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ふりがな文庫
“
明瞭
(
はっきり
)” の例文
だから、しかし、
明瞭
(
はっきり
)
しておかないと、後でみんなが困ることですから。(間)万一です、万一ですね、あなたがあさ子さんを……。
みごとな女
(新字新仮名)
/
森本薫
(著)
それは、色のない
透明
(
すきとお
)
ったものが光っているようでいて、そのくせどうも
形体
(
かたち
)
の
明瞭
(
はっきり
)
としていない、まるで気体のようなものでした。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
又右衛門は
濁酒
(
どぶろく
)
の燗を熱く熱くと幾度も云ったそうである。茶屋の
親仁
(
おやじ
)
だから燗の事だけは確かに
明瞭
(
はっきり
)
と覚えていたにちがいない。
鍵屋の辻
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
……遠慮はいらない
明瞭
(
はっきり
)
とお云い! 妾に
従
(
つ
)
くか卜翁に従くか? 妾は十まで数えよう。その間に決心するがいい。一つ、二つ、三つ、四つ
赤格子九郎右衛門の娘
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
ああして小綺麗なメリンス友禅の掛蒲団の置炬燵にあたりながら絽刺しをしていた
容姿
(
すがた
)
が、
明瞭
(
はっきり
)
と眼の底にこびりついて、いつまでも離れない。
霜凍る宵
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
▼ もっと見る
「人の怨み、そんなことはないだろうが、やっぱり何かな……」とつぶやいていたが、にわかに声を
明瞭
(
はっきり
)
させて
北国の人
(新字新仮名)
/
水野葉舟
(著)
何をいっているのか、坂口にはよく聴取れないが、
明瞭
(
はっきり
)
した
愛蘭
(
アイリッシュ
)
訛で、折々口ぎたない言葉を吐いていた。その度に二三の女達がドッと笑い崩れている。
P丘の殺人事件
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
その上六人のうちで、これから何をするか
明瞭
(
はっきり
)
した考を
有
(
も
)
っていたものは誰もないのだからはなはだ気楽である。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
言うその事柄は能く解りませんのでしたが、一言、一言、
明瞭
(
はっきり
)
耳に入るので、思わず私も聞惚れておりました。
旧主人
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
それから的を見透すというと、これは
大
(
さす
)
、これは
小
(
おちる
)
、これは
東
(
まえ
)
、これは
西
(
うしろ
)
ということが
明瞭
(
はっきり
)
とわかるのでござる
大菩薩峠:14 お銀様の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
彼女は
忽
(
たちま
)
ち興奮した。険しい眼には挑戦の意気込みが現われた。こうなると、
先刻
(
さっき
)
自分が
明瞭
(
はっきり
)
と見極めた事実すら、何だか
曖昧
(
あいまい
)
なものに成った様な気もしだした。
偽刑事
(新字新仮名)
/
川田功
(著)
何だか
貴方
(
あんた
)
の云うことは
明瞭
(
はっきり
)
分らねえ、だがねえ
己
(
おら
)
ア身体は大事、
先方
(
むこう
)
な身体も大事と一つにいうなら、何故己ア身体を先方な奴が
打
(
ぶ
)
ったか、打たれては腹が立つ
霧陰伊香保湯煙
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「何ですかえ、その亀安の番頭は、お藤さんが
珊瑚
(
さんご
)
を釣る現場を
明瞭
(
はっきり
)
見たとでも言いましたかえ。」
早耳三次捕物聞書:02 うし紅珊瑚
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
眠元朗は全く
明瞭
(
はっきり
)
すぎるくらい明らかな
寂漠
(
さび
)
しい
風表
(
かざおもて
)
に
佇
(
た
)
っているような顔をしていた。——しかしかれは黙ってむしろ気難しそうに口をゆがめて返事をしなかった。
みずうみ
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
しかし
汝
(
そなた
)
に感服したればとて今すぐに五重の塔の
工事
(
しごと
)
を汝に任するわと、
軽忽
(
かるはずみ
)
なことを老衲の
独断
(
ひとりぎめ
)
で言うわけにもならねば、これだけは
明瞭
(
はっきり
)
とことわっておきまする
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
それは
明瞭
(
はっきり
)
と知ることが出来なかった。心持ち首を
傾
(
かし
)
げて、彼女はまた書物の上に眼を落した。
湖水と彼等
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
母親の気づかはしげな声が、
茫然
(
ぼんやり
