“ふ”のいろいろな漢字の書き方と例文
カタカナ:
語句割合
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(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
ばんごと喧嘩けんくわをしてめてやるのだが隨分ずゐぶんおもしろいよとはなしながら、鐵網かなあみうへもちをのせて、おゝ熱々あつ/\指先ゆびさきいてかゝりぬ。
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
Sさんは一寸ちょっとに落ちないような表情をしたが、K氏あてに手紙を書いてくれ、お百姓さんに対しては私のために礼を述べてくれた。
遁走 (新字新仮名) / 小山清(著)
けるにしたがって繁くなる夜露が、しんとした水面にかすかな音を立てるばかりで、あとはただ虫のこえばかり聞えるだけでした。
寂しき魚 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
「まだある、下手人の着物なら、血が飛沫しぶいているはずだ、あれだけひどく殴ったんだもの、——ところがあれは血をいたんだぜ」
中国の若者も眼鏡がえているし、お会いして伺いますが、上海にいて魯迅全集の仕事をしていた内山完造の『支那漫語』(改造)
こうして清作せいさくさんは、じつにりっぱな軍人ぐんじんでした。だからまちとおると、おとこおんないて、その雄々おおしい姿すがたをながめたのです。
村へ帰った傷兵 (新字新仮名) / 小川未明(著)
なみがうごき波が足をたたく。日光がる。この水をわたることのこころよさ。菅木すがきがいるな。いつものようにじっとひとの目を見つめている。
台川 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
うしてつてまゐります品物しなものらないと、ひどいんですぜ、そりや、んだり、つたり、ポカ/\でさ。我又不善擇人參可否われまたにんじんのかひをえらぶことをよくせず
人参 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
玉蜀黍とうもろこしの毛をつかねて結ったようなる島田を大童おおわらわに振り乱し、ごろりと横にしたる十七八の娘、色白の下豊しもぶくれといえばかあいげなれど
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
実直さとともにけ、せぎすな体で、まかない方の辛労をひき受けて来たのだ。無限の実直さには何らの価値もみとめてはいなかった。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
これにはんしてきたからのかぜは、荒々あらあらしいうみなみうえを、たかけわしいやまのいただきを、たにもったゆきおもてれてくるからでありました。
大きなかしの木 (新字新仮名) / 小川未明(著)
絞殺に鮮血がきでるというのは可笑おかしかった。なにかこれは別の傷口がなければならない。一郎は愛弟四郎の屍体に顔を近づけた。
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
新婦は首をりて、否々、かどの口をばえひらきはべらず、おん身のこゝに來給はんはよろしからずと云ひ、起ちてかなたの窓を開きつ。
大窪の泉と云つて、杉の根から湧く清水を大きい据桶に湛へて、雨水を防ぐ為に屋根をいた。町の半数の家々ではこの水でめしかしぐ。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
信長のこういう顔つきと沈黙に出会って、おそさない将は幾人もいない。いや信長の一族を加えても、絶無だといってよいだろう。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
など色とりどりの褌ひとつになつて無茶苦茶に踊り狂ふのを豊漁踊りと称んでゐたが、踊りとも云へぬただの騒ぎなのである。
円卓子での話 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
しげるがまゝの秋草ですが、それでも氣をつけて見ると、人間の通つたらしい跡が、ほんの少しばかり草がみつけられてをります。
と、背すじへのぞんで、助広の白光はっこうを一りなぎつけたが、崖に等しい傾斜であり、灌木の小枝に邪魔されて、行き方少し軽かったか
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一、句数五千一万の多きに至らずとも、才能ある人は数年の星霜をる間には自然と発達して、何時いつの間にか第二期にりをる事多し。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
そして、その男とすれ違う時、ぎらぎらする二つの眼が丹治の方をにらむように光った。丹治はと見返すことができなかった。
