あぶ)” の例文
まるっきり今日はあぶれちまって、からいて帰るかと思っていた処で、何うか幾許いくら待っても宜しゅうございます、閑でげすから、お合乗あいのりでへい
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「あれ以来、人足どもも大分おとなしくなりましたが、やっぱり気の荒い郡内のあぶものでござるから、おりおり旅人が難儀する由でござりまする」
湯はふねの四方にあぶれおつ、こゝをもつて此ぬるからずあつからず、天こうくわつくる時なければ人作じんさくの湯もつくなし、見るにも清潔せいけつなる事いふべからず。
一昨年おととしの夏、小鱸せいご釣に出でゝ、全くあぶれ、例の如く、大鯰二つ買ひて帰りしが、山妻さんさい之を料理するに及び、其口中より、水蛭ひるの付きし「ひよつとこ鈎」を発見せり。
釣好隠居の懺悔 (新字旧仮名) / 石井研堂(著)
中へ何を入れたか、だふりとして、ずしりと重量おもみあぶまして、筵の上に仇光あだびかりの陰気な光沢つやを持った鼠色のその革鞄には、以来、大海鼠おおなまこに手が生えて胸へのっかかる夢を見てうなされた。
革鞄の怪 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
さるお金持の好奇ものずきなお医者さんが来て、この関ヶ原にあんぽつをとどめ、道中の雲助のあぶれをすっかりき集め、それにこのあたりの人夫をかり出して
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
湯はふねの四方にあぶれおつ、こゝをもつて此ぬるからずあつからず、天こうくわつくる時なければ人作じんさくの湯もつくなし、見るにも清潔せいけつなる事いふべからず。
こいは、「三日に一本」と、相場の極ツてる通り、あぶれることも多いし、きす小鱸せいご黒鯛かいず小鰡いな、何れも、餌つきの期間が短いとか、合せが六ヶむつかしいとか、船で無ければやれないとか
元日の釣 (新字旧仮名) / 石井研堂(著)
おごつた、じまの郡内ぐんないである。通例つうれいわたしたちがもちゐるのは、四角しかくうすくて、ちよぼりとしてて、こしせるとその重量おもみで、すこあぶんで、ひざでぺたんとるのだが、そんなのではない。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ですから道庵先生の野上の宿の前は、夜の明けないうちから、仕事にあぶれた雲助をはじめとして、近郷近在の見物人が真黒に寄ってたかって騒いでいる有様です。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
大言壮語することを職としていた筋目の通るあぶものが、当時の社会には充ち満ちておりました。
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
病躯びょうくを起して、この内憂外患の時節に、一方には倒れかけた幕府の威信を保ち、一方には諸国の頑強なあぶものを処分してゆく、にくまれやくは会津が一身に引受けたのであります。
一も二もなく雲助のきっぷに惚れ込んだ道庵が、ここで彼等のあぶものをすっかりかり集めて、大盤振舞をした上に、明日はこの勢いで関ヶ原合戦の大模擬戦を行って見せるのだという。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)