トップ
>
腑
>
ふ
ふりがな文庫
“
腑
(
ふ
)” の例文
それにしてもあんな方角に、あれほどの人家のある場所があるとすれば、一たい
何処
(
どこ
)
なのであろう。私は少し
腑
(
ふ
)
に落ちぬ気持がする。
西班牙犬の家:(夢見心地になることの好きな人々の為めの短篇)
(新字新仮名)
/
佐藤春夫
(著)
Sさんは
一寸
(
ちょっと
)
腑
(
ふ
)
に落ちないような表情をしたが、K氏あてに手紙を書いてくれ、お百姓さんに対しては私のために礼を述べてくれた。
遁走
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
「なるほどこれァ種員さんのいいなさる通り。恐れながら手前なぞも今度の御趣意についちゃ随分と
腑
(
ふ
)
に落ちない事が御座います。」
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
しかし
私
(
わたくし
)
は三
途
(
ず
)
の
川
(
かわ
)
らしいものを
渡
(
わた
)
った
覚
(
おぼ
)
えはない……
閻魔様
(
えんまさま
)
らしいものに
逢
(
あ
)
った
様子
(
ようす
)
もない……
何
(
なに
)
が
何
(
なに
)
やらさっぱり
腑
(
ふ
)
に
落
(
お
)
ちない。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
博士はまだ意識
混沌
(
こんとん
)
としているので、あのような恰好をしているのであろうが、両眼を大きく明けているのが、ちと
腑
(
ふ
)
に落ちかねる。
鞄らしくない鞄
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
▼ もっと見る
巷説
(
こうせつ
)
の魯迅の転機は、私にはどうしても少し
腑
(
ふ
)
に落ちないところがあるので、
敢
(
あ
)
えて苦手の理窟を大骨折りで述べて見た次第である。
惜別
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
が、胃の
腑
(
ふ
)
が丈夫な上、その頃の隅田川は、底の小石が讀めるほど水が綺麗だつたので、大した神經を病む必要もなかつたのです。
銭形平次捕物控:222 乗合舟
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
なにかひどく
腑
(
ふ
)
に落ちかねたような顔つきで、鼻をヒクヒクさせながら、
人混
(
ひとご
)
みをかきわけるようにして、出口のほうへ歩いて行った。
香水紳士
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
その処断の片手落ち、というよりもあまりにも懸隔の甚しいことが義に勇む江戸町民の心に何か
腑
(
ふ
)
に落ちないものをかんじさせた。
本所松坂町
(新字新仮名)
/
尾崎士郎
(著)
「僕、どうもこの頃のお前の
素振
(
そぶり
)
腑
(
ふ
)
に落ちんねんけど、何ぞ訳あるのん違うか」いうて、ふと思いついたように
尋
(
た
)
ンねますのんで
卍
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
妻の容子がドウも
変
(
へん
)
になりました。私も気をつけて見て居ると、
腑
(
ふ
)
に落ちぬ事がいくらもあるのです。主人が馬車で帰って来ます。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
止まれ! 早く、額の汗が乾かないうちに、眼を空に転じ、胃の
腑
(
ふ
)
から
眩暈
(
めまい
)
がやってくる前に、崇高な思念を
喚
(
よ
)
び起こすことを努めろ。
ぶどう畑のぶどう作り
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
多少
腑
(
ふ
)
に落つるところはあったけれども、袖切坂の上でお角が言った異様な
一言
(
ひとこと
)
は、どうも米友には解くことができませんでした。
大菩薩峠:14 お銀様の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
どうもまだ
腑
(
ふ
)
に落ちないところがある。いったい、会いもしない老人が、どうして明智の変装を看破することができたのであろう。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
「——山へ」と、眼を上げたが、意地わるく、胃の
腑
(
ふ
)
は空になっていた、それに、炭焼や
木樵
(
きこり
)
まで、自分の顔を知らない者はない。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「それを
膈
(
かく
)
(
鶴
(
かく
)
)の病いというんだ」こんどは又左衛門が冷やかした、「胃の
腑
(
ふ
)
に
癌
(
がん
)
の出来るやつさ、
藤蔓
(
ふじづる
)
の
瘤
(
こぶ
)
をやぶれば治る」
ひやめし物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
自然
腑
(
ふ
)
におちなかった点も多かろうと思うので、懇談にはいるまえに、念のため、もう少しくだいて私の気持ちを話しておきたいと思う。