怪人の眼 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「はあ実は」又四郎は眼をせた、「——実はですね、あの方と、お二人きりで、その、折入ったお話が、その、したいのですが」
百足ちがい (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
越後の上杉景勝も、慇懃いんぎん、賀使を送って、盟約をみ、四道の風はことごとく、秀吉になびき、秀吉のたもとに吹くを、歓ぶかのような状況である。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やがておりうがしなやかにまがつて、をとこれると、むねのあたりにつて卷煙草まきたばこは、こゝろするともなく、はなれて、婦人をんなわたつた。
三尺角拾遺:(木精) (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
像のりたるは色褪いろあせて、これを圍める彩畫ある板壁さへ、半ば朽ちて地にゆだねたれど、中には聖母兒せいぼじ丹粉にのこあざやかかなるもなきにあらず。
これより帝優游自適ゆうゆうじてき、居然として一頭陀いちずだなり。九年史彬しひん死し、程済ていせいなお従う。帝詩をくしたもう。かつしたまえる詩の一に曰く
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「おお、あの何か江戸ッ子の、いつも前垂まえだれ掛けでおいでなさる、活溌な、ふァふァふァ、」と笑って、鯉がを呑んだような口附をする。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
孝廉は約束をんで喬に連城をめあわそうと思って、先ずそのことを王の方に知らした。王は怒って官に訟えようとした。孝廉は当惑した。
連城 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
海は日毎ひごとに荒模様になって行った。毎朝、なぎさに打ち上げられる漂流物の量が、急にえ出した。私たちは海へはいると、すぐ水母くらげに刺された。
麦藁帽子 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
それで、道を歩いていても、と私の記憶に残ったそう云う姿、そう云う顔立ちの女を見ると、若しや、と思って胸を躍らすことがある。
幼い頃の記憶 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
余はこの時始めて附添つきそいのものが、院長のをことさらに秘して、余に告げなかった事と、またその告げなかった意味とを悟った。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
夜気やき沈々たる書斎のうち薬烟やくえんみなぎり渡りてけしのさらにも深け渡りしが如き心地、何となく我身ながらも涙ぐまるるやうにてよし。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
伯夷はくい叔齊しゆくせいけんなりといへども、(七三)夫子ふうし益〻ますますあらはれ、顏淵がんえん篤學とくがくなりといへども、(七四)驥尾きびしておこなひ益〻ますますあらはる。
凡ての物の色が黄昏たそがれの時のやうに浮き立つて来るので、感じ易い心は直様秋の黄昏に我れ知らずけるやうな果しのない夢想に引き入れられる。
花より雨に (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
いな、彼女は初恋の人に対する心と肉体との操を守りながら、初恋をにじられた恨を、多くの男性に報いていたとってもよかった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「吉兵衛さん、よい加減にしておきなはれよ。わしはちっとも気はれておりやしまへんで、ただ世間並にしておりますのじゃ」
空中征服 (新字新仮名) / 賀川豊彦(著)
「南無阿弥陀ァ仏——南無阿弥陀ァ仏」単調たんちょうな村のかなしみは、村の静寂の中に油の様に流れて、眠れよ休めよと云う様に棺を墓地へと導く。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
そうしたしだらな恋愛の常習者だからだときめてしまうにきまっていると思うからなんです。
華やかな罪過 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
ある朝、食事をすますと、例によつて、一緒に甲板へあがり、神谷は煙草をかしはじめ、千種はその傍で、ぼんやり空想に耽つてゐた。
双面神 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
「さあ兄さん、えらいお待たせして済みまへん。どうぞ、もっとずっと火鉢ひばちの傍にお寄りやす。夜がけてきつう寒うおす」
