましたことが間違いであったということを鮮明はっきり知る事が出来ました。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)