次郎物語:05 第五部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
と小宮山は且つ慰め、且つ諭したのでありまする、そう致しますと、その物語の調子も良く、取った
譬
(
たとえ
)
も
腑
(
ふ
)
に落ちましたものと、見えて
湯女の魂
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
坂井の奥さんが
叮嚀
(
ていねい
)
に説明してくれたそうであるが、それでも
腑
(
ふ
)
に落ちなかったので、主人がわざわざ
半切
(
はんきれ
)
に
洒落
(
しゃれ
)
と
本文
(
ほんもん
)
を並べて書いて
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
この
乞食
(
こじき
)
が三日も
飯
(
めし
)
を食わぬときにいちばんに痛切に感ずるものは
胃
(
い
)
の
腑
(
ふ
)
である。
握飯
(
にぎりめし
)
でも食いたいというのが彼の理想である。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
男だけならば色仕掛けという狂言かとも思うが、そのなかには女もいる。いい年をした爺さんも婆さんもある。それがどうも
腑
(
ふ
)
に落ちねえ。
半七捕物帳:26 女行者
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
もつとも、おれがこんなことを言ひ出したのが、お前は
腑
(
ふ
)
におちないんだらう。なにそれには、おれの方にだつて、ちよつと考へがあるんだ。
悪魔の宝
(新字旧仮名)
/
豊島与志雄
(著)
二人の青年にひょっとすると、これは二百年位前のものかも知れないよというと、二人は
腑
(
ふ
)
に落ちぬという
面持
(
おももち
)
をしていた。
土塊石片録
(新字新仮名)
/
伊波普猷
(著)
「そういうことは鶴吉って男も、とうに知っているだろうに、化け物屋敷を調べないとは、どうにも俺には
腑
(
ふ
)
におちないよ」
怪しの者
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
腑
(
ふ
)
に落ちないとお思いになるふうである。いったんおさえたものが外へあふれ出たあとは、その勢いで恋も恨みも源氏の口をついて出てきた。
源氏物語:19 薄雲
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
過ちは改むるに憚る勿れとは古哲の金言、父が言葉
腑
(
ふ
)
に落ちたるか、横笛が事思ひ切りたるか。時頼、返事のなきは不承知か
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
その夜、——なんだか妙に疲れて
腑
(
ふ
)
抜けみたいになって、私は大森の家へ帰るのが
億劫
(
おっくう
)
になり、アパートに泊ることにした。
如何なる星の下に
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
「人のことって、兄貴のことじゃあねえか。それあそうと、おめえが磯屋さんの妹ってえのが、おれにあまだ
腑
(
ふ
)
に落ちねえ」
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
が、老人はわれ/\の
腑
(
ふ
)
に落ちないやうな顔付きには一向無頓着で、僕が相当中華語のわかる男だと見てとると、一層隔てなく
饒舌
(
しやべ
)
りつゞけた。
南京六月祭
(新字旧仮名)
/
犬養健
(著)
胃の
腑
(
ふ
)
へ届く食物は、そのまま直ちに消化されて、血管を少女のような元気さと
華
(
はな
)
やかさとで駆け回るように感じられた。
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
まったく、これはクルトが嘘を言っているか……、それとも、隠し事でもしてない以上、
腑
(
ふ
)
に落ちないことだ。と、彼はいきなり語気をつよめ
人外魔境:08 遊魂境
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
私の引用する新聞記事は、これで終りですが、もちろんこの記事の中にも、
腑
(
ふ
)
に落ちかねるものが、沢山見受けられます。
棚田裁判長の怪死
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
焼酎と
胡瓜
(
きゅうり
)
は
尽
(
ことごと
)
く
吐
(
は
)
き出したが、同時に食った牛肉は不思議にも出て参らず、胃の
腑
(
ふ
)
もなかなか都合好く出来たものかな。
本州横断 癇癪徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
(著)
「不義した女を出すことが出来ないような
腑
(
ふ
)
ぬけと、一生暮そうとは思わない。
私
(
わし
)
の方から出ていくからそう思うがいい」
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
クねずみはだんだん四方の足から食われて行って、とうとうおしまいに四ひきの子猫は、クねずみの胃の
腑
(
ふ
)
のところで頭をコツンとぶっつけました。
クねずみ
