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判然
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はっきり
ふりがな文庫
“
判然
(
はっきり
)” の例文
ゴウという凄じい音の時には、それに
消圧
(
けお
)
されて聞えぬが、スウという溜息のような音になると、其が
判然
(
はっきり
)
と手に取るように聞える。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
「品物なら
判然
(
はっきり
)
そう解釈もできるのですが、不幸にも御礼が普通営業的の
売買
(
ばいばい
)
に使用する金なのですから、どっちとも取れるのです」
硝子戸の中
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
露骨に
遣
(
や
)
ったら、邪魔をする
勿
(
なかれ
)
であるから、御懸念無用と、男らしく
判然
(
はっきり
)
答えたは可いけれども、要するに釘を刺されたのであった。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
もっと
活々
(
いきいき
)
した美少年が、二枚折の蔭から半身を出して、桜子の寝姿を、いとも惚々と眺めて居るのだということが
判然
(
はっきり
)
わかりました。
新奇談クラブ:03 第三夜 お化け若衆
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
その申し立ての真偽がまだ
判然
(
はっきり
)
しないので、ひと先ずおぎんを門番所へ連れて行って、取り逃がさないように監視を申し付けて置いた。
半七捕物帳:65 夜叉神堂
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
▼ もっと見る
「こんなに大勢の子供と年寄を預かっていて、あなたの居所が
判然
(
はっきり
)
と分らないような御旅行なら、私はお留守番は御免蒙りますよ」
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
曲る時一寸此方に振りむいたらしい。しかしそれも
判然
(
はっきり
)
しなかった。宇治はふしぎな表情を浮べたまま、じっとそこに立っていた。
日の果て
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
が、軈て船員達や出迎えに来てくれた同僚の顔が段々
判然
(
はっきり
)
と見えてきて意識を回復すると、急いで胴中に手をやった。そして愕然とした。
妖影
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
今考えているような
判然
(
はっきり
)
とした気持ちをもってではないが、私はそれを、何となく物足らない寂しいことと感じないではいられなかった。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
幾十里隔てて、橋本の姉と同じ国に来ているような気がしない、と夫は言ったが、お雪にはまだその方角さえも
判然
(
はっきり
)
しなかった。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
と
慌
(
あわ
)
てゝ手探りに枕元にある小さな
鋼鉄
(
くろがね
)
の
如意
(
にょい
)
を取って
透
(
すか
)
して見ると、
判然
(
はっきり
)
は分りませんが、
頬被
(
ほうかぶ
)
りをした奴が上へ
乗
(
の
)
しかゝっている様子。
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
判然
(
はっきり
)
したことはもう覚えてもいなかったが、ちょうどその時分が結婚後間もなく胸の病を発してきた妻が、鎌倉の病院で亡ったばかりの頃で
逗子物語
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
「ブレインさんは食堂の方で葉巻をもう終りかけておられる頃だろうし、オブリアン司令官は温室を散歩しておいでだろう。
判然
(
はっきり
)
は解らんが」
秘密の庭
(新字新仮名)
/
ギルバート・キース・チェスタートン
(著)
軈
(
やが
)
て自分の才能や感覚に
判然
(
はっきり
)
した見極めがついて何の特異さも認め難い時がくるとこれくらゐ興ざめた、落莫とした人生も類ひ稀なやうである。
蝉:――あるミザントロープの話――
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
そして自分の佇んでゐる所が元の邸のどの辺に当るかといふ事を
判然
(
はっきり
)
知る事が出来るのだった。そこが流し元だった。一段上ると上台所だった。
夏蚕時
(新字旧仮名)
/
金田千鶴
(著)
コバルト色の山が、空と一つに融ければとて、雪の一角は、
判然
(
はっきり
)
と浮び上る、碧水の底から、一片の石英が光るように。
雪の白峰
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
それから、気味が悪いなと思いながら、
依然
(
やっぱり
)
釣
(
つり
)
をしていると、それが、一度消えてなくなってしまって、今度は
判然
(
はっきり
)
と水の上へ現われたそうです。
夜釣の怪
