“あぶ”のいろいろな漢字の書き方と例文
カタカナ:アブ
語句割合
28.5%
23.3%
19.4%
18.0%
2.8%
2.5%
危険0.8%
0.8%
浮雲0.6%
0.6%
(他:10)2.7%
(注)作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
夏近くなって庭の古木は青葉を一せいにつけ、池を埋めたなぎさの残り石から、いちはつやつつじの花があぶを呼んでいる。
老妓抄 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
花の匂いが官能を刺戟して、うっとりと気が遠くなる、空は濃碧に澄んで、ちり一つの陰翳もなく、あぶが耳もとで
谷より峰へ峰より谷へ (新字新仮名) / 小島烏水(著)
「きりが深くなかったら、ぼくたちはあぶなくどろぼうのつみ拘引こういんされるところだったよ」とマチアは言った。
甚兵衛はあぶながりましたが、さる大丈夫だいじょうぶだというものですから、そのいうとおりにしたがいました。
人形使い (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
曇天の夕焼が消えかかつた時、私たちは囲爐裡の火を囲んで、竹串にあぶつた山女やまめを肴に、鍋で炊いた飯を貪り食つた。
槍ヶ岳紀行 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
偃松の枝にすがって下を覗き込むと、赭黒い岩の膚が強烈な日光を浴びて、火にあぶられた肉塊のように陽炎が燃えている。
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
それも其筈、今朝九時頃に朝飯を食つてから、夕方に小野山の室で酒を飮んで鯣のあぶつたのをしやぶつたきりなのだ。
病院の窓 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
それも其筈、今朝九時頃に朝飯を食つてから、夕方に小野山の室で酒を飲んで鯣のあぶつたのをしやぶつたきりなのだ。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
物を長ずるの力は南薫に如かず、春日は暖かなりと雖も、物をあぶるの能は夏日に如かざるが如きであるに關らず
努力論 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
まア着物でもあぶってあったけえ物でも喰いながらゆるりと話をするがい、慌てゝも仕様がねえ
「あれ以来、人足どもも大分おとなしくなりましたが、やっぱり気の荒い郡内のあぶものでござるから、おりおり旅人が難儀する由でござりまする」
ですから道庵先生の野上の宿の前は、夜の明けないうちから、仕事にあぶれた雲助をはじめとして、近郷近在の見物人が真黒に寄ってたかって騒いでいる有様です。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
グラン・ブルヷアルを初め、目ぼしい大通おほどほりを歩いて人道じんだうから人道じんだうへ越すときの危険あぶなさ。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
オツト危険あぶねえ、すんでの事溝へ落つこちるところだつけ。
磯馴松 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
ごくまれに、むくむくと太ったあぶが、鈍い羽音を響かせながら、もう結実しかけた藤の下を、迷い飛ぶ位のものであった。
長いこと転々としてその昂ぶった神経を持てあましながら、ラッセルのようにものうあぶの羽音を、目をつぶって聞いている中に、看護婦が廻って来た。
「あッ、浮雲あぶない! 斬られる斬られる!」鳰鳥は両手を握り締めた。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「おお浮雲あぶのうございますこと」松虫は胸を躍らせたが、
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そして、五体はあぶられるスルメのやうに思慮のない狂ほしさで苛々した。
F村での春 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
山小屋の囲炉裏に、串に刺した鰍を立てならべ榾火ほたびで気長にあぶって、山椒さんしょう醤油で食べるのが最もおいしい。焼きからしを摺鉢ですり、粉にして味噌汁のだしにすれば、これまた素敵である。
冬の鰍 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
これと近いものに福島県石城いわき郡のタケスカナ、福井県大野郡また山口県阿武あぶ郡のタケスイバなどがある。
ヒガンボウズ 長門ながと阿武あぶ
そうでなくてもやみの女の生血いきちから絞りとる、あぶぜに下滓かすを吸って生きている、低級無智な者の中にはさまれて暮していなければならなかった母君の
樋口一葉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
「そうら、ねえとこへでもろ」といひながらせはしくぽつと一燻ひとく落葉おちばもやして衣物きものあぶつて與吉よきちせた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
あぶり焼きして心見よ、と云うと、情無い下司男げすおとこは、其言葉通りにして見て、これはことの外に結構でござる、生身いきみあぶり焼きは、死したるのよりも遥かに勝りたり、などと云った。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「それは半焼けになった右足なんだ。その右足は骨の上に、僅かに肉の焼けこげがついているだけで、まるで骨つきの痩せた、鶏の股をあぶり焼きにしたようなものだが、それに二つの特徴がついている」
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そこへ奧さんがお仕舞が出來て、すうつとはいつて、氣が落着かぬといふ風で、兩膝を立てて、座蒲團の上にしやがんで、火鉢に二本揃へて立ててある火箸を取つて、二たところへ立てて、それに手を載せてあぶるのである。
半日 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
卵は卵のままにてその功を為すべし、ひなは雛の儘にてその功を為すべし、時機に依れば、彼れみずから卵を煮、雛をあぶるも、以てさらに意とさざればなり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
山茶花さざんかの咲く冬のはじめごろなど、その室の炭のにおいが漂って、淡い日がらんの鉢植にさして、白い障子にはねの弱いあぶがブンブンいっているのを聞きながら