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ふりがな文庫
“
臥
(
ふ
)” の例文
彼は何かに酔ひしれた男のやうに、
衣紋
(
えもん
)
もしだらなく、ひよろ/\と
跚
(
よろ
)
けながら寝室に帰つて、疲れ果てて自分の寝床に
臥
(
ふ
)
し倒れた。
An Incident
(新字旧仮名)
/
有島武郎
(著)
玉蜀黍
(
とうもろこし
)
の毛を
束
(
つか
)
ねて結ったようなる島田を
大童
(
おおわらわ
)
に振り乱し、ごろりと横に
臥
(
ふ
)
したる十七八の娘、色白の
下豊
(
しもぶくれ
)
といえばかあいげなれど
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
臥
(
ふ
)
しながら思うに、大正元年の秋、英一がまだ十歳なりける時、大西一外君に誘われて我と共に
雑司
(
ぞうし
)
ヶ
谷
(
や
)
の
鬼子母神
(
きしもじん
)
に詣でしことあり。
叔父と甥と:――甲字楼日記の一節――
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
今朝は日曜なれば家に
在
(
あ
)
れど、心は楽しからず。エリスは
床
(
とこ
)
に
臥
(
ふ
)
すほどにはあらねど、
小
(
ち
)
さき
鉄炉
(
てつろ
)
の
畔
(
ほとり
)
に
椅子
(
いす
)
さし寄せて言葉すくなし。
舞姫
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
事情
(
わけ
)
を知らない引船と
禿
(
かむろ
)
は、さっきここを出て行く前に、次の部屋へ、大名の姫君でも
臥
(
ふ
)
せるような豪奢な
夜
(
よる
)
の
具
(
もの
)
を敷いて行った。
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
前にいた人が残して行ったらしい大きな古びた
財布
(
さいふ
)
が
片隅
(
かたすみ
)
にあった。一わたり部屋を見まわすと、すぐに妻はベッドに
臥
(
ふ
)
さった。
秋日記
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
源平盛衰記
(
げんぺいせいすゐき
)
の
文覚発心
(
もんがくほつしん
)
の
条
(
くだり
)
に、「はや
来
(
きた
)
つて女と共に
臥
(
ふ
)
し居たり、
狭夜
(
さよ
)
も
漸
(
やうやう
)
更け行きて
云云
(
うんぬん
)
」と、ちやんと書いてある事である。
澄江堂雑記
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
遁げると見せかけ八蔵は遠くも走らず取って返し、裏手へ廻って
墓所
(
はかしょ
)
に
入
(
い
)
り、下枝が
臥
(
ふ
)
したる
部室
(
へや
)
の前に、忍んで様子を
窺
(
うかが
)
えり。
活人形
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
定基は其の
傍
(
かたえ
)
に昼も居た、夜も
臥
(
ふ
)
して、やるせない思いに、
吾
(
わ
)
が身の取置きも吾が心よりとは無く、ただ
恍惚
(
こうこつ
)
杳渺
(
ようびょう
)
と時を過した。
連環記
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
なお妾と互い違いに
臥
(
ふ
)
して妾の
両足
(
りょうそく
)
をば自分の両
腋下
(
えきか
)
に
夾
(
はさ
)
み、
如何
(
いか
)
なる
寒気
(
かんき
)
もこの
隙
(
すき
)
に入ることなからしめたる、その真心の有りがたさ。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
(
牧之
(
ぼくし
)
こゝに一宿しし時此夜具に
臥
(
ふ
)
したるが、かのいとくずもすそにおちてあはせの所がおほく身にそゆべきものにはあらず。)
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
「夜深うして
方
(
まさ
)
に独り
臥
(
ふ
)
したり、
誰
(
た
)
が
為
(
た
)
めにか
塵
(
ちり
)
の
牀
(
とこ
)
を払はん」「形
羸
(
つか
)
れて
朝餐
(
てうさん
)
の減ずるを覚ゆ、睡り少うして
偏
(
ひと
)