霜凍る宵 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
「あなたのお話を伺っていると、あたしは将棋ので、上手な将棋差しの手にかかって、いいように動かされているみたい」
あなたも私も (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
わが面體めんていを後のかたみに殘さんと、さきに其方を召出し、頼家に似せたるおもてを作れと、繪姿までもつかはして置いたるに、日をるも出來しゆつたいせず。
修禅寺物語 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
何故と云ふに、別本には誠範の右に「蓮譽定生大※、文政五年壬午じんご八月」があつたから、かくの如くに讀むときは、此彫文とするからである。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
斬られた角兵衛は秘密にしているにしても、人の腕を斬って往来へ投げ捨てて、世間を騒がした照之助を不問にして置くわけには行かない。
半七捕物帳:54 唐人飴 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
其の蔓をして依つて以て纒繞せしむ可き竹條葭幹等を與へて之を扶殖して地にすこと無からしめ、丁寧に其の蠹蚜とがを去るが如きは、即ち助長である。
努力論 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
オノリイヌ——奥さんは、だけど、きんのあてようがちょっくら間違ってたぐらいで、わしに暇をくれようっていうつもりは多分おあんなさるまい。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
たけなる髪をうしろに結びて、りたるきぬへたる帯、やつれたりとも美貌びばうとはが目にも許すべし。
軒もる月 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
松田氏の精確なる記性と明快なる論断とがなかつたなら、わたくしは或は一堆の故紙に性命をき入るゝことを得なかつたかも知れない。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
人のなることを知りて之を姦せんとす、元より非道なり、れども彼は非道を世人の嫌悪する意味に於ての非道とせず。
心機妙変を論ず (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
夕暮にマリウチアと其父とは寺門迄迎へに來ぬ。僧はわれを伴ひ出でゝ引き渡しつ。この牧者のさまを見るに、衣はペツポのをぢのよりりたるべし。
さまさせまゐらせんといへるを、赤穴又かしらりてとどめつも、さらに物をもいはでぞある。左門云ふ。既に九〇夜をぎてし給ふに、心もみ足もつかれ給ふべし。
如意珠を持って焼香礼拝し、まず願を発していわく、わがために食をらせよ、と。語に随ってすなわち百味の飲食おんじきを雨らす。かくのごとく種々のもの意に随って宝を得。
わたくしはしなくも、昨夜ゆふべローマからの滊車きしやなかんだ『小公子リツトルロー、トフオントルローイ』といふ小説せうせつちうの、あのあいらしい/\小主人公せうしゆじんこう聯想れんさうした。
お国は、取っておいたあじに、塩を少しばかりって、鉄灸てっきゅうで焼いてくれとか、漬物つけものは下の方から出してくれとか、火鉢の側から指図がましく声かけた。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
何か不満が有るらしく、自分が何か云ってもてて鼻歌で行って仕舞ったり、わざと聞える様に重三の悪口を云ったりする様子がお関には不安で有った。
お久美さんと其の周囲 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
すなわち三丰のりし所の武当ぶとう 大和山たいかざんかんを営み、えきする三十万、ついやす百万、工部侍郎こうぶじろう郭𤧫かくつい隆平侯りゅうへいこう張信ちょうしん、事に当りしという。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
先生の平生はなはだ多忙にして執筆の閑を得ずそのままに経過したりしに、一昨年の秋、る外国人のもとめに応じて維新前後の実歴談を述べたる折、と思い立ち
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
よくけているか色艶はいいかどうかを調べるんだわ、こうして固さや柔らかさや蒸け加減や色艶をためしているうちに、口のなかへ程よく生唾がいてくる、それから静かに割るんだけれど
若殿女難記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
豪気なたかだ——金座方でもなければ手にすることもなさそうなきたての小判で、ざっと五百両!
