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埀
前の
程より
愁然と
頭を
埀れて、
丁度死出の
旅路に
行く
人を
送るかの
如く、
頻りに
涙を
流して
居る。
眞黒な
艷の
佳い
洋犬が一
匹、
腮を
地に
着けて
臥べつて、
耳を
埀れたまゝ
是れ
亦尾をすら
動かさず、
廣庭の
仲間に
加はつて
居た。そして
母屋の
入口の
軒陰から
燕が
出たり
入つたりして
居る。
十二月
庚午朔、皇太子片岡に
遊行ます。時に飢ゑたる
者道の
埀に
臥せり。
仍りて
姓名を問ひたまふ。而して
言さず。皇太子
視て
飲食を与へたまふ。