へに
夜漏
(
やろう
)
の長きを知る」
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
もしや、例の癖で、酔うて沙上に
臥
(
ふ
)
す、なんぞと
洒落
(
しゃれ
)
てはいないかと、方丈の松の根方や、裏庭に廻ってみたけれども見えない。
大菩薩峠:26 めいろの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
京都大学の講師富岡謙蔵氏は、長らく病気で
臥
(
ふ
)
せつてゐる。
幾人
(
いくたり
)
かその道の博士を
聘
(
たの
)
んで診ては貰つたが、一向に
快
(
よ
)
くならない。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
今まではしばらく
堪
(
こら
)
えていたが、もはや包むに包みきれずたちまちそこへ泣き
臥
(
ふ
)
して、平太がいう物語を聞き入れる体もない。
武蔵野
(新字新仮名)
/
山田美妙
(著)
是においてか人類は、大いなる迷ひの中に、幾世の間、病みて下界に
臥
(
ふ
)
ししかば、神の
語
(
ことば
)
遂に世に降るをよしとし 二八—三〇
神曲:03 天堂
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
池幅の少しく
逼
(
せま
)
りたるに、
臥
(
ふ
)
す牛を欺く程の岩が向側から半ば岸に沿うて
蹲踞
(
うずくま
)
れば、ウィリアムと岩との間は
僅
(
わず
)
か一丈余ならんと思われる。
幻影の盾
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
静に
臥
(
ふ
)
したりし貫一は忽ち起きて鞄を開き、先づかの文を
出
(
いだ
)
し、
焠児
(
マッチ
)
を
捜
(
さぐ
)
りて、封のままなるその
端
(
はし
)
に火を移しつつ、
火鉢
(
ひばち
)
の上に
差翳
(
さしかざ
)
せり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
さるに妾不幸にして、いひ
甲斐
(
がい
)
なくも病に打ち
臥
(
ふ
)
し、
已
(
すで
)
に絶えなん玉の緒を、
辛
(
から
)
く
繋
(
つな
)
ぎて漸くに、今この児は産み落せしか。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
「……お気に入らぬと知りながら、未練な私が
輪廻
(
りんね
)
ゆえ、そい
臥
(
ふ
)
しは
叶
(
かな
)
わずとも、お
傍
(
そば
)
に居たいと辛抱して、これまで居たのがお身の仇……」
夫婦善哉
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
でも、それ以前はどうであったか存じませんが、とにかく
臥
(
ふ
)
せりながら気づきましたのは、さあ半月ほどまえ、今月の十日からでございます。
潜航艇「鷹の城」
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
睡
(
ねむり
)
さめて見れば眼
明
(
あきら
)
かにして
寝覚
(
ねざめ
)
の感じなく、眼を
塞
(
ふさ
)
ぎて静かに
臥
(
ふ
)
せばうつらうつらとして妄想はそのままに夢となる。
明治卅三年十月十五日記事
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
「心ときめきするもの。——雀のこがひ。
児
(
ちご
)
あそばする所の前わたりたる。よき
薫物
(
たきもの
)
たきて一人
臥
(
ふ
)
したる。
唐鏡
(
からのかがみ
)
の少しくらき見いでたる。云々。」
めくら草紙
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
十二月
庚午
(
かのえうま
)
朔
(
ついたち
)
、皇太子片岡に
遊行
(
いで
)
ます。時に飢ゑたる
者
(
ひと
)
道の
埀
(
ほとり
)
に
臥
(
ふ
)
せり。
仍
(
よ
)
りて
姓名
(
かばねな
)
を問ひたまふ。而して
言
(
まを
)
さず。皇太子
視
(
み
)
て
飲食
(
をしもの
)
を与へたまふ。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
蒙古人など
沍寒
(
ごかん
)
烈風断えざる冬中騎して三千マイルを行きていささか