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「もみぢ葉を散らす時雨しぐれるなべにさへぞ寒き一人しれば」(巻十・二二三七)等の例がある。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
新朝廷の方は、西園寺公宗をはじめ、光厳帝の久我こがノ右大臣や中院ノ大納言も説きふせてあるし、また後伏見、花園の二上皇も、意地悪くは仰せもなく
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
息をき返して来ると、患者は暗い穴の底から、ふちに立っている人を見あげるように、人々の顔を捜した。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
殊に本邦の竹類に在てはそれ生じてたくを解きてより遂に枯死に就くに至るまで、その寿命を保つの間仮令たとい幾年の星霜をるも遂に花を出すことなくして止むもの少なからず。
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
爺さんは、むっつりと、苦虫を噛みつぶしたような面構えで、炉傍ろばたに煙草をかしていた。弟の庄吾は、婆さんの手伝いで、尻端折しりはしょりになって雑巾ぞうきんけだった。
駈落 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
この妻は寂しけれども浅茅あさぢの露けき朝は裾かかげけり
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
蠅打の下を免れた木村は、例の穴に気の附かなかつた不注意を恥ぢて、こうべして園内に進んだ。
田楽豆腐 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
 去年来のこと、恐れ多くも天朝・幕府の間、誠意あひせざるところあり。
留魂録 (新字旧仮名) / 吉田松陰(著)
山の雲、漢宮の幻ではなかろうか
実に水のほとりに植えたる樹のようなもので、だんだんと芽をき枝を生じてゆくものであると思います。
後世への最大遺物 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
盛庸と鉄鉉とは兵を率いてそののちみ、東昌とうしょうに営したり。このとき北軍かえって南にり南軍却って北に在り。北軍南軍相戦わざるを得ざるのいきおい成りて東昌の激戦は遂に開かれぬ。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
山路になりてよりは、二頭の馬あえぎ喘ぎ引くに、軌幅きふく極めて狭き車のること甚しく、雨さえ降りて例の帳閉じたればいきもりて汗の車に満ち、頭痛み堪えがたし。
みちの記 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
四季袋しきぶくろ紐短ひもみじかにげたるが、此方こなたを見向ける素顔の色あをく、口のべにさで、やや裏寂うらさびしくも花の咲過ぎたらんやうの蕭衰やつれを帯びたれど、美目のへんたる色香いろか尚濃なほこまやかにして
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
あさかぜのささやきに
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
道士はその食物をって空になった鉢をつくえの上にせて帰って往った。
緑衣人伝 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「私なんかに、——た親も、家もないやうな」
だから貧時ひんじにはひんばくせられ、富時ふじにはに縛せられ、憂時ゆうじにはゆうに縛せられ、喜時きじにはに縛せられるのさ。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
下女げじょれていた醜女みにくいおんなばかりをともなうてたので、そうしてこのおんなには乳呑児ちのみごがあった。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
梅子からの手紙! 細川繁の手はるえた。無理もない、かつて例のないこと、又有りべからざること、細川に限らず、梅子を知れる青年わかものの何人も想像することの出来ないことである!
富岡先生 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
「あの三人の娘は、みなひどくらんして、顔も何も分らなくなっていましたね」
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
上の方が小さく、下の方が大きければ、しもぶくれの形になる。くぼんでいる部分は、彎曲率をにとればよいのでその凹み方も、負の値の大小できまる。
我等は倒れたる一圓柱のの上に踞したり。ジエンナロの力に頼りて、乞兒かたゐの群を逐ひ拂ふことを得たりしかば、我等の心靜に四邊あたりの風景をもてあそぶには、復た何のさまたげもあらざりき。
