明白はっきり)” の例文
いゝエ妾になれって明白はっきりとは言わないけれど、妾々ッて世間で大変悪く言うが芸者なんかと比較くらべると幾何いくらいいか知れない
二少女 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
なに、明白はっきりと云うが可いのさ。私ゃ一番先だって構やしないし、また皆さんに見ていられたって別段こわかないんだよ。
どうだ、真直ぐにいってしまえ、どっちへ逃げたか、それともどこへ隠したか、てっとり早く明白はっきりといってしまえ
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
星の光も見えない何となく憂鬱なゆうべだ、四隣あたりともしがポツリポツリと見えめて、人の顔などが、最早もう明白はっきりとはわからず、物の色がすべきいろくなる頃であった。
白い蝶 (新字新仮名) / 岡田三郎助(著)
お島はその頃、誰が自分の婿であるかを明白はっきり知らずにいた。そして婚礼支度の自分の衣裳いしょうなどを縫いながら、時々青柳の弟のことなどを、ぼんやり考えていた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
ロミオ されば明白はっきりはうが、わしはカピューレットのあのうつくしいむすめまた戀人こひゞとめてしまうた。わしめたれば先方むかうもまた其通そのとほりにめたのでござる。
たとえばころもを着るにも、縞柄しまがらからい方からようにいたるまで一々明白はっきりした意思を表示し、かつこれをつらぬかんとすれば、たいていの仕立屋したてやまたは細君さいくんは必ず手に余すであろう。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
じぶんがなにをしているかが明白はっきりと分っていながら、どうにも目のまえの人間の言葉を真似たくなり、またその人の動作をそのまま繰りかえす——つまり、反響言語エヒョーラリー返響運動エヒョーキネジーというのがおこる。
人外魔境:01 有尾人 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
ロレ はて、明白はっきり素直すなほ被言おッしゃれ。懺悔ざんげなぞのやうであると、赦免みゆるしなぞのやうなことにならう。
そんな連中れんじゅうのなかにお島をおくことの危険なことが、今夜の事実と照合てりあわせて、一層明白はっきりして来るように思えた父親は、いよいよお島を引取ることに、決心したのであったが、迎いが来たことが知れると
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)