)
と耳に入る。しかしお葉はまだ自分の手や足や胴がどこに置かれてあるのだかわからないし、自分が今何をして来たのだかも
明瞭
(
はっきり
)
しない。
青白き夢
(新字旧仮名)
/
素木しづ
(著)
「君の云うことはよく分らんな、もっと
明瞭
(
はっきり
)
と言い給え」と係長が焦れッたそうに云った。
青い風呂敷包
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
たった今の事実を、それも傍にいながら
明瞭
(
はっきり
)
覚えていないのは、頭がぼけているのだろう。
春心
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
私にはまだよく
解
(
わか
)
らずにいる相手の気持もいくらか
明瞭
(
はっきり
)
しはしないかと思って、
却
(
かえ
)
ってそういう私自身の不幸をあてにして仕事をしに来た私は、ために
困惑
(
こんわく
)
したほどであった。
美しい村
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
けれども、彼女の
恢復
(
かいふく
)
しかけた意識は例によって、血潮の洗礼を受けたあとでも因襲道徳に
囚
(
とら
)
えられていた。それを
明瞭
(
はっきり
)
と聞きただす勇気はなくって、いたずらに
悶
(
もだ
)
え苦しんだ。
芳川鎌子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
道徳も習慣も男性の貞操に関しては、
明瞭
(
はっきり
)
した定義を下しかねているようで、
却
(
かえ
)
って「男の働きだから仕方がない」なぞと女性の方を押え付けるような傾向さえある位であります。
鼻の表現
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
素敵
(
すてき
)
もない大きな鼾を掻いている最中に不図眼を覚まして、頭を
明瞭
(
はっきり
)
させようと床の上に起き直りながら、スクルージは別段報告されんでも鐘がまた一時を打つところであるのを悟った。
クリスマス・カロル
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
読んだだけでは逸し易い文体の特質が訳して見て
明瞭
(
はっきり
)
する点も頗る多かった。
銷夏漫筆
(新字新仮名)
/
辰野隆
(著)
また元の道へ引き返して、雷門の前通りを花川戸へ曲がる
角
(
かど
)
に「地蔵の
燈籠
(
とうろう
)
」といって有名な燈籠があった。古代なものであったが、年号が
刻
(
き
)
ってないので
何時頃
(
いつごろ
)
のものとも
明瞭
(
はっきり
)
とは分らぬ。
幕末維新懐古談:12 名高かった店などの印象
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
「え、読みました。」と
明瞭
(
はっきり
)
と答えた。
恭三の父
(新字新仮名)
/
加能作次郎
(著)
その言葉は
明瞭
(
はっきり
)
とは聞取れなかった。
夏すがた
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
ところで僕は、これが唯一の
機会
(
チャンス
)
だと思うのだよ。つまり、犯人がピロカルピンを手に入れた——その経路を
明瞭
(
はっきり
)
させることなんだ。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
異状すぎた異変を見たが、それを見たといっていいか——本当に見たのか、夢を見たのか? それさえ
明瞭
(
はっきり
)
しないことを、いいもできなかった。
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
そうして、私達を取り囲みましたが、年長らしい一人の男が、
明瞭
(
はっきり
)
した
正確
(
ただし
)
い柬埔寨語で、斯う私に話し掛けました。
赤格子九郎右衛門
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
その辺は
明瞭
(
はっきり
)
しないが、たしかにこの家のまわりを、うろつく人影があったことを、米友は確実に感づいたのみではない、確実に認めたのだから猶予はなりません。
大菩薩峠:36 新月の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
クッキリと黄色い光線を
浴
(
あ
)
びている甃石の上は、日蔭よりも淋しかった。青空も、往来も、向う側の家々も、黒眼鏡を通して見るように
明瞭
(
はっきり
)
として、
荒廃
(
さび
)
れて見えた。
P丘の殺人事件
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
……然しどうも
明瞭
(
はっきり
)
としない。妙に紛糾したものが私の頭の中に醸されて渦を巻いている。
蠱惑
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
自己のことにばかり目がくらんでしまって、
明瞭
(
はっきり
)
した眼をもたなかった。真の愛情がないものが、なんでそんなことを言うのか——変だとは思わないで、ただ厭だとばかり思った。
旧聞日本橋:25 渡りきらぬ橋