『明日がえ? ぐどもせア。権作ア此老年としになるだが、馬車つぱらねえでヤ、腹減つて斃死くたばるだあよ。』
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
初雪の積りたるをそのまゝにおけば、再びる雪を添へて一丈にあまる事もあれば、一度ふれば一度掃ふ(雪浅ければのちふるをまつ) 是を里言さとことば雪掘ゆきほりといふ。土をほるがごとくするゆゑにかくいふなり。
(新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
同じ金盥で下湯しもゆを使う。足を洗う。人がきたないと云うと、己の体は清潔だと云っている。湯をバケツに棄てる。水をその跡に取って手拭を洗う。水を棄てる。手拭を絞って金盥をく。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
して己れの心をそのまま存する者はこわがりもせぬ。怖気おじけは自己の心を離るるより起こる。漢字で立心扁りっしんべんに去る(きょう)布く()芒ふ(ぼう)をつけてこわがるの意を現すもゆえありというべし。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
火口壁の聳えたところに、折り目がいくつか出来ている、そうして近頃の新火口らしい円い輪形から、てんの毛のような、褐色なっさりとした烟が、太く立ち上って、頂上から少し上の空を這って
谷より峰へ峰より谷へ (新字新仮名) / 小島烏水(著)
あるいは岩石の節理がくれ立ちて、木輪が、磨滅した木の肉から浮ぶように、つまみ上がって見えたりするが、雪の動作は、それとは反対に岩石を擦り円め、滑らかにさせ、磨き上げるのである。
高山の雪 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
道端みちばた石段いしだんがあつた。代助はなかば夢中で其所そこへ腰を掛けたなり、ひたひを手でおさえて、かたくなつた。しばらくして、さいだけて見ると、大きな黒いもんがあつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
かの一兩羽うちて天にあがる……
駱駝の瘤にまたがつて (旧字旧仮名) / 三好達治(著)
近づいて、切ッ払って、ける覚悟し——いたずらに騒いでは、かえって、此の場合、逃げ場を失うのは、知れ切っている。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
「手めえに恨みはねえ、早くけろ! 役人が来るなあ、ほんとうだぜ!」
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
ここにそのみめ須勢理毘賣すせりびめの命、蛇のひれをその夫に授けて、「その蛇はむとせば、このひれを三たびりて打ちはらひたまへ」
ここを以ちて御頸を刺しまつらむとして、三度りしかども、哀しとおもふ情忽に起りて、頸をえ刺しまつらずて、泣く涙の落ちて、御面を沾らしつ。かならずこのしるしにあらむ
斉王せいおうもまた人の告ぐるところとなり、廃せられて庶人となり、代王けいもまたついに廃せられて庶人となり、大同だいどうに幽せらる。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
の太祖の言は、まさに是れ太祖が胸中の秘を発せるにて、はやくよりこの意ありたればこそ、それより二年ほどにして、洪武三年に、そうこうていしゅくていしんたんの九子を封じて
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
しほたま一八を出して溺らし、もしそれ愁へまをさば、しほたまを出していかし、かく惚苦たしなめたまへ
「この竹葉たかばの青むがごと、この竹葉のしなゆるがごと、青み萎えよ。またこの鹽のるがごと、盈ちよ。またこの石の沈むがごと、沈み臥せ」とかくとこひて、へつひの上に置かしめき。
りようの・むしたる、(一一二)擾狎ぜうかふしてし。しかれどもその喉下こうか(一一三)逆鱗げきりん(一一四)徑尺けいしやくなるあり。ひとこれるるあればすなはかならひところす。人主じんしゆにもまた逆鱗げきりんり。
これもの人主じんしゆ逆鱗げきりんるるければすなは(一一五)ちか
すなはちその大神の生大刀いくたち生弓矢いくゆみや一三またその天の沼琴ぬごと一四を取り持ちて、逃げ出でます時に、その天の沼琴樹にれて地動鳴なりとよみき。
人となり聰明にして、目にわたれば口にみ、耳にるれば心にしるす。すなはち阿禮に勅語して、帝皇の日繼ひつぎと先代の舊辭とを誦み習はしめたまひき。
狭いけれども宅には庭がありますから、右の矮鶏を、かごを買って来て、庭へ出して、半月ばかり飼って置きました。
そこでこの方の鶏も庭に飼って、前のと両方、別々のかごに入れて置いた。
通にはそれを「ぎよつとした」と形ようするがその言葉があらはす程シヨツクのはげしいものではなく、何か日頃はおくのほうにしまつてあつて
坂道 (旧字旧仮名) / 新美南吉(著)
