)” の例文
「何でございますか、向うの嘉吉さんのとこの婆さんが気がれて戸外おもてへ飛び出したもんですから、みんなで取押えるッて騒いだんですよ。」
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「吉兵衛さん、よい加減にしておきなはれよ。わしはちっとも気はれておりやしまへんで、ただ世間並にしておりますのじゃ」
空中征服 (新字新仮名) / 賀川豊彦(著)
すこし気がれている人間は、時には、えらい者のように買いかぶられる場合があるから、沢庵さんも、その例かも知れない。
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何か素晴らしい事件が爆發するか、でなければ、大きな聲で精一杯怒鳴どなりでもしなければ、三十幾人が皆な氣がれてしまひさうな心持だつたのです。
母の恐ろしい気配が襖の向う側に煙のようにむれているのが感じられて、私は石になったあげく気がれそうな恐怖の中にいる、やりきれない夢なんだ。
おみな (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
また私は、お前にそれを心のありったけ話し尽したならば、私の此の胸もくだろうと思う、そうでもしなければ私は本当に気でもれるかも知れない。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
村の人が来ると容太郎は「こいつは気がれたらしい。家の裏手の灰小屋をあけて、あの中へ閉じ込めて下され」
地上:地に潜むもの (新字新仮名) / 島田清次郎(著)
「笑いおったな。あいつめ。れたように笑いおった。拙者も、いささかぎょっとして、髷を持つ手を離してしもうた。いや、豪胆な笑いじゃったぞ」
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
可憫かわいそうに、気がれたか。信心ぶかいひとだったがなア、わからんもんじゃ。一体どうしたんだろう。御覧、自分で自分の顔をこんなに傷だらけにしている。誰か早くお医者を
老嬢と猫 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
福介は、先生が余り物事に凝り過ぎて、とうとう気がれてしまったのだと思った。
まるで女はきちんと正しく坐って、気でもれたように棒みたいにこわばっていた。
香爐を盗む (新字新仮名) / 室生犀星(著)
病気になつた気がれた一途いちづ雛罌粟ココリコが火になつた
真珠抄 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「私は気がれてやしません。」
月明 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
氣のれやすい生娘きむすめ暮らし
太陽の子 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
はんの森は気がれたらし
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
気のれしうはさに立てる
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
合戦をよそに、水をのんでいる馬、草を喰っている馬、すこし気がれたようにいなないてばかりいる馬——など沢山見えた。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ちと気がれて血相変り、取乱してはいるけれど、すらっとして中肉中脊、戦慄ぞっとするほどい女さ。と空嘯そらうそぶいて毛脛けずねの蚊をびしゃりと叩く憎体面にくていづら
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
母の恐ろしい気配が襖の向ふ側に煙のやうにむれてゐるのが感じられて、私は石になつたあげく気がれさうな恐怖の中にゐる、やりきれない夢なんだ。
をみな (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
何か素晴らしい事件が爆発するか、でなければ、大きな声で精一杯呶鳴どなりでもしなければ、三十幾人が皆んな気がれてしまいそうな心持だったのです。
神尾喬之助は、公儀こうぎの眼をくぐって逃げかくれているうちに、心労しんろうのあまり、気がれたのだ。と、思ったから、きちがいなら、きちがいで扱いようがある。もう何も怖るる必要はない。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「どうも正五郎さんは近頃気がれてるらしいな」
空中征服 (新字新仮名) / 賀川豊彦(著)
哀れ気がれたのである。
無駄骨 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
あいつはねえ、気がれると腰から上を斯う、フラフラふらふらとさせてね、両手を
竹藪の家 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
「おウ、今もいう通り、これアおいらの妹で、ちっとばかり気がれてるんだ。この先の伯父貴の家へ行こうと、そこまで来るてえと、やにわに突っ走りやがってここへ飛び込んだんだが、つれて帰るぜ」
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「山の神主さんはこのごろ、少し気がれているそうだの」
旗岡巡査 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
母は、歓びの余りに、気がれたのではあるまいか?
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
具足屋東兵衛は、気がれていたというのだ。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)