(新字新仮名)
/
池田輝方
(著)
しかし、
痩
(
やせ
)
蛙に負けるなと云った一茶の様な、ねじけた心持でなかった事
丈
(
だ
)
けは
判然
(
はっきり
)
云える。澤田正二郎が、蛙をマークとした意味とも全く違う。
解説 趣味を通じての先生
(新字新仮名)
/
額田六福
(著)
それきり私はすッと
四辺
(
あたり
)
が暗くなって深い深い
谿
(
たに
)
へ落ちてゆくように感じましたが、その後は誰が何を云ったのやら、
判然
(
はっきり
)
とおぼえて居りません。
流転
(新字新仮名)
/
山下利三郎
(著)
その理由は
判然
(
はっきり
)
しないが、もちろん確たる反証があるわけではなく、ただ漠然たる感じとして、三津子を犯人に択ぶには物足りなさがあったのである。
地獄の使者
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「どうも、
仰言
(
おっしゃ
)
る言葉が
判然
(
はっきり
)
と
嚥
(
の
)
み込めませんが、しかし、結局あの遺言書の内容が、なんだと云われるんです?」
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
古来一流の作家のものは作因が
判然
(
はっきり
)
していて、その実感が強く、従ってそこに或る動かし難い自信を持っている。
自信の無さ
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
特に何者であるということが
判然
(
はっきり
)
しないが、変な気がしてあたりをぐるぐる見廻した。なまこ色の壁と、障子と、床の間の小さな
香爐
(
こうろ
)
とが目にはいった。
香爐を盗む
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
増賀上人の遥に遠い東の山には仔細らしい碁盤や
滑稽
(
こっけい
)
な
胡蝶
(
こちょう
)
舞、そんな無邪気なものが
判然
(
はっきり
)
と見えたのであろう。
連環記
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
東北には相違ないのですが、果たしてどこかということは
判然
(
はっきり
)
しませんけれども、私は福島地方だと思います。
文学に現れたる東北地方の地方色:(仙台放送局放送原稿)
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
自殺をする奴等は、きっとこんな風に坐って、最後の
願望
(
ねがい
)
を書き遺すにちがいない。そのときの心持はどんなだろう。おれは
判然
(
はっきり
)
とわかるような気がする。
ピストルの蠱惑
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
しかし、此のジュッド医師の話しを聴いていると、何となく、追いおい事件の輪廓が
判然
(
はっきり
)
して来るのである。
アリゾナの女虎
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
家の人たちも省作の心は
判然
(
はっきり
)
とはわからないが、もう働いたらよかろうともえ言わないで好きにさしておく。
春の潮
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
時刻の
判然
(
はっきり
)
しないのには困りますネ、西洋では五分の違いで有罪と無罪と分れたという実例もありますが、左様は我国では参りませんネ、
曾
(
まえ
)
に一高の教授が
越後獅子
(新字新仮名)
/
羽志主水
(著)
薄暗いランプの蔭に隠れて
判然
(
はっきり
)
解
(
わか
)
らなかったが、ランプを置いた小汚ない本箱の外には装飾らしい装飾は一つもなく、粗末な卓子に附属する椅子さえなくして
二葉亭余談
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
それが、滑ったことを書かねばいられないという気持か、小説を書くことによってこの自己を語らないではいられないという気持か、自分には
判然
(
はっきり
)
しなかった。
路上
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
苦心して見つけ、手を労して写した古画など、二十年、三十年のものでも、
判然
(
はっきり
)
と今も目に浮かびます。
画筆に生きる五十年:――皇太后陛下御下命画に二十一年間の精進をこめて上納――
(新字新仮名)
/
上村松園
(著)
眼前
(
めのさき
)
にまざまざと今日の事が浮んで来る、見下した旦那の顔が
判然
(
はっきり
)
出て来る、そしてテレ隠しに炭を手玉に取った時のことを思うと顔から火が出るように感じた。
竹の木戸
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
いや。まだ
判然
(
はっきり
)
しませぬ。ただこれは今の東作老人の初対面の印象を、医学上から来た一つの仮想を
S岬西洋婦人絞殺事件
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
しばらくそのままにして居る傍から、どうぞ御近日と今日は「どうぞ」を
判然
(
はっきり
)
云われて、それを汐に立って婢があなたと呼んだは、その
剰銭
(
つり
)
を請取へ包んで呉れたので
油地獄