ぞくに「ふみきり」といふペタルで、つまり通の自轉車のやうに、或る程度の惰性だせいがついたらペタルの上で足を休ませてゆくといふことが出來ない。
坂道 (旧字旧仮名) / 新美南吉(著)
ァに玉川の水だ、朝早くさえ汲めば汚ない事があるものかと、男役に彼は水汲みずくむ役を引受けた。起きぬけに、手桶ておけと大きなバケツとを両手に提げて、霜をんで流れに行く。顔を洗う。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「私なんかに、——た親も、家もないような」
自ら蝦夷のの神宮に献ぜられ、のちに播磨・安芸・伊予・讃岐および阿波の五国に配置せられた者の子孫なりと称したということで、すなわち「景行天皇紀」五十一年の記事とは符合しますが
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
風采ふうさい、千破矢家のたるに足る竜川守膳が、顔の色を変えて血眼になって、その捜索を、府下における区々の警察に頼み聞えると、両国回向院えこういんのかの鼠小憎の墓前はかのまえに、居眠いねむりをしていた小憎があった。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「なんですか、私も是方こっちへ来てから、また母親さんが一人えたような気がしますわ」
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
の冬草の、山肌色をした小な翼であった。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
谷合いの畠にお長のおやと兄の常吉がいた。二三寸延びた麦の間の馬鈴薯を掘っていたのである。
千鳥 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
そして又幾針もせぬうちにつと手を休めて、膝もとに寝んでゐる多次郎の蒲団を掛け直したりした。広い田園に夜が落ちると、ひつそりした沈黙の、音のない騒がしさがきこえるのであつた。
竹藪の家 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
声がらでは、どうも、今日、途中まで迎へに出た、白髪の郎等が何かれてゐるらしい。
芋粥 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
かつ抉せられてかつ罵り、血を含んでただち御袍ぎょほうく。すなわち命じてその皮をぎ、長安門ちょうあんもんつなぎ、骨肉を砕磔さいたくす。清帝の夢に入って剣を執って追いて御座をめぐる。帝めて、清の族をせききょうせきす。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
この刈跡が漸次峡底に増加えて行くといやはてには人目も草も枯れはてる寂しい冬が来るのである。それにしても自然の推移の早いに驚かざるを得ない。
備後より (新字旧仮名) / 中村憲吉(著)
彼も初めての事なので、薄気味るく、うとうとしていると、最早もう夜も大分更けて、例の木枯こがらしの音が、サラサラ相変らず、きこえる時、突然に枕許まくらもとの上の呼鈴べるが、けだだましく鳴出なりだしたので
死体室 (新字新仮名) / 岩村透(著)
(十三) 有子曰く、信、義に近きときは、ことむべきなり。恭、礼に近きときは、恥辱に遠ざかる。したしむところ其の親を失わざるときは亦とうとぶべきなり。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
例の老夫は頭をり悼りつぶやけり。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そのときたちまち、右手みぎてたかく、御秘蔵ごひぞう御神剣ごしんけんかざし、うるし黒髪くろかみかぜなびかせながら、部下ぶか軍兵つわものどもよりも十さきんじて、草原くさはら内部なかからってでられたみことたけ御姿おんすがた、あのときばかりは
と男は韻をんだように再び叫んだ。
少女病 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
私も、さっさと台所を片付けたいと思い、鍋は伏せ、皿小鉢は仕舞い、物置の炭をかんかん割って出し、猫の足跡もそそくさといて、上草履うわぞうりを脱ぎまして、奥様の御部屋へ参りました。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
家来 (ばこを基康に渡す)
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
哀れ金なくて解脱のみを見ず
鶴彬全川柳 (新字旧仮名) / 鶴彬(著)
もともとシャーマンが神懸りになるために打ち鳴らす太鼓のを意味する語であったことを思えば、このような山の上の祭場にシャーマンが関係していたことも、察するに難くないのであります。
小平太は苦しそうに、ただ「いいや」とばかり頭振かぶりをってみせた。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
