)” の例文
にぶ砂漠さばくのあちらに、深林しんりんがありましたが、しめっぽいかぜく五がつごろのこと、そのなかから、おびただしいしろ発生はっせいしました。
北海の波にさらわれた蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ばんごと喧嘩けんくわをしてめてやるのだが隨分ずゐぶんおもしろいよとはなしながら、鐵網かなあみうへもちをのせて、おゝ熱々あつ/\指先ゆびさきいてかゝりぬ。
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
かぜつめたさわやかに、町一面まちいちめんきしいた眞蒼まつさを銀杏いてふが、そよ/\とのへりをやさしくそよがせつゝ、ぷんと、あきかをりてる。……
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
もりおくまいには、毎日まいにち木枯こがらしがいて、ちつくすと、やがてふかゆきもりをもたにをもうずめつくすようになりました。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
僕はさらしだ。吹き晒しの裸身が僕だったのか。わかるか、わかるかと僕に押しつけてくる。それで、僕はわかるような気がする。
鎮魂歌 (新字新仮名) / 原民喜(著)
おしの強い事ばかり云つて。ひとの気も知らないで」と梅子は誠吾の方を見た。誠吾はあかまぶたをして、ぽかんと葉巻はまきけむいてゐた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
言いつけられたとおりにわたしがしていると、かれは火の中から一本小えだを引き出して、火をふき消して、えている先をいた。
西の山地からいて来たまだ少しつめたい風が私の見すぼらしい黄いろの上着うわぎをぱたぱたかすめながら何べんも通って行きました。
サガレンと八月 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
なんでも、その大女は、あたりまへの人間のせいの三倍も高くて、その髪はふといなはのやうによれて目からはほのほき出してゐる。
虹猫の大女退治 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
それすこぎて、ポカ/\するかぜが、髯面ひげつらころとなると、もうおもく、あたまがボーツとして、ひた気焔きえんあがらなくなつてしまふ。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
近年日本の空を重くるしくとじこめている雲の中を一道のさわやかな自由の風がきぬけて行くような心地が、かれにはしたのである。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
それでの一ちやうはう晝間ひるまめたといふほど、ひどい臭氣しうきが、ころくさつた人間にんげんこゝろのやうに、かぜかれてつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
なんと、飴屋あめやさんの上手じやうずふえくこと。飴屋あめやさんはぼうさききつけたあめとうさんにもつてれまして、それからひました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
卯平うへい薄暗うすぐらうちなかたゞ煙草たばこかしてはおほきな眞鍮しんちう煙管きせる火鉢ひばちたゝいてた。卯平うへい勘次かんじとはあひだろくくちきかなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
寺の門、町はずれから見たる日光群山、桑畑のとり、路傍の、うどんひもかわと書いた大和障子やまとしょうじなどの写生がだんだんできた。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
「なんてけち なかぜだらう。くならくらしくふけばいいんだ。あついのに。みてくんな、あせを。どうだいまるでながれるやうだ」
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
昨夜さくやも、一昨夜いつさくやも、夕食ゆふしよくてゝのち部室へやまど開放あけはなして、うみからおくすゞしきかぜかれながら、さま/″\の雜談ざつだんふけるのがれいであつた。
小頭こがしら雁六がんろくが、ピューッと口笛くちぶえを一つくと、上から、下から伊部熊蔵いのべくまぞうをはじめすべての者のかげが、ワラワラとそこへけあつまった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
新秋しんしうもちいゝかぜすだれとほしてく、それが呼吸氣管こきうきくわんまれて、酸素さんそになり、動脈どうみやく調子てうしよくつ………そのあぢはへない。
ねこ (旧字旧仮名) / 北村兼子(著)
ありあまる力を、ほかにどうにも使いようがないので、ただ風のまにまにき散らしてしまうところに、あるのかもしれない。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
ございませぬが子供等が夫婦ふうふに成ました故憑司と私しも夫婦ふうふに成ましたとのこたへに白洲の一どうフツとき出せしが大岡殿わらひを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
余が口笛くちぶえいたら、彼女かのじょはふっと見上げたが、やがて尾をれて、小さな足跡あしあとを深く雪に残しつゝ、裏の方へ往って了うた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
見るさえまばゆかった雲のみねは風にくずされて夕方の空が青みわたると、真夏とはいいながらお日様のかたむくに連れてさすがにしのぎよくなる。
太郎坊 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
だんだんひどくなって、よこからきつけてくる風を、マサちゃんは不平ふへいそうにながめて、それから決心して、目かくしをして歩きだしました。
風ばか (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
なんてまぶしくって、人間にんげんがどっさりいて、馬だのくるまだのがはしりまわって、おまけに、さむい身をきるような風が、きまわっているのだろう。
其翌五日そのよくいつか奮然ふんぜんとしてたゞ一人ひとりつた。さむいかぜき、そらくもつた、いやであつたが、一人ひとりで一生懸命しやうけんめいつたけれど、なにぬ。