障
(
さわ
)
らぬに、一夜地上に
臥
(
ふ
)
さば
華奢
(
きゃしゃ
)
に育った
檀那
(
だんな
)
衆ごとく極めて風引きやすく
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
床に
臥
(
ふ
)
せつて熱に
魘
(
うな
)
される間も、主人の機嫌を損じはしまいかと、それが
譫言
(
うはごと
)
にまで出る程絶えず
惧
(
おそ
)
れられた。三日目の朝、呼び出しの速達が來た。
業苦
(旧字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
そこまでことをわけて云われるのをむげにもできなかったし、重い病に
臥
(
ふ
)
している生みの母の、ひとめ会いたいという言葉にもつよく心をうたれた。
日本婦道記:糸車
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
イザナミの命の枕の方や足の方に
這
(
は
)
い
臥
(
ふ
)
してお
泣
(
な
)
きになつた時に、涙で出現した神は香具山の麓の小高い處の木の下においでになる
泣澤女
(
なきさわめ
)
の神です。
古事記:03 現代語訳 古事記
(旧字新仮名)
/
太安万侶
、
稗田阿礼
(著)
罪人を
俯伏
(
うつぶ
)
せに
臥
(
ふ
)
させてその上に重いものを載せ、白状しなければ死ぬまでそうしておいたという残酷な刑罰である。
ウィリアム・ウィルスン
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
大雪山ここに一頓して忠別岳に
連
(
つらな
)
り、その先に化雲岳の
臥
(
ふ
)
し、またその先に戸村牛岳
起
(
た
)
つ。戸村牛岳の左に石狩岳樹を帯び、その右に硫黄岳煙を噴く。
層雲峡より大雪山へ
(新字新仮名)
/
大町桂月
(著)
旅宿が満員であったため、ヨセフ夫婦は
驢馬小舎
(
ろばごや
)
に宿っており、生まれた
嬰児
(
えいじ
)
はこれを布に包んで
馬槽
(
うまぶね
)
に
臥
(
ふ
)
させた。
キリスト教入門
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
これは別に説明するまでもなく、病気でうち
臥
(
ふ
)
していたのが大分よくなったので野に散歩に出た、おりふし水の温む時分であったというのであります。
俳句の作りよう
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
昼は
九九
しみらに打
臥
(
ふ
)
して、
夕
(
よひ
)
々ごとには
壠
(
つか
)
のもとに
詣
(
まう
)
でて見れば、小草はやくも
繁
(
しげ
)
りて、虫のこゑすずろに悲し。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
太郎
(
たろう
)
は
長
(
なが
)
い
間
(
あいだ
)
、
病気
(
びょうき
)
で
臥
(
ふ
)
していましたが、ようやく
床
(
とこ
)
から
離
(
はな
)
れて
出
(
で
)
られるようになりました。けれどまだ三
月
(
がつ
)
の
末
(
すえ
)
で、
朝
(
あさ
)
と
晩
(
ばん
)
には
寒
(
さむ
)
いことがありました。
金の輪
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
お兼には孫七という栄三郎と
同
(
おな
)
い年の息子があったが、それをつれて一つ屋根の下に起き
臥
(
ふ
)
ししているうちにいつしかお兼は栄三郎を実子のように思い
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
欠けたる椀に
芳
(
こうば
)
しき酒なみなみと注ぎ
湛
(
たた
)
え、前後知らずに酔い
臥
(
ふ
)
して、飲まれぬまでに賜えかし、ラハーキャロー
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
我は北国の野人であると皮肉って、梅漬を実ながら十四五喰い、大どんぶり酒をあおり、
大鼾
(
おおいびき
)
して
臥
(
ふ
)
した等々の話があるが、これ等は恐らく伝説であろう。
賤ヶ岳合戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
我
臥
(
ふ
)
せばすなわち言う、
何時
(
いつ
)