「水竹居」はその父竹渓が文政八年歳晩「掃塵」の作中に「先生閑居号水竹。不洒不掃守老屋。」〔先生閑居シテ水竹ト号シ/カズカズシテ老屋ヲ守ル〕というより考えてそのままこれを
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
先ずその蛙の巣窟をはらうに如ずと云うので、お出入りの植木職を呼あげて、庭の植込をかせ、草を苅らせ、池をさらわせた。
池袋の怪 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
又はその当時のモテ加減なぞを思い出してっかり出た「ニヤニヤ」とか「ウフウフ」とかいう気持ちが、鼻の表現のうちを往来明滅するのを禁ずる事は出来ないのであります。
鼻の表現 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
八重「半治はん誠にほめえはりいよう、ほれじゃアまねえよ、ふァたい此家ほゝているに、ほめえがほんなほとをひてや親分ほやぶんまねえよ、小兼ほはねはんにひまになってへえれってえ、ほれじゃア可愛ははひほうだアへえ」
それを一目ながめて彼は思わずき出してしまった——何という似ても似つかぬ相違だろう! それからもずっと長いこと、食事をしたためながらも
外套 (新字新仮名) / ニコライ・ゴーゴリ(著)
憑依ひょういの去った巫者ふしゃのように、身も心もぐったりとくずおれ、まだ六十を出たばかりの彼が急に十年も年をとったようにけた。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
次にこれらの材木の組合せによつて生まれるところのありとあらゆる形々々のやや無限を思はせるところの明滅によつてくれ歪み合し崩れ混乱する様を想像します。
女占師の前にて (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
御食みけむかふ南淵山みなぶちやまいはほにはれる斑雪はだれのこりたる 〔巻九・一七〇九〕 柿本人麿歌集
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
かれ御毛沼の命は、波の穗をみて、常世の國に渡りまし、稻氷の命は、ははの國として、海原に入りましき。
その功としては周王しゅうおうとらえしのみに過ぎざれど、帝をはじめ大臣等これを大器としたりならん、然れども虎皮こひにして羊質ようしつ所謂いわゆる治世の好将軍にして、戦場の真豪傑にあらず、血をみ剣をふるいて進み
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
俥をりて白羽坂しらはざかえてより、回顧橋みかへりばしに三十尺の飛瀑ひばくみて、山中の景は始て奇なり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
彼はおそれて傍目わきめをもらざりけれど、必ずさあるべきを想ひてひとり心ををののかせしが、なほ唯継の如何いかなることを言出でんも知られずと思へば、とにもかくにもその場を繕ひぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
〔譯〕徳性を尊ぶ、是を以て問學ぶんがくる、即ち是れ徳性を尊ぶなり。先づ其の大なる者を立つれば、則ち其知やしんなり。能く其の知をめば、則ち其功やじつなり。畢竟ひつきやう一條いちでうの往來のみ。
ものの、わが夫子せこが、取りける、大刀の手上たがみに、丹書にかき著け、その緒には、赤幡あかはたを裁ち、赤幡たちて見れば、い隱る、山の御尾の、竹を掻き苅り、末押し靡かすなす
向方の隅にゐるお客様が、さつきからあなたの様子を見て、あれは何処の役者なのか、余程六つかしい役でもられたと見えて、可愛想に、酒場に来てまでも稽古に夢中になつてゐる。
痴酔記 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
不断年よりけた女が、かえって実際より三つ四つも少ないくらい、ついに見ぬ、薄化粧で、……分けて取乱した心から、何か気紛れに手近にあったを着散したろう、……座敷で
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
第一、目録が目線であります。下総しもうさが下綱だったり、蓮花れんげよもぎの花だったり、鼻がになって、腹がえのきに見える。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
放し飼いにした伊那駒が、秋天高く馬肥える、今日この頃の野のように、長いたてがみるわせて、さも勇ましく駆けている。秋にふさわしい光景ながめである。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
醜い汚い筋をぶるぶると震わせながら、めるような形が、歴然ありありと、自分おのが瞳に映った時、宗吉はもはや蒼白まっさおになった。
売色鴨南蛮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)