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
そこまで想像を持って行って見なければ、彼女の書いて寄す手紙はどうしても岸本の
腑
(
ふ
)
に落ちないふしぶしが有った。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
穂積の親類は
勿論
(
もちろん
)
、知らぬ人まで
讃
(
ほ
)
めて、
羨
(
うらや
)
んで、
妬
(
ねた
)
んで、騒いでいる中に、ただ清吉爺いさん一人は、若い主人の
素振
(
そぶり
)
が
腑
(
ふ
)
に落ちないように思った。
蛇
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
そうして、腹掛けの饅頭を、今や
尽
(
ことごと
)
く胃の
腑
(
ふ
)
の中へ落し込んでしまった馭者は、一層猫背を張らせて居眠り出した。
蠅
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
もし読者のうちでこの謎の意味を自分の
腑
(
ふ
)
に落ちるようにはっきり解説してくれる人があったら有難いと思うのである。(昭和九年八月『中央公論』)
喫煙四十年
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
行きたいけれど行けぬ。お前に会わす顔のない母です。
恨
(
うら
)
んでくれるな。
腑
(
ふ
)
に落ちかねる手紙だった。手紙と一足違いに意外にも安二郎が迎えに来た。
雨
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
これがどうして「喜劇」として通らないのであるか。チェーホフとしては何としても
腑
(
ふ
)
に落ちなかったに違いない。なるほどロパーヒンは成上り者だ。
チェーホフ序説:――一つの反措定として――
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
腑
(
ふ
)
におちかねるようにひねりはじめた首の前へ、名人がこれを見ろといわぬばかりで、にやりとやりながら黙ってさし出したのは、先刻のあの書面です。
右門捕物帖:22 因縁の女夫雛
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
これをみてなにがなにやらさっぱり
腑
(
ふ
)
に落ち兼ねているのが現代社会知識層の大多数である。そしてこの両者は勝負なしの角力を大分永々と続けている。
現代茶人批判
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
彼は
朝夕
(
あさばん
)
に
散策
(
さんぽ
)
もすれば、写生にも出てそのあたりの地理に
精
(
くわ
)
しかったので、牧場のあるのが
腑
(
ふ
)
におちなかった。
馬の顔
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
彼はクリストフのやさしい態度に驚かされ、その急な変わり方が
腑
(
ふ
)
に落ちなかった。翌日になってようやく、クリストフが決闘したことを新聞で知った。
ジャン・クリストフ:09 第七巻 家の中
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
弟は
腑
(
ふ
)
におちないやうな顔をしてぢつと私の顔を見てゐました。私は弟とそんな話をしてゐるのもつまらなくなつたので再び紙切ナイフを取り上げました。
白痴の母
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
「馬鹿ア言え。そんな
腑
(
ふ
)
ぬけな田村先生じゃアねえ。——おれは受け合っておくが、お前のように気の多い奴は、結局ここを去ることが出来ずにすむんだ」
耽溺
(新字新仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
「肉は決して
胃
(
い
)
の
腑
(
ふ
)
の要求ばかりじやない。」周三は
不圖
(
ふと
)
此様なことを考へた。其をきツかけに、彼はまた何時もの
思索家
(
しさくか
)
となつた。頭は直に曇つて来る。
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
酒でも飲んで面白く騒ごうというだけで、ああして
遣
(
や
)
ってくるのですと言った人もあるが、私にはまだ
腑
(
ふ
)
に落ちなかった。
幽
(
かす
)
かな記憶が私には
蘇
(
よみがえ
)
ってくる。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
姥
(
ばあ
)
は驚きたるなり。浪子も
腑
(
ふ
)
に落ちぬ事はあれど、言うは伯母なり、呼ぶは父なり、
姑
(
しゅうと
)
は承知の上ともいえば、ともかくもいわるるままに用意をば整えつ。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
“腑”の意味
《名詞》
(はらわた)内臓。
(フ)精神、感覚。
(出典:Wiktionary)
腑
漢検1級
部首:⾁
12画
“腑”を含む語句
臓腑
胃腑
腑甲斐
腑抜
腑分
臟腑
腑分図
肺腑
五臓六腑
腑伏
腑効
六腑
肝腑
腑分指示書
腑抜声
脾腑
腑脱
腹腑
臓腑様
怨腑