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
全く
興覚
(
きょうざ
)
めてしまって、神経を悩む病人のように、そんなことをぶつぶつ口の先に出しながら
拳固
(
にぎりこぶし
)
を振り上げて柳沢を
打
(
ぶ
)
つつもりか、どうするつもりか、自分にも
明瞭
(
はっきり
)
とは分らない
うつり香
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
「これなら私にも、
明瞭
(
はっきり
)
とはいきませんけれど……どうかこうか見えます」
旧主人
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
明瞭
(
はっきり
)
記憶して居らぬが、何でも十一二の頃小学校の門(八級制度の頃)を
卒
(
お
)
えて、それから今の東京府立第一中学——其の頃一ツ橋に
在
(
あ
)
った——に入ったのであるが、
何時
(
いつ
)
も遊ぶ方が主になって
私の経過した学生時代
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
唄の文句は
明瞭
(
はっきり
)
とは聞き取れないが、狂女お艶から出てこの界隈では近ごろ誰でも承知の
狂気節
(
きちがいぶし
)
はお茶漬音頭、文政末年
都々逸坊仙歌
(
どどいつぼうせんか
)
が都々逸を
作出
(
あみだ
)
すまでのその前身よしこの節の直流を受けて
釘抜藤吉捕物覚書:05 お茶漬音頭
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
その頃の景物がまことに
明瞭
(
はっきり
)
と、よく、今も記憶に残っております。
幕末維新懐古談:11 大火以前の雷門附近
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
立松が葡萄酒を飲めと云った。少し飲んだら幾分
明瞭
(
はっきり
)
した。
鳩つかひ
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
夢にしてはあまりに事実が
明瞭
(
はっきり
)
している。
切支丹転び
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
伸子さんが
燐寸
(
マッチ
)
を
擦
(
す
)
って顔を照らすまでは、いったい誰が
斃
(
たお
)
されたのか、それさえも
明瞭
(
はっきり
)
していなかったというくらいで……。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
その時の光景を、今でも、
明瞭
(
はっきり
)
と憶えているが「のばく」から、通りへ出る坂の右側に「金時湯」という湯屋がある。その前で、一人の女に逢うた。その時
死までを語る
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
俺
(
おい
)
ら決して冗談は云わねえ。殺すと云ったらきっと殺す。だから
確
(
しっか
)
り性根を据え、云うか厭か
明瞭
(
はっきり
)
云いねえ。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
然
(
しか
)
し今、海浜旅館で見かけた人は余り距離が隔っていたので、
明瞭
(
はっきり
)
した事は云えません。
緑衣の女
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
それで
的
(
まと
)
の
見透
(
みとお
)
しが
明瞭
(
はっきり
)
とせぬ故、遠近の見定めがつかぬ……その故にねらいの本式はまず弓を引き分くる時に的を見、さて弓を引込めたる時、目尻でこう桿から鏃をみわたし
大菩薩峠:14 お銀様の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
その時私は
明瞭
(
はっきり
)
と知った。彼は決して私の顔は見なかった。只私の前に在る紅茶と菓子とをじっと見たのだ。それから彼は例の四角い卓子について、紅茶と菓子とを女中に云いつけた。
蠱惑
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
誰れにもまして怒りも強かったであろうし、また悲しみも深かったであろうが、子の親である人のそうした場合には、
明瞭
(
はっきり
)
と自分の不明であった事に
頷
(
うなず
)
かなければならなかったであろう。
芳川鎌子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
しかしその時、時計が五時を打って、それだけは、妙に
明瞭
(
はっきり
)
と覚えていますが……ああ、どうか今夜だけは、貴方がたといっしょに過させていただけませんか……
潜航艇「鷹の城」
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
「城中一切の原動力? 随分大きく出やがったな。……しかしどうも
俺
(
おい
)
らには意味が
明瞭
(
はっきり
)
わからねえ」
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
明
常用漢字
小2
部首:⽇
8画
瞭
常用漢字
中学
部首:⽬
17画
“明瞭”で始まる語句
明瞭度