我起きいでんかと。起きぬれば夕を待ちかねつ。夜まで苦しき思いに満てり。……
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
竹渓は文政九年の春も暮れて
楝
(
おうち
)
の花の咲きかけた頃病に
臥
(
ふ
)
した。「病中児ニ示ス。」という七律の作がある。しかし病は軽くして程なく
癒
(
い
)
えたのであろう。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
僕は台所へは顔も出さず、直ぐと母の寝所へきた。
行燈
(
あんどん
)
の
灯
(
ひ
)
も薄暗く、母はひったり枕に就いて
臥
(
ふ
)
せって居る。
野菊の墓
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
真実
(
ほんに
)
やり切れぬ嬢さまではあるとて見かへるに、美登利はいつか小座敷に
蒲団
(
ふとん
)
抱巻
(
かいまき
)
持出でて、帯と上着を脱ぎ捨てしばかり、うつ伏し
臥
(
ふ
)
して物をも言はず。
たけくらべ
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
曾
(
か
)
つて両手を
頭
(
かしら
)
に敷き、仰向けに
臥
(
ふ
)
しながら天井を
凝視
(
みつ
)
めて初は例の如くお勢の事をかれこれと思っていたが
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
そういう老婦人は子供を多く生まないようにという口実の下に、しばしば若夫婦と室を同じくして
臥
(
ふ
)
し
閨房
(
けいぼう
)
を監視する残忍をさえ敢てするということである。
姑と嫁について
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
当然床の中に
臥
(
ふ
)
していなければならないうちに、ちょうどそれが田植えの時期だったので、無理に田圃へ出たのがもとで、
産褥
(
さんじょく
)
熱が
昂
(
こう
)
じ、ひどい出血の後に
緑の芽
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
山の
斜面
(
しやめん
)
に露宿を
取
(
と
)
りしことなれば
少
(
すこ
)
しも
平坦
(
へいたん
)
の地を得す、為めに
横臥
(
わうぐわ
)
する能はず、或は蹲踞するあり或は
樹
(
き
)
に
凭
(
よ
)
るあり、或は樹株に
足
(
あし
)
を
支
(
ささ
)
へて
臥
(
ふ
)
するあり
利根水源探検紀行
(新字旧仮名)
/
渡辺千吉郎
(著)
一隅
(
いちぐう
)
には一匹の黒白の
斑
(
まだら
)
の牛が新しい
藁
(
わら
)
をタップリと敷いて静かに口を動かしながら
心地
(
ここち
)
よげに
臥
(
ふ
)
していた。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
寝ても
寤
(
さ
)
めても恩義の程を忘れず、万事に気を利かして、骨身を惜まず一生懸命にくれ/\と働き、
子
(
ね
)
に
臥
(
ふ
)
し寅に起るの誡めの通り、子と云えば前の九ツで
塩原多助一代記
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
しかれども、同席の一人曰く、「既往のことはたいがい誤らざるも、将来のことは当たり難し」と。それはともかくも、同家に一人の病者(別席に
臥
(
ふ
)
す)あり。
妖怪玄談
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
明治三十二年月十月、ついに日本橋の大ろじで「牡丹燈籠」を長演したのが最後の高座となり、その年の暮れから彼は、枕も上がらぬ病の床に
臥
(
ふ
)
してしまった。
円朝花火
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
日本一の大家という抱負は、病に
臥
(
ふ
)
してから一層先生の頭脳に確かめられて来たようであった。「人生の疑義」という翻訳書が、しばらく先生の
枕頭
(
まくらもと
)
にあった。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
臥
漢検準1級
部首:⾂
8画
“臥”を含む語句
臥床
仰臥
横臥
草臥
病臥
起臥
酔臥
俯臥
添臥
臥榻
臥龍梅
伏臥
安臥
打臥
臥牛
臥龍
突臥
臥房
寝臥
臥居
...