瞭乎はっきり)” の例文
その声の中には、斉彬の、死の覚悟が、瞭乎はっきりとしていたし、死の影さえ、含まれているように感じられるものであった。
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
そして自分の部屋へ這入ると初めて先刻の影が或るかすかな物音を引いていたことを瞭乎はっきりと思い出した。
三階の家 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
君は春夫に小説を見せて僕に見せんのかというと、君とは親しすぎて批評も聞きにくいし君もいいとか悪いとかも瞭乎はっきりと言えないだろうと思ったから、春夫の所にやって置いたと言った。
瞭乎はっきりとした病ならば、とにかく、三人の医者にも、不明な、熱病であるだけに
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
篠竹しのだけの深いところは、瞭乎はっきり、想い出せたが、頂上の草原は——草原であったような、無かったような、広かったような、そうでなかったような、そして、自分のそこでしたことは、見残した夢の如く
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)