夏はさ中にも近づいたが山の傾斜けいしゃにさしかかって建て連らねられたF——町は南の山から風が北海にけるので熱気の割合に涼しかった。
みちのく (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
まだ山国は肌寒はださむい四月の中旬の、花ぐもりのしたゆうがた、白々しろじろと遠くぼやけた空の下を、川面かわづらに風のく道だけ細かいちりめん波を立てて
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
あいちやんはあまへるやうなこゑで、『まァ、可哀相かあいさうに!』とつて、おもはず口笛くちぶえかうとしました、が、てよ、其犬そのいぬころがゑてては
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
一段高い岩の上に「虎狼の宮」の古風の社殿がおごそかに立っているばかりで、木立さえないらしの境内には犬の子一匹いないのであった。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
大きなすきまには、わらや、ぼろきれが、つめてはありますけれど、それでも、風はピューピューきこんでくるのです。
まるで、ねやを共にする男へなんぞの色気いろけは、大嵐おおあらしの中へき飛ばしたかのように、自分一人で涙を楽しんでいる風なのだ。
魚の序文 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
山門の所からはすぎ森は暗いほどにしげり、おくへ行くにしたがってはだがひやりとするような寒い風が流れるようにいて来た。
鬼退治 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
やま陽炎かげらふえてきます。ところによつて時季じきはむろんちがひますが、東京附近とうきようふきんでは三月さんがつ中旬頃ちゆうじゆんごろから五月頃ごがつごろまでに、します。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
朝靄あさもやを、微風びふういて、さざら波のたった海面、くすんだ緑色の島々、玩具おもちゃのような白帆しらほ伝馬船てんません、久しりにみる故国日本の姿は綺麗きれいだった。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
おに七と呼ばれてはいるが、名前なまえとはまったくちがった、すっきりとした男前おとこまえの、いたてのまげ川風かわかぜかせた格好かっこうは、如何いかにも颯爽さっそうとしていた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
人々はもはや耳かきですくうほどの理性すら無くしてしまい、場内を黒く走る風にふと寒々とかれて右往左往する表情は、何か狂気きょうきじみていた。
競馬 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
隨分ずゐぶんながたされたとおもつたが實際じつさいは十ぷんぐらゐで熱海あたみからの人車じんしや威勢ゐせい能く喇叭らつぱきたてゝくだつてたのでれちがつて我々われ/\出立しゆつたつした。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
じいさんはとれば何所どこかぜくとった面持おももちで、ただ黙々もくもくとして、あちらをいて景色けしきなどをながめていられました。
つぎにかえってたのは、少年しょうねん角兵ヱかくべえでありました。角兵ヱかくべえは、ふえきながらたので、まだやぶこうで姿すがたえないうちから、わかりました。
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
もしそこを通過つうかするのがよるであるならば、ばされた赤熱鎔岩せきねつようがん斜面しやめんながくだつて、あるひ途中とちゆうまり、あるひ海中かいちゆうまで進入しんにゆうするのがられるが
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
... 貴樣達きさまたちつとるとほ中根なかねはあの行軍かうぐん途中とちうあやまつてかはちた‥‥」と、軍曹ぐんそうはジロりと中根なかねた。「クスつ‥‥」と、だれかが同時どうじした。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
さゐかはから、くもがずっとつゞいて、この畝傍山うねびやま、そのやまが、さわいでゐる。いまかぜかうとしてゐるのだ。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
「あのひところしてください。」——この言葉ことばあらしのやうに、いまでもとほやみそこへ、まつ逆樣さかさまにおれをおとさうとする。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
何分なにぶん支那しなひろくにでありますし、またその東部とうぶ大河たいがながしたどろだとか、かぜおくつてきたちひさいすなだとかゞつもつて、非常ひじようにそれがふかいために
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
「ああ。さわがしいやつらであったぞ。月のおもしろさはこれからじゃ。またふえでもいて聞かせい」こう言って、甘利は若衆のひざまくらにして横になった。
佐橋甚五郎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
そらは、ドンヨリくもツて、南風みなみかぜはひみやこまはり、そしてポカ/\する、いや其所そこらのざわつく日であツた、此様な日には、頭に故障こしやうのない者すら氣が重い。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
ヘルンはそれがたいへん気に入り、『面白いの音』といいながら、ほおをふくらして、ボオボオとき鳴らしては、また『いかに面白い』といって吹き続けた。
みんながきだし、うわさはその日のうちにひろまった。しかし仁太は、ふしぎとビンタもくわなかったという。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
きまくだん×(16)あらしなか生命せいめいしてたゝかふおまへたちおれたちの前衛ぜんゑい、あゝ×××××(17)