(新字新仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
文科の私がいつから此の法科の二人と懇意になったのか
判然
(
はっきり
)
しないが、恐らく高等学校の二年時分の事らしい。何でも杉が私の手に握って居る五十銭銀貨を横眼で睨んで
The Affair of Two Watches
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
が、彼女が女性であることは、他の独身の男などの家へ取立てにゆくばあい
判然
(
はっきり
)
するのである。
長屋天一坊
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
その時、その妙善の
梵妻
(
だいこく
)
が、お茶を持って入って来たんです。で、
左
(
と
)
に
右
(
かく
)
夫妻
(
ふたり
)
とも
判然
(
はっきり
)
見た。
□本居士
(新字新仮名)
/
本田親二
(著)
瑠璃子は、
昏睡
(
こんすい
)
から覚める度に、美奈子の耳許近く、同一の問を繰返していた。が、その人は容易に、来なかった。電報が運よく届いているかどうかさえ、
判然
(
はっきり
)
しなかった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
「ふるさとよ、美しい土地よ。この世の光をそこで初めて私が見たその国は、私の眼前に浮かんで常に美しく
判然
(
はっきり
)
と見えている——私がそこを立ちいでた日の姿のままに
(9)
。」
ベートーヴェンの生涯:02 ベートーヴェンの生涯
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
神代
(
かみよ
)
のような静寂が天地を占めるなかに、黒いとろりとした水が何
哩
(
マイル
)
もつづいて、島か陸地か
判然
(
はっきり
)
しない岸に、すくすくと立ち並ぶ杉の巨木、もう
欧羅巴
(
ヨーロッパ
)
の文明は遠く南に去って
踊る地平線:05 白夜幻想曲
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
しかもその雄蝶は黒く雌蝶は青いのまで、竜之助の眼には
判然
(
はっきり
)
として現われました。
大菩薩峠:14 お銀様の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
それほどの光ですから、私たちの安易な考え慣れた光明とはかなり勝手が違うのであります。従って、そんなに在ることは
判然
(
はっきり
)
していながら、判然在るようには感じられないのであります。
仏教人生読本
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
英国にも
兎径
(
ヘヤー・パス
)
という村や野が数あり兎が群れてその辺を通ったからこの名を生じた。兎の通路は熟兎のよりも一層
判然
(
はっきり
)
するという事だが、わが邦の
兎道
(
うじ
)
などいう地名もこのような起因かも知れぬ。
十二支考:02 兎に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
蔚山を
発
(
た
)
ってまもなく、エンジンの激しい音の間にばら、ばら、ばらと云う異様な音が走るので、不思議に思って海の上に眼をやると、そこには己の飛行機と同じ飛行機の姿が
判然
(
はっきり
)
と影を落している。
追っかけて来る飛行機
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
白髪交
(
しらがまじ
)
りの髪は乱れているまで
判然
(
はっきり
)
見える、だがその男にはついぞ見覚えがなかった、
浴衣
(
ゆかた
)
の模様もよく見えたが、その時は不思議にも口はきけず、そこそこに出て手も洗わずに
母家
(
おもや
)
の方へ来て寝た
暗夜の白髪
(新字新仮名)
/
沼田一雅
(著)
彼女は晩夏の花のやうに
傲慢
(
ごうまん
)
に唇をそらした。定は黙つて彼女を聴き、聴き畢ると眼を真昼の星宿の方へと投げた。彼は自分の
裡
(
うち
)
に
判然
(
はっきり
)
とした形をとつた花子への「憎悪」をはじめて
此
(
こ
)
の時に感じた。
水に沈むロメオとユリヤ
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
ビラは
判然
(
はっきり
)
と語った
動員令
(新字新仮名)
/
波立一
(著)
それは前後で丁度三、四回も繰り返されたでしょう。私も始めはただその突然なのに驚いただけでした。二度目には
判然
(
はっきり
)
断りました。
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「そのことにございます。まだ
判然
(
はっきり
)
いたしたわけではございませんが、ことによれば、
真物
(
ほんもの
)
の彦四郎貞宗が戻るかもわかりません」
銭形平次捕物控:072 買った遺書
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
“判然”の意味
《名詞》
判然(はんぜん)
はっきりとよくわかること。
《形容動詞》
はっきりとよくわかるさま。
(出典:Wiktionary)
判
常用漢字
小5
部首:⼑
7画
然
常用漢字
小4
部首:⽕
12画
“判”で始まる語句
判
判明
判官
判断
判斷
判切
判事